2021年も12月第5週(12/27〜12/30)を残すのみとなりました。昨年末の終値は日経平均株価が27,444円17銭、TOPIXが1,804.68ポイントでしたから、今年の日本株は何とか前年末比プラスを維持して終わることができそうです。
2022年はどんな年になるのでしょうか。十干十二支(じっかんじゅうにし)でいうと「壬寅(みずえのとら)」で、「壬」と「寅」はともに「始まる」に縁がある漢字のようです。寅年だけを振り返っても「〜が始まる」で表現できる出来事が多かったようですが、それが波乱の始まりであることも多く、来年は注意深く物事を運ぶことで報われるかもしれません。
今回の「日本株投資戦略」は2021年最後の号になるということもあり「2022年の活躍銘柄」を予想してみました。2021年も当レポートをお読みいただき誠にありがとうございました。皆様の投資のご参考になればとの思いで執筆をつづけております。来年もよろしくお願い申し上げます。
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
日本株投資戦略※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
2022年はどんな銘柄が有望でしょうか。ここでは企業業績の方向感を重視し、大幅増益が見込めるにもかかわらず、割高感が乏しい銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみます。条件は以下の通りです。
(1)東証1部上場銘柄。
(2)銀行、保険、証券・商品先物を除く。
(3)時価総額500億円以上。
(4)アナリストカバレッジが2社以上ある銘柄であること。
(5)今期市場予想営業利益(Bloombergコンセンサス)が黒字転換、または10%超の営業増益予想。
(6)今期市場予想EPS(同)が過去4週間で上昇。
(7)来期・再来期の市場予想営業増益率が10%超。
(8)時価総額(12/23現在)が来期市場予想営業利益の25倍未満。
図表は、上記の(1)〜(8)をすべて満たした銘柄を、来年度予想営業増益率の高い順に並べたものです。
図表 来年度大幅増益・株価上昇期待の銘柄は!?
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄 | 株価(12/23) | 年初来騰落率 | 時価総額/来年度予想営業利益 | 今年度予想営業増益率 | 来年度予想営業増益率 |
4680 | 4680 | 4680 | 4680 | ラウンドワン | 1,414 | 52.5% | 10.4 | 黒転 | 1067.2% |
6472 | 6472 | 6472 | 6472 | NTN | 231 | -12.8% | 5.4 | 黒転 | 112.0% |
7201 | 7201 | 7201 | 7201 | 日産自動車 | 559.7 | -0.1% | 7.1 | 黒転 | 70.8% |
6135 | 6135 | 6135 | 6135 | 牧野フライス製作所 | 3,970 | 6.6% | 6.2 | 黒転 | 64.9% |
7752 | 7752 | 7752 | 7752 | リコー | 1,073 | 58.5% | 10.2 | 黒転 | 60.7% |
3088 | 3088 | 3088 | 3088 | マツキヨココカラ&カンパニー | 4,235 | -3.8% | 11.3 | 28.2% | 32.1% |
6902 | 6902 | 6902 | 6902 | デンソー | 9,187 | 49.8% | 12.5 | 187.2% | 30.2% |
4927 | 4927 | 4927 | 4927 | ポーラ・オルビスホールディングス | 1,960 | -6.4% | 18.9 | 33.7% | 29.5% |
4528 | 4528 | 4528 | 4528 | 小野薬品工業 | 2,817.5 | -9.3% | 11.0 | 10.7% | 23.9% |
7296 | 7296 | 7296 | 7296 | エフ・シー・シー | 1,465 | -17.8% | 4.8 | 89.4% | 22.2% |
4733 | 4733 | 4733 | 4733 | オービックビジネスコンサルタント | 4,965 | -30.4% | 20.2 | 17.7% | 21.5% |
6465 | 6465 | 6465 | 6465 | ホシザキ | 8,680 | -8.3% | 21.7 | 30.9% | 19.7% |
7733 | 7733 | 7733 | 7733 | オリンパス | 2,562 | 13.5% | 19.1 | 80.1% | 19.2% |
7732 | 7732 | 7732 | 7732 | トプコン | 1,669 | 30.2% | 11.7 | 97.8% | 18.3% |
