2022年の東京株式市場はまさしく「乱高下」してのスタートです。日経平均株価は1/4(火)に前年末比510円高、1/5(水)も前日比30円高と続伸しましたが、1/6(木)には同844円安と急反落してしまいました。
新型コロナウイルスの感染拡大が続いているものの、米国では景気回復期待が根強く、NYダウは高値更新となり、1/4(火)・1/5(水)とも続伸でした。反面、昨年12月以降の長期金利上昇基調が年明けも継続し、PERの高いハイテク株は売りが優勢。特に1/5(水)はFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨の内容が、予想以上にタカ派的であったとの見方が多く、長期金利上昇が加速し、ハイテク株の多いナスダックが1営業日で3.3%下げる急落となりました。
こうした中、米国ではヘッジファンド等大口投資家が、ソフトウェアや半導体関連株に10年ぶりと言われる巨額の売り注文を執行したと伝えられ、ハイテク株等への売りが加速。その流れを引き継いだ1/6(木)の東京株式市場は急落となりました。
1/7(金)はとりあえず、反発してスタートしましたが、買い一巡後は売られるなど、不安定な状態は継続しているように見受けられます。今後はどうなるのでしょうか。物色対象としてはいかなる銘柄が有望でしょうか。
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
日本株投資戦略※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
市場予想では、2022年の米国においては量的緩和が3月までに終了し、その後は政策金利の引き上げ局面になるとされています。米政策金利(上限)は、2021年末の0.25%から2022年末には0.75%に、米長期金利は2021年末の1.51%から、2022年末に2.0%超まで上昇するというのが市場予想(Bloombergコンセンサス)です。インフレ圧力を抑えるべく、世界的に金利は上昇しやすく、PERやPBRが高く割高感の強い銘柄は、相対的に売られやすい状態が続きそうです。
株式市場を眺めると、1/6(木)の株価急落相場でも、金利上昇に強いバリュー系の銘柄は物色されており、銘柄入れ替えが進んでいるという印象です。株価の下落に注意すべきことは確かですが、同様に物色対象の変化に注意を払うべきかもしれません。
そこで今回の「日本株投資戦略」では、以下の条件でスクリーニングを行ってみました。業績が堅調なものの割安感が強く、財務体質が良好で、将来の金利上昇局面にも強そうな銘柄を抽出してみました。
(1)東証1部上場銘柄。
(2)時価総額1千億円以上。
(3)予想PER12倍未満。
(4)PBR1倍未満。
(5)有利子負債自己資本比率20%未満
(6)予想配当利回り2%超。
(7)市場コンセンサスで今期経常利益が前期比5%超の増益、または黒字転換の予想。
図表1の銘柄は、(1)〜(7)の条件をすべて満たしています。掲載の順番は(4)で用いたPBRの低い順になっています。
図表1 金利上昇・波乱が予想される相場でも株価上昇が期待できそうな銘柄は?
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 現在値 | 予想PER(倍) | PBR(倍) | 有利子負債自己資本比率 | 予想配当利回り | 予想経常増益率 |
9404 | 9404 | 9404 | 9404 | 日本テレビホールディングス | 1,179 | 7.48 | 0.37 | 0.3% | 2.95% | 6.67% |
9409 | 9409 | 9409 | 9409 | テレビ朝日ホールディングス | 1,429 | 8.62 | 0.39 | 0.2% | 2.94% | 9.78% |
9076 | 9076 | 9076 | 9076 | セイノーホールディングス | 1,157 | 10.43 | 0.50 | 9.3% | 2.80% | 16.07% |
6995 | 6995 | 6995 | 6995 | 東海理化電機製作所 | 1,599 | 10.80 | 0.57 | 3.9% | 3.78% | 黒字転換 |
4114 | 4114 | 4114 | 4114 | 日本触媒 | 5,360 | 10.15 | 0.67 | 16.7% | 2.31% | 42.62% |
5463 | 5463 | 5463 | 5463 | 丸一鋼管 | 2,581 | 9.11 | 0.78 | 2.6% | 3.10% | 62.08% |
4182 | 4182 | 4182 | 4182 | 三菱瓦斯化学 | 2,002 | 7.91 | 0.79 | 18.4% | 3.94% | 8.99% |
1417 | 1417 | 1417 | 1417 | ミライト・ホールディングス | 1,905 | 8.57 | 0.85 | 0.1% | 2.49% | 17.27% |
8595 | 8595 | 8595 | 8595 | ジャフコ グループ | 6,490 | 8.94 | 0.89 | 0.1% | 2.62% | 128.35% |
4023 | 4023 | 4023 | 4023 | クレハ | 8,470 | 11.11 | 0.90 | 14.6% | 2.17% | 15.68% |
