東京株式市場は依然不安定な展開です。衆議院選挙の投開票日を控え、決算発表の本格化などを背景にリスク回避の動きが強まったためとみられます。
ただ、米国株は過去最高値圏の動きになっているように、グローバルな株式市場全般を取り巻く環境は暗い訳ではありません。衆議院選挙が終われば、日本株が買い直される可能性は十分にあるでしょう。
ちなみに、米国株高の背景には、経済活動の再開によって景気回復が本格化することへの期待感があると考えられます。
ただ、需要の急速な回復に対して供給が追い付かない分野が多く、インフレ懸念が問題になっています。米国の労働市場も同様で、求人件数が過去最高を更新する一方、人材不足によって雇用の回復は伸び悩んでいるようです。
新型コロナウイルスの新規感染者数が急速に減少してきた日本でも求人件数が幅広い業種で増加することが予想されます。
しかし、米国と同様に雇用が想定通りに回復しない可能性もあります。また、格差是正・賃金上昇といった労働市場をめぐる問題に株式市場が注目を高めてくる可能性も大きいことから、今回は人材関連をテーマに注目したい銘柄をご紹介します。
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
日本株投資戦略※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・好きな場所 秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
米国では、新型コロナウイルスで亡くなった人数がおよそ74万人となり、第2次世界大戦中に米国で亡くなった人数の40万人を上回って、米国人の価値観に影響を与えたと言われています。
米国の一部では、“YOLO”(You Only Live Once)≪人生は一度きり≫
という言葉が使われるなど、労働市場に戻ってこない人もいるようです。
こうした理由などから、企業が雇用を回復させようとしても、思うように人材が確保できないという問題が生じ、その克服のためには賃金を上げざるを得ないケースも増えています。
日本でも、10/31(日)に投開票の衆議院選挙で「配分」が主要テーマとなっているように、格差を是正する上でも、労働問題は重要であると考えられています。
なお、日銀短観(9月)で示唆されているように、人手不足はすでに強まっており、人材派遣会社の活躍場面が増えそうです。そこで、今回は「人材関連」に注目します。
以下の条件をすべて満たした関連銘柄を図表1でご紹介します。
(1)東証1部上場企業。
(2)当社Webサイトの「テーマキラー!」で「人材派遣」に紹介されている銘柄。または、当社Webサイト銘柄検索ウィンドウに「人材派遣」と入力し、出力される銘柄。
(3)Bloomberg集計の市場コンセンサスで今期・来期ともに営業増益率10%超の予想。
(4)10/27(水)までの過去10営業日で最低売買高が1万株超。
図表1 雇用回復・賃金上昇で注目される人材関連銘柄
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄 | 株価(10/28) | 四半期累計増益率 | 今期増益率 | 来期増益率 |
2146 | 2146 | 2146 | 2146 | UTグループ | 3,590 | -28.7% | 11.8% | 70.6% |
2154 | 2154 | 2154 | 2154 | 夢真ビーネックスグループ | 1,501 | -28.1% | 97.7% | 39.1% |
2170 | 2170 | 2170 | 2170 | リンクアンドモチベーション | 1,194 | 97.7% | 740.2% | 54.8% |
2181 | 2181 | 2181 | 2181 | パーソルホールディングス | 3,025 | 44.1% | 57.1% | 15.7% |
2471 | 2471 | 2471 | 2471 | エスプール | 1,269 | 23.9% | 21.5% | 17.8% |
4763 | 4763 | 4763 | 4763 | クリーク・アンド・リバー社 | 1,990 | 48.2% | 31.8% | 15.1% |
6098 | 6098 | 6098 | 6098 | リクルートホールディングス | 7,425 | 292.6% | 107.0% | 8.3% |
6569 | 6569 | 6569 | 6569 | 日総工産 | 715 | 127.9% | 12.8% | 25.8% |
9744 | 9744 | 9744 | 9744 | メイテック | 7,020 | 9.4% | 16.9% | 16.5% |
- ※「四半期累計営業増益率」は、直近四半期または本決算の累計営業増益率。「今期増益率」、「来期増益率」は市場コンセンサスベースの予想営業増益率。
- ※メイテック(9744)は2021/10/28に行われた決算発表の結果を反映。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
この項では、図表1で抽出した銘柄について、投資ポイントなどをご紹介します。
パーソルホールディングス(2181) 人材派遣専業ではトップ級。第1四半期は好調なスタート
- 期間:2021/5/7〜2021/10/28(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■人材派遣大手。海外にも進出
人材派遣を主力とする総合人材サービス企業の大手企業です。1973年にテンプスタッフが創業。2008年に同社と旧ピープルスタッフの持株会社として設立され、2017年から現在の商号になっています。
主力事業は「Staffing SBU」(第1四半期売上構成比54.7%)で、国内において人材派遣、BPO、人材紹介事業等を行っています。「Career SBU」(同6.9%)では、顧客企業の中途採用活動を支援。さらに、「Professional Outsourcing SBU」(同10.2%)では、IT領域やエンジニアリング領域の製造・開発受託請負事業や技術者を専門とした人材派遣事業を展開しています。また、アジア・豪州にも展開しており、海外部門の売上構成比は26.9%を占めています。
■中期的に年10%超の営業増益を予想
時価総額は7千億円台で業界第2位。トップのリクルートHD(6098)は広告分野の構成比も大きく、人材専業ではトップ級と表現することもできそうです。
2022/3期・第1四半期の売上高は2,504億円(前年同期比5.1%増)、営業利益131億円(同44.1%増)と好調なスタート。市場では通期で57.1%の営業増益を予想。向こう5年程度は年10%増の営業増益が続くと見込まれています。
課題は同業他社に比べ、利益率が低いことのようです。同社はBPO事業の拡大等を通じ、利益率向上を図るとしています。
リクルートホールディングス(6098) 人材派遣最大手。幅広い事業展開が強み
- 期間:2021/5/7〜2021/10/28(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■人材派遣で最大手。広告事業も大きい
1960年に広告代理店「大学新聞広告社」として創業。
1963年に「日本リクルートセンター」に社名変更した後は人材・マーケティング支援などを手掛け、仕事、住宅、結婚、旅行、グルメ、美容、クルマ、進学などの分野で情報サービスを展開。2012年に持ち株会社制に移行、2014年10月に東証一部へ上場しました。
事業部門別の売上高構成比率(21年3月期実績)は、HRテクノロジー事業が18.4%、メディア&ソリューション事業が29.4%、人材派遣事業が52.2%となっています。
■中期的に年10%超の営業増益を予想
2022年3月期第1四半期(21年4〜6月)の連結業績(IFRS)は、売上収益が6,647億円(前年同期比39.8%増)、営業利益が1,047億円(同3.9倍)となりました。
全事業セグメントが増収増益です。
HRテクノロジー事業では、採用需要の高まりを受け有料求人広告利用が増加しました。メディア&ソリューション事業では、販促領域において住宅および美容が増収をけん引。人材派遣事業では、米国および豪州の増収増益が大きく寄与した半面、日本は増収減益でした。
2022年3月期の連結業績予想については、第1四半期決算発表とともに上方修正されまし。売上収益は2兆4,500億〜2兆6,000億円から2兆6,000億〜2兆7,000億円(前期比14.6%増〜19.0%増)に、営業利益は1,800億〜2,450億円から2,700億〜3,400億円(同65.8%増〜2.1倍)にそれぞれ引き上げられました。
市場コンセンサスの営業利益は3,371億円であり、会社予想の上限に近い水準です。
市場では今後も増収・増益継続を予想しています。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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