5108 | 5108 | 5108 | 5108 | ブリヂストン | 4,997 | 47.7% | 8.4 | 467.3% | 16.8% |
6479 | 6479 | 6479 | 6479 | ミネベアミツミ | 3,200 | 56.3% | 12.8 | 80.5% | 15.8% |
3402 | 3402 | 3402 | 3402 | 東レ | 687.4 | 12.5% | 7.7 | 127.0% | 15.1% |
6367 | 6367 | 6367 | 6367 | ダイキン工業 | 25,585 | 11.6% | 20.8 | 33.9% | 12.9% |
3288 | 3288 | 3288 | 3288 | オープンハウス | 6,080 | 60.4% | 6.1 | 10.9% | 12.7% |
9025 | 9025 | 9025 | 9025 | 鴻池運輸 | 1,194 | 16.8% | 7.1 | 112.5% | 12.2% |
6504 | 6504 | 6504 | 6504 | 富士電機 | 6,190 | 66.6% | 12.1 | 40.2% | 11.7% |
4901 | 4901 | 4901 | 4901 | 富士フイルムホールディングス | 8,589 | 57.9% | 17.6 | 35.8% | 11.6% |
4185 | 4185 | 4185 | 4185 | JSR | 4,400 | 53.1% | 17.1 | 黒転 | 10.3% |
- ※各種報道等をもとにSBI証券が作成。予想営業増益率は市場コンセンサス。
- ※株価・騰落率は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
この項では、図表1で抽出した銘柄の一部について、投資ポイントなどをご紹介します。
ラウンドワン(4680) リオープン関連銘柄の一角
- 期間:2021/7/1〜2021/12/24(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■郊外ロードサイドに複合アミューズメント施設
屋内型複合レジャー施設を展開。ボウリングやゲーム機器、カラオケ、各種スポーツ、ビリヤード・ダーツなど多くの遊戯施設を楽しめます。
日本を中心に米国他にも展開。店舗数(2021/9末)は国内98店舗、米国46店舗、ロシア1店舗、中国1店舗等合計146店舗です。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2021/3期は売上高が609億円と、前期比41.8%減少。営業損益は192億円の赤字となりました。
■来年度以降、増益基調へ
会社側は11/5(金)に2022/3期の業績予想を修正。新型コロナウイルスからの回復が遅れたこともあり、予想営業利益は当初見通しの61.2億円から6.5億円に下方修正されました。ただ、時短要請に伴う協力金計上等があり、予想経常利益は53.9億円から63.2億円(黒字転換)に上方修正されました。
平常時(2019年の同月)と比較した月次既存店売上高は10月9.5%減から11月は4.1%減とマイナス縮小です。足元はオミクロン株感染拡大に伴う不透明感が残りますが、それが一巡し、経済活動再開が本格化すれば、さらに業績回復は続くと市場はみているようです。
市場予想営業利益は今年度11億円から、来年度130億円、再来年度152億円と拡大が見込まれています。なお、株価的には、2019年末が1,058円であり「コロナ前」の水準以上にはなっています。
ミネベアミツミ(6479) アナログ半導体も戦力に
- 期間:2021/7/1〜2021/12/24(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■ベアリングや小型モーターが得意分野
ベアリングや小型モーターを得意とする総合電子部品メーカーです。2017年にミネベアとミツミが統合して誕生しました。
情報通信機器や家電、自動車制御モーターに使われる小型ボールベアリングでは世界シェア60%を誇ります。
売上構成比(前期)はボールベアリングなど「機械加工品」が16%、
モーターなどの「電子機器」が35%、アナログ半導体や機構部品等の「ミツミ」が36%他となっています。
2022/3期・第2四半期(11/5発表・累計)は売上高5,302億円(前年同期比14.8%増)、営業利益196億円(前年同期比113.3%増)。これを受け、2022/3期の営業利益は870億円から900億円へと上方修正(今期2回目)されました。
■EV化でベアリング増加も。アナログ半導体も期待
中期的には、主力のミニチュアボールベアリングはEV化が進むことによって、1台当たりの搭載数量が加速的に増加すると期待されます。また、オムロンの半導体工場を買収(6/30)しており、アナログ半導体も中期的成長ドライバーとして期待できそうです。
