2021年も残すところ2週間となりました。
鈴木は楽しみにしていたハロプロのライブが、抽選で全滅したため、寂しい年末を過ごす予定となっていますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
今年は新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大する中、東京での大規模イベントの開催、菅内閣退陣と岸田新内閣の成立、インフレ高進等、さまざまな出来事がありました。
年内最後の重要イベントであったFOMC(米連邦準備制度理事会)や主要国・地域の金融政策会合が終わり、足元では来年を予想する時間的な余裕も少し出てきたかもしれません。
2021年の日本株は上昇したものの、欧米等の海外株に対し、“出遅れた”というイメージが強いのではないでしょうか。ただ、投資テーマを絞って投資していた場合、かなりのパフォーマンスをあげることが出来たことも確かです。
そうした好パフォーマンスとなった投資テーマのひとつが「半導体関連」で、東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)、信越化学(4063)のような半導体製造装置や材料等の会社が挙げられます。
特に半導体パッケージ関連銘柄の成長は著しく、半導体市場の技術革新が新たな投資テーマを生み出しつつあることから2022年も引き続き、注目テーマになるのではと期待されます。
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
日本株投資戦略※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
12/16(木)時点でTOPIXの過去1年間のパフォーマンスは+12%となっています。
また、SBI証券のテーマ投資ツール“テーマキラー!”に採用されている投資テーマ(30種類)の過去1年間のパフォーマンスは単純平均で+32%(12/16時点)となっています。
“テーマキラー!”で最もパフォーマンスの高い投資テーマは「海運」で年間で129%上昇。なお、「半導体」は+43.41%、「EUV」は+63.52%となっています。
そこで今回は事業内容から「半導体パッケージ関連」と捉えられる銘柄をご紹介します。
設計された半導体の回路はフォトマスク(写真現像で例えるとフイルム)に焼かれ、ステッパー(露光装置)を用いてシリコンウエハ上に転写し、切り分けたものを封止して完成となります。現在、ステッパーについてはASML社(オランダ)が圧倒的なシェア率を誇ります。レーザーテック(6920)が急成長を遂げた背景には世界で唯一、ASML社のステッパーに対応できる装置を提供できたことが挙げられ、今後も同社の成長と共に業績拡大が期待されます。
なお、半導体メーカーはコスト競争力が極めて重要な課題であり、半導体を安く製造するために必要となる技術が“微細化”です。半導体に描かれる回路の線幅が細ければ細いほど、1枚のシリコンウエハから取れる半導体チップの数が増え、生産性が高まることになります。
ただ、微細化にも限界が指摘され、さらなる微細化がコスト上昇となる可能性も出ています。
一方、大手半導体メーカーであるTSMC社(台湾)を筆頭に新しいパッケージ技術の発表が相次いでいることから、微細化に頼ることなく、新しいパッケージ技術が半導体業界の技術革新をけん引するのではとの見方も出ています。
12/16(木)付の日本経済新聞では、12/15(水)開幕の「セミコン・ジャパン」でインテルやTSMCの幹部が「3次元化が半導体性能の向上をけん引する」と述べていたことを報じました。この事はまさに新しいパッケージ技術が技術革新をもたらしつつあることを、業界が認めていることを示しているのではないでしょうか。
図表1はレーザーテック(6920)、図表2はイビデン(4062)のチャートです。
レーザーテックの株価は2017年末から2021年11月までで10倍を超える銘柄となり、半導体パッケージ関連銘柄とみなされるグループの中で最大級の時価総額を誇るイビデンの株価は同期間でおよそ4倍となっています。
半導体パッケージ技術がEUVに続き、大きな技術革新をもたらすとすれば、イビデンの株価の上昇率は「十分に上がった」という評価ではなく、「出遅れ」とみなされる可能性もありそうです。
図表1 “EUV” でテンバガーになったレーザーテック(6920)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2017/1〜2021/11(月足)
図表2 “ICパッケージ”の中核的銘柄であるイビデン(4062)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
- 期間:2017/1〜2021/11(月足)
図表3 技術革新けん引が期待される半導体パッケージ関連銘柄
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価(12/16) | 時価総額(億円) | 今期予想営業増益率 | 投資のポイント |
4062 | 4062 | 4062 | 4062 | イビデン | 7,000 | 9,860 | 62.48% | 半導体パッケージ基板の最大手 |
6967 | 6967 | 6967 | 6967 | 新光電気工業 | 5,560 | 7,516 | 152.74% | 半導体パッケージの総合メーカー |
6966 | 6966 | 6966 | 6966 | 三井ハイテック | 11,590 | 4,574 | 199.74% | 半導体を繋げるリードフレームの大手 |
4182 | 4182 | 4182 | 4182 | 三菱瓦斯化学 | 1,941 | 4,382 | 22.49% | 半導体パッケージ用「BT積層板」を手掛ける |