7994 | 7994 | 7994 | 7994 | オカムラ | 1,288 | 10.10 | 0.93 | 17.6% | 2.85% | 31.66% |
1721 | 1721 | 1721 | 1721 | コムシスホールディングス | 2,612 | 10.37 | 0.99 | 1.7% | 3.66% | 16.23% |
- ※SBI証券のスクリーニングツールを用いてSBI証券が作成。データは2022/1/6(木)時点。
- ※「有利子負債自己資本比率」は、有利子負債/自己資本により求められ、数字が低いほど財務体質が良好であると考えられます。
- ※予想は市場コンセンサス。
この項では、図表1で抽出した銘柄について、投資ポイントなどをご紹介します。
三菱瓦斯化学(4182)〜脱炭素や半導体市場の拡大も追い風か
- 期間:2021/7/13〜2022/1/7(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■川上から川下まで幅広く展開〜半導体材料に注目
当社は大手化学メーカーで、暮らしに密着したメタノール、アンモニア等の基礎化学品から高機能な機能化学品まで幅広く展開。世界にグループ会社147社を抱え、海外売上高が59%(前期)に達するグローバル企業です。
このうちメタノールについては、当社が「世界で唯一のメタノール総合メーカー」で、天然ガスを原料に製造し、そこからプラスチック、合成繊維、接着剤等多種多様な製品を生産しています。二酸化炭素からメタノールを生産する技術を持ち、環境保全への貢献も目指しています。
機能化学品の中では、BT(ビスマレイミド・トリアジン)樹脂が注目されます。耐熱性や電気特性に優れた材料で、半導体パッケージに材料面で革新的な変化をもたらしました。今後は半導体市場の成長に加え、パッケージ基板の高機能化や構造変化等もあり、成長の持続が期待されています。
この他、MXナイロン、光学樹脂ポリマー、MXDA(メタキシレンジアミン)、脱酸素剤等、多くの世界シェア1位製品を有していることが、当社の強みになっています。
■業績予想を上方修正。財務体質も堅固
当社は2021/11/5(金)に2022/3期・第2四半期(累計)決算を発表。売上高3,358億円(前年同期比26.0%増)、経常利益387億円(同134.3%増)となりました。メタノールの市況上昇や、半導体向けBT樹脂の好調などが追い風になりました。好調な上半期決算を受け、通期の会社計画売上高は6,600億円から6,900億円(前期比15.8%増)に、経常利益は610億円から680億円に上方修正されました。
今期第2四半期末の総資産は8,672億円、純資産は6,092億円(自己資本比率63.3%)で好財務体質。長短借入金に社債を加えた有利子負債は891億円ですが、現預金884億円を保有する上、流動比率(流動資産が流動負債の何%かを示す)も245%あり、金利上昇に強い財務体質と言えそうです。
ミライト・ホールディングス(1417)〜安定成長が継続、財務体質も良好
- 期間:2021/7/13〜2022/1/7(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■安定成長継続の通信設備工事大手
当社は通信設備工事の大手企業です。2010年に電気通信設備事業を営む大明、東電通、コミューチュアの3社による共同持株会社としてスタート。NTTやモバイルキャリア向けに通信設備の建設や保守、運用等を行う事業が中核ですが、一般企業向けにも展開しています。
2021/11/12(金)に2022/3期・第2四半期(累計)決算を発表。売上高2,118億円(前年同期比10.5%増)、営業利益110億円(同64.2%増)と、5期連続増収となり、最高益更新となりました。受注高も前年同期比8.9%増と拡大しています。
これを受け、通期会社計画は売上高が4,700億円から4,800億円(前期比3.5%増)に、営業利益は305億円から320億円(同6.2%増)に、経常利益は320億円から335億円(同5.5%増)に、それぞれ上方修正されました。
■金利上昇に強そうな財務体質。事業環境も追い風が目立つ
2022/3期・第2四半期末の総資産は3,360億円、純資産は2,348億円。1/6(木)時点の時価総額は2,060億円で、「解散価値」といわれる純資産を下回る割安感の強い水準です。
自己資本比率は68.4%と高めで、有利子負債は短期借入金1.9億円程度と、ほぼ無借金経営であり、財務体質は堅固に見えます。現預金482億円を有し、金利上昇には強い財務内容と見受けられます。
今後、金利上昇が見込まれる環境下に加え、5Gインフラやデータセンターの整備、EV普及に伴う通信需要のさらなる増大と、事業環境においても追い風が継続しそうです。
当社に対する投資戦略としては、安定成長型企業のため、株価上昇局面で飛び乗ると報われないケースもあり注意が必要。ただ現状は9/14(火)の年初来高値2,403円から21%弱下げた水準であり、押し目買い検討も可能とみられます。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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