当社はSBI証券企業調査部の調査対象銘柄です。同部は11/30(火)付レポートで目標株価を4,000→4,450円に引き上げ。投資判断は「買い」を継続としています。構造的に退潮が懸念される事業が見当たらないため、当面は増益基調が続きそうです。
富士電機(6504) 「パワー半導体」、「電気自動車」、「上期好決算」等、数多くの注目テーマに関連
- 期間:2021/7/1〜2021/12/24(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■パワーエレクトロニクス技術が基板
1923年に古河電気工業(5801)と独シーメンスの合弁企業として設立されました。
電気エネルギーを効率的に使うパワーエレクトロニクスが技術的基盤。一般産業向けに広く普及するパワー半導体の他、プリンタに使われる感光体、HDDを構成するメディア媒体、自動販売機、コーヒーマシンなど広範囲にわたる製品を開発し、販売しています。
2021/3期に売上高は8,759億円(前期比2.7%減)と伸びませんでしたが、営業利益485億円(同14.3%増)、純利益419億円(同45.6%増)と最高益を更新。このうち、売上高1,575億円、営業利益177億円を確保した半導体事業がけん引役となっています。
2022/3期・第2四半期(累計)は売上高3,976億円(前年同期比11.4%増)、営業利益163億円弱(同207.7%増)。会社側では通期の予想営業利益は670億円(前期比37.9%増)と見込んでいます。
■パワー半導体の他、注目ポイントは豊富
半導体事業の中心はパワー半導体です。
パワー半導体は高い電圧を扱うことができる半導体で、発熱・破損しやすい分、電力損失を少なくすることが求められるのが特徴で、パワー半導体の使用により、エアコンの消費電力は10年で40%減少したと言われます。
なお、パワー半導体の世界トップ企業は独インフィニオンテクノロジーで、国内では三菱電機がトップ、同社は第5位とされています。
EV(電気自動車)やハイブリット車では、ガソリン車に対して数倍から10倍程度のパワー半導体が必要になると言われており、今後も市場は拡大し、同社業績も成長しそうです。
SBI証券 企業調査部も同社をカバーしています。
予想営業利益は2022/3期680億円から、2023/3期は788億円、2024/3期は888億円と拡大の見込み。11/8(月)付レポートでは目標株価は7,000円で、投資判断は「買い」と評価しています。
SBI証券の投資ツール「テーマキラー!」においては、「パワー半導体」、「電気自動車」、「上期好決算」の3つに関連しています。その意味では注目ポイントの豊富な銘柄ともいえそうです。
JSR(4185) 半導体フォトレジストで高シェア
- 期間:2021/7/1〜2021/12/24(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■半導体フォトレジストで高シェア
当社は化学メーカーであり、半導体やライフサイエンス(生命科学)に注力しています。売上構成比(前期)は半導体・ディスプレイ等の材料を主力とする「デジタルソリューション」が50%、自動車向けにABS樹脂を供給する「合成樹脂」が26%、バイオ医薬品を開発する「ライフサイエンス」が18%となっています。
2021/3期は売上高4,466億円(前期比5.4%減)となり、営業損益は616億円、最終損益は551億円のそれぞれ赤字となりました。エラストマー(合成ゴム)事業が自動車生産停滞の影響等を受けました。
2022/3期は回復傾向です。2021/4〜9期の売上高は1,682億円(前年同期比20.8%増)、コア営業利益は230億円(同38.5%増)、営業利益は228億円(同60.9%増)。2022/3期(通期)について会社側は、コア営業利益を95億円増額の525億円に、営業利益を93億円増額の523億円に上方修正しました。
■選択と集中が明確となり、成長持続へ
当社は祖業でありながら業績不振のエラストマー事業について、5月にはENEOSへの売却を決定。「デジタルソリューション」と「ライフサイエンス」への集中する体制となりました。
このうち、「デジタルソリューション」の主力である半導体用フォトレジスト事業では、最先端の露光技術であるEUV(極端紫外線)に対応し、高い市場シェアを有しています。9月には米国のインプリア社の完全子会社化を決定。この会社は回路線幅が3ナノメートルから1ナノメートルに移行する時に採用が予想される「メタルレジスト」の技術を有している会社で、この完全子会社化でフォトレジスト事業の競争力はさらに強化されたものと考えられます。
当社についてはSBI証券企業調査部もカバー。12/8(水)付レポートでは目標株価4,300円、投資判断「中立」としています。
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