4203 | 4203 | 4203 | 4203 | 住友ベークライト | 5,720 | 2,837 | 28.05% | 半導体封止材で世界トップ級 |
3110 | 3110 | 3110 | 3110 | 日東紡績 | 2,997 | 1,197 | 19.29% | 半導体パッケージ用ガラス繊維を手掛ける |
4973 | 4973 | 4973 | 4973 | 日本高純度化学 | 2,648 | 167 | 14.07% | リードフレーム用メッキ薬品を生成 |
6928 | 6928 | 6928 | 6928 | エノモト | 1,749 | 120 | 27.93% | リードフレームの大手 |
- ※各種報道等をもとにSBI証券が作成。今期予想営業増益率は市場コンセンサス。ただし、日本高純度化学のみ会社予想。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
この項では、図表3で抽出した銘柄について、投資ポイントなどをご紹介します。
イビデン(4062) ICパッケージの主力銘柄
- 期間:2021/6/24〜2021/12/17(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■ICパッケージ基板・プリント配線板が主力業務
電子機器に広く使われているICパッケージ基板、およびプリント配線板等が主力業務。ディーゼル排出ガス浄化フィルター(DPF)等も手掛けています。
このうち、ICパッケージ基板はICチップを保護し、プリント配線板へ接続する役割を果たす部品で、同社と新光電気工業(6967)が高いシェアを占めています。
ICチップは、コスト競争や性能向上の観点から小型化が求められますが、回路線幅の微細化や複数チップをひとつのパッケージに格納する積層化が、具体的な手段となります。また、同社は高い技術力で米国半導体大手のインテルと取引を拡大しています。
■インテル向け売上高がけん引
2022/3期・第2四半期(累計)では、売上高1,958億円(前年同期比36.0%増)、営業利益350億円(同130.4%増)と好調を持続。通期では売上高4,000億円(前期比23.7%増)、営業利益625億円(同61.8%増)が会社計画です。
新型コロナウイルスの感染拡大や米中対立の影響もあり、米国は半導体の国内生産を増やす見込みです。 これに対して、インテルも生産増強のため、高いICパッケージの技術を持つイビデンらと結びつきを強めています。なお、 インテルは米アリゾナ州に200億ドルで新工場を増設する予定で、それに対応すべく、イビデンは岐阜県大垣市の工場に総額1,800億円の設備投資を行う方針で、2026/3期には売上高6,000億円を狙いたいとのコメント(2021/11/18付け日本経済新聞)も報じられています。
三井ハイテック(6966) リードフレーム・EV用モーターコアが好調で業績予想上方修正
- 期間:2021/6/24〜2021/12/17(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■ICリードフレームの他、EV向けモーターコアも
金型(主な製品はプレス用金型)、電子部品(同、リードフレーム)、電機部品(同、モーターコア製品)、工作機械(同、平面研削盤)の製造・販売を事業としています。超精密加工技術を核として、グローバル供給体制をいかし顧客ニーズに対応。また、今後も需要の増加が予想されるハイブリッド車や電気自動車などの電動化のニーズに対応していく方針です。
このうち、リードフレームは半導体パッケージに使われる金属製の薄板で、半導体を支持固定し、プリント配線板に実装する際の接続端子となる部品です。
■EV用モータコアでは世界シェア70%
12/10(金)に会社側は業績予想を上方修正。2022/1期(通期)について、売上高は1,348億円から1,380億円(前期比41.8%増)、営業利益は116億円から130億円(同3.4倍)へ上方修正されました。
情報通信機器向けや車載向け半導体用リードフレーム、電動車向け駆動・発電用モーターコアの受注がそれぞれ好調に推移し、前回予想値を上回る見通しになっています。
こうした背景から、半導体パッケージ関連としてのみならず、EV・脱炭素関連銘柄として注目できることも強みと考えられます。EV用モータコアでは世界シェア70%を有し、EV市場の拡大を享受できそうです。
住友ベークライト(4203) 半導体封止材で世界シェア40%
- 期間:2021/6/24〜2021/12/17(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■半導体封止材でトップ
住友化学(4005)が21.1%を保有する大株主。熱硬化性樹脂を得意とし、特に世界トップシェア(推定で約40%)を持つエポキシ半導体封止材が収益源となっています。
半導体関連材料部門では半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の他、半導体用液状樹脂、半導体パッケージ基板材料等を主力としています。
■業績予想を上方修正。生産能力増強を続けて発表
会社側は10/27(水)に2022/3期業績予想の上方修正を発表。売上高は2,300億円から2,500億円、事業利益は190億円から250億円(前期比50%増)に上方修正しました。上半期に5Gスマートフォンに加え、データセンター関連機器やPC・タブレット向けの活況で、半導体市場が予想以上に活況だったことが影響したようです。
半導体封止材について、海外を中心とする需要の拡大に応えるべく、生産能力の拡充を相次いで発表。2021年7月には中国子会社で生産能力を5割増強する方針を発表し、11月には台湾で生産能力を2倍に増やす発表をしています。
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