株式市場には「Sell in May(5月に株を売れ)」という言葉がありますが、今年の5月はそれを証明するかのように波乱含みの動きをみせています。物色的には、グロース銘柄を売って、バリュー株を買う動きが強くなっているようです。
そうした中、グロース銘柄に属すと考えられている半導体関連株の多くも下落しました。世界の半導体関連銘柄の株価トレンドを示唆する“フィラデルフィア半導体指数”(図表1 )は4/5(月)〜5/13(木)に13.7%も下落しました。
しかし、この株価下落は半導体関連銘柄に買いチャンスを提供している可能性が大きそうです。
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での
詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
日本株投資戦略※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
5/20(木)に発表された我が国の貿易統計では、3ヵ月連続の貿易黒字を確保し、輸出額は前年同月比38.0%も増加しました。けん引役は自動車と半導体製造装置で、特に北米向けの伸びが目立ったようです。
一方、同じ日に発表された半導体製造装置で世界最大手米アプライドマテリアルズ社の決算発表では、同社の2021/5〜7月期について、市場予想を上回る利益見通しが示されました。5G通信網やデータセンター向けの投資が伸び、2021年の半導体製造装置市場(前工程)は前年比で30%増加するとの予想(東京エレクトロン)もあります。
そうした中、「日本株投資戦略」では、利益成長が続いていることに加え、予想PERでみた割高感も乏しい、日本の半導体関連株を10銘柄を抽出してみました。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)東証上場銘柄であること。
(2)SBI証券Webサイトの国内株検索ウィンドウに「半導体」と入力したとき、銘柄名が出力される銘柄であること。
(3)業績予想を公表しているアナリストが2名以上いる銘柄であること。
(4)直近四半期の営業利益が前年同期比10%以上の増益となっていること。
(5)今期、来期、再来期の市場予想営業利益がすべて10%以上の増益となっていること。
(6)再来期の市場予想営業利益が前期の営業利益比で50%以上の増益となっていること。
(7)再来期の市場予想PERが20倍以下の銘柄であること。
これらの条件をすべて満たす銘柄を、(6)の予想増益率が大きい順に並べたものが図表2です。予想成長率が高い割に、予想PERがそれ程高くないため、株式市場で再び活躍する可能性が大きい10銘柄と考えられます。
図表1 フィラデルフィア半導体指数(日足)〜4/5(月)高値から13.7%下落し、下げ止まりの兆し?
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。期間は2021/1/4〜5/20。
図表2 「期待の半導体関連10銘柄」はコチラ!?
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄(決算月) | 株価 (5/19) |
営業増益率 | 再来期予想PER | |
直近Q | 3年予想 | |||||||
6315 | 6315 | 6315 | 6315 | TOWA | 1,867 | +109.1% | +168.0% | 7.0 |
6723 | 6723 | 6723 | 6723 | ルネサスエレクトロニクス(12) | 1,129 | +126.8% | +159.2% | 15.7 |
7735 | 7735 | 7735 | 7735 | SCREENホールディングス | 9,390 | +126.5% | +123.6% | 12.6 |
6407 | 6407 | 6407 | 6407 | CKD | 2,286 | +57.6% | +113.3% | 12.3 |
6967 | 6967 | 6967 | 6967 | 新光電気工業 | 3,140 | +165.9% | +96.0% | 13.2 |
8035 | 8035 | 8035 | 8035 | 東京エレクトロン | 44,950 | +57.4% | +61.7% | 18.1 |
6504 | 6504 | 6504 | 6504 | 富士電機 | 4,895 | +34.4% | +61.1% | 13.7 |
4186 | 4186 | 4186 | 4186 | 東京応化工業(12) | 6,690 | +47.5% | +54.9% | 18.4 |
4187 | 4187 | 4187 | 4187 | 大阪有機化学工業(11) | 3,690 | +37.0% | +54.3% | 16.6 |
6146 | 6146 | 6146 | 6146 | ディスコ | 30,950 | +52.4% | +50.8% | 18.7 |
- ※Bloomberg、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※銘柄名横のカッコ内は決算期末の月を示しています。無印は3月決算企業です。
- ※「直近Q」は直近四半期を対象としています。「営業増益率」の「3年予想」は、3年後の市場予想営業利益を前期営業利益と比較した変化率です。 「再来期予想PER」も市場予想純利益をベースにしています。
ここでは図表2に掲載した銘柄の一部について、吟味していきます。
なお、2021/4/1以降に始まる事業年度から、「収益認識に関する会計基準」が強制適用になっています。
このため今回の決算発表のうち、上場企業が発表する2022/3期の業績予想では、原則として売上高や利益の変動率に関する記載がなくなっています。そこで当ページでは、多くのメディアと同様に、変化率を用いて計算しています。
TOWA(6315) 半導体を守るための封止(モールディング)装置で世界トップのグローバル企業
半導体の後工程で使用され、半導体チップを衝撃や温度、湿度等から守るべく、封止して固める「モールディング装置」で推定世界シェア40%のトップ企業です。
売上高(前期)に占める日本の比率は12.9%に過ぎず、中国(36.8%)、台湾(18.3%)、韓国(14.0%)等、半導体生産に強いアジア諸国で活躍するグローバル企業です。
2021/3期の売上高は297億円(前期比17.6%増)、営業利益36億円(同345.6%)、受注高409億円(同53.3%増)と好調。5G通信網整備やサーバー向けに拡大が続く台湾、半導体内製化を進める中国等からの受注が伸びているようです。
2022/3期の会社予想売上高は380億円(前期比27.9%増)、営業利益50億円(同38.2%)ですが、市場では営業利益56億円を予想しています。
再来期(2024/3期)の市場予想営業利益は97億円で、2021/3期比での予想営業増益率は168%と高めですが、3年後予想純利益をベースにした予想PERは7倍台にとどまっています。成長性が高い反面、割安感が強く、市場の評価が高まることを期待したいところです。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間2年(週足)で表示。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
ルネサスエレクトロニクス(6723) EV(電気自動車)や自動車の電動化に必要な車載用マイコンの大手企業
マイコンの世界的大手企業です。今年度第1四半期(2021/1〜3期)売上高の50.7%が自動車向け、47.4%が産業、インフラ、IoT向けとなっています。第1四半期は前者が前年同期比10.4%増、後者が同17.0%増と好調でした。全社売上高は2,037億円(前年同期14%増)、営業利益302億円(同126.8%増)と、好調なスタートとなりました。
車載用マイコンは、自動車の「走る」「曲がる」「止まる」といった基本的動作をつかさどる重要な半導体で、今後普及加速が見込まれるEV(電気自動車)や、自動車の電動化には不可欠な存在と考えられています。
同社は主力の那珂工場(茨城県)で3/19(金)、過電流による火災が発生し、23台の製造装置を焼失してしまいました。その後、一時的に生産を停止する場面もあり、顧客の自動車メーカーの一部が減産を余儀なくされるなど、その存在の重要性が改めて認識されることになりました。
火災は年間で240億円規模の減益要因となりそうですが、業績はそれを乗り越えて拡大しそうです。会社側は通期の業績見通しを公表していませんが、上半期の「調整後売上高」を4,077億円(前年同期比18.0%増)前後、「調整後営業利益率」を24.7%としています。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間2年(週足)で表示。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
SCREENホールディングス(7735) 枚葉式半導体洗浄装置で世界シェア45%、微細化対応もリード。
写真を形成する無数の細かい点を作り出す部材(スクリーン)が社名の由来とされています。
CTP(印刷用刷版出力)装置で世界シェア33%、枚葉式半導体洗浄装置で同45%、ディスプレイ製造用コータデベロッパーで同61%など、主力事業以外にも市場シェアの高い製品を有しています。
半導体製造における前工程の30%は洗浄です。そのため、半導体製造において洗浄装置(推定1台1億円〜10億円)は重要な設備の1つです。
この製造過程で必要とされる回路の幅は7ナノ、5ナノが量産レベルとされる中、同社はさらに微細化した3ナノの開発をほぼ終えている状況です。
2021/3期は売上高3,203億円(前期比0.9%減)、営業利益245億円(同95.0%増)と好調でした。地域別には、中国向け・国内向けが好調でした。受注高は第4四半期に前年同期比24.1%増となりました。
市場では、前期の営業利益245億円が2024/3期には547億円前後まで拡大すると予想されています。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間2年(週足)で表示。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
CKD(6407) 自動化装置が祖業。流体製造装置等が半導体製造向けに拡大期待。
真空管や蛍光灯の製造装置からはじまり、およそ50万アイテムにも及ぶ自動化装置が祖業です。CKDの製品の多くは、薬品や食品の包装機械や寿司のにぎり機など、生活の裏側で幅広く活躍しているものばかりです。
半導体や液晶ディスプレイ、太陽電池など、多くの製造工程において、液体やガスを正確に制御し、量を調節する技術を必要とします。半導体需要の高まりによって、これら技術の成長が期待されており、同社は8月までに生産能力を25%増やす計画です。
また、半導体メモリの領域で、3D-NANDの記憶容量を増やすべく、多層化が進むとみられ、CKDが関連する装置の設置台数が増えることも期待されています。
2021年3月期の営業利益は約77億円(前期比47.2%増)で、市場予想の66億円を上回りました。市場は、2022年3月期114億円、2023年3月期142億円、2023年3月期164億円と予想しています。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間2年(週足)で表示。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
新光電気工業(6967) パッケージ技術でインテルを支援。当面高成長が続く予想。
半導体パッケージメーカーです。イビデン(4062)と共に、インテルなど半導体メーカーを主要顧客としています。
半導体メーカーは競争力向上をめざし、回路の線幅をいかに狭くするかなど、微細化でしのぎを削っています。例えば、複数のダイを1つのパッケージに収める“チップレット”も重要な技術の1つとされており、高い技術力を有する日本企業の存在意義が高まっています。
2021/3期は売上高1,881億円(前期比26.8%増)、営業利益233億円(同622.7%増)と大幅な増収・増益を達成しました。主力の高岡工場でフリップチップタイプパッケージの増産投資を行っていましたが、需要の拡大で量産効果が高まりました。
営業利益は2021/3期233億円から、2022/3期324億円、2023/3期385億円、2024/3期は457億円と増益基調が続く予想(市場コンセンサス)です。足元、株価は急上昇の反動が出ていますが、市場の利益見通しは上方修正されているようです。
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