日経平均株価が下落基調です。1/5(水)終値(年内高値)から1/27(木)終値までの下落率は10.8%に達し、調整局面に入った可能性もあります。重要な下値メドに到達するなど、値頃感が出てきたことから、1/28(金)は反発しましたが、市場のインフレ高進や金利上昇に対する懸念は続いており、依然油断は禁物でしょう。
こうした中、上場企業の決算発表が本格化してきました。今回の「日本株投資戦略」では、株価は下落したものの、好業績が確認され、今後上昇基調が期待できそうな銘柄をピックアップしてみました。
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
日本株投資戦略※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
日経平均株価が下落基調です。1/27(木)の取引時間中には前日比966円下げる場面もみられ、終値は26,170円30銭(前日比841円03銭安)となり、2020/11/24(火)以来の安値水準になりました。1/5(水)終値(年内高値)から1/27(木)終値までの下落率は10.8%に達し日経平均株価は調整局面に入った可能性もあります。
年初からの株価下落の要因は、米国を中心にインフレ進行や金利上昇への懸念が強まってきたためです。さらに、米国時間1/26(水)に結果が発表されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の内容やパウエルFRB議長の会見が、「タカ派的」との印象が強い内容であったため、翌日1/27(木)の東京株式市場は“大荒れ”となりました。
FOMCは今回、予定通り量的緩和を3月上旬に終わらせ、政策金利は据え置くとしました。ただ、次回3月の会合では利上げに踏み切る方針であることが示唆されました。この辺については、市場予想の通りであると考えられます。
しかし、労働市場の強さやインフレに対するFRB(米連邦準備制度理事会)の警戒感は相当に強いという印象です。これまで、年内の利上げ回数について、FOMCメンバーは3回、市場は4回を予想というのがメインシナリオとみられていました。しかし、今回のFOMCは市場の予想を「追認」したような内容である上、市場の一部にある「一回につき0.5%の利上げもあり得る」という見方を否定していない分、市場よりもタカ派的になったという印象もあります。さらに、資産の圧縮については「大幅に圧縮する必要がある」という見方を示唆しています。まとめると、今後のFRBによる利上げの回数や幅は、ともに市場予想を上回る可能性が出てきたことになります。
こうした中、1/27(木)の株価急落で、日経平均株価は以下のような下値メドに到達しました。
●26,449円・・・1/5(水)の取引時間中高値29,388円から10%下落した水準。
●26,284円・・・25日移動平均線からマイナス7%かい離。
1/27(木)時点で、日経平均株価のRSIは「売られ過ぎ」の目安である30%を下回り、24.62%まで低下してきました。翌日の1/28(金)は反発しました。上記の下値メドに到達するなど、値頃感が出てきたことが要因かもしれません。ただ、市場のインフレ高進や金利上昇に対する懸念は続いており、依然油断は禁物でしょう。
株価が大きく下げてきた時に、次の3つのテクニカル指標が「下げ過ぎ」を示唆した時に当面の「底値」となることが多いようです。
(1)日経平均株価が25日移動平均線から7〜8%マイナスかい離。
(2)RSIが「下げ過ぎ」を示唆する30%未満まで低下。
(3)騰落レシオ(25日)が「下げ過ぎ」を示唆する70%未満まで低下。
今回の下落局面では、(1)と(2)は満たしたと言えますが、(3)が日経平均株価については101.8%と「下げ過ぎ」を示唆する水準には達していません。(3)は25日間の値上がり銘柄数合計を、25日間の値下がり銘柄数合計で割って求められますので、この数字が「下げ過ぎ」を示唆する水準に達していないということは、日々の値下がり銘柄数が依然として高水準を維持し続けるリスクがあることを示唆しているとも言えます。
したがって、日経平均株価が当面の「底値」に達した可能性はあるものの、銘柄の選別には引き続き注意を払うべきとみられます。折しも、東京株式市場ではここから、決算発表シーズンが本格化してきます。決算発表前の銘柄にリスクを取るよりも、決算発表で好業績が確認された銘柄を中心に投資対象を検討する方が、堅実ではないでしょうか。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、次の条件で銘柄をスクリーニングをしてみました。
(1)東証1部上場銘柄。
(2)時価総額1,000億円以上。
(3)3月決算銘柄。
(4)1/27(木)までに2022/3期第3四半期決算を発表。
(5)同四半期の営業利益が事前の市場コンセンサスを上回っている。
(6)同四半期(累計)営業増益率が通期の会社予想営業増益率(修正後はその営業利益数値が基準)を10%超上回っている。
(7)1/5(水)〜1/27(木)の株価下落率が10%超。
図表1・図表2の銘柄は、上記のすべての条件を満たしています。銘柄掲載の順番は、(6)の2022/3期第3四半期(累計)営業増益率が高い順となっています。「日本株投資戦略」は、これらについて「株価は下落したものの、好業績が確認され、今後上昇基調が期待できそうな銘柄」であると考えています。
図表1 株価が1/5(水)から10%超下落したものの、好決算が確認され、株価上昇が期待できそうな銘柄
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 終値(1/27) | 銘柄・業績概要 |
6967 | 6967 | 6967 | 6967 | 新光電気工業 | 4,580 | ICチップを他のデバイスと電気的につなぐ「半導体パッケージ」の大手。ライバルはイビデン(4062)。「パッケージ技術」は微細化を補完すると言われる。PC、サーバー、自動車向けが好調で、通期予想営業利益を594→680億円に上方修正。 |
6807 | 6807 | 6807 | 6807 | 日本航空電子工業 | 1,756 | NECの子会社。スマートフォンや車載カメラ、自動車等で使われるコネクターが主力。積極的なグローバルマーケティングと、新製品開発や内製化に注力。2021/4〜12期営業利益は144億円(前年同期比233.2%増)と好調。 |
6504 | 6504 | 6504 | 6504 | 富士電機 | 5,370 | パワー半導体に注力。EV(電気自動車)やハイブリット車では、ガソリン車に対して数倍から10倍程度のパワー半導体が必要と言われ、今後も市場は拡大しそう。今回の四半期決算もパワー半導体やオートメーション関連が好調で、通期予想営業利益を670→720億円に上方修正。 |
6954 | 6954 | 6954 | 6954 | ファナック | 22,410 | 工作機械に搭載されるCNC(コンピューター数値制御)装置トップ。FA、ロボット、ロボマシンを展開。FAやロボットへの需要は旺盛で、2021/10〜12期の受注高は前年同期比24%増。通期予想営業利益を1,775億円→1,865億円に上方修正。 |
6857 | 6857 | 6857 | 6857 | アドバンテスト | 8,810 | 半導体検査装置大手。半導体の高性能化が検査時間を長くし、需要拡大につながっている。2021/4〜12期の受注は前年同期比2.3倍に拡大。通期予想営業利益は1,050億円→1,150億円に上方修正。 |
6146 | 6146 | 6146 | 6146 | ディスコ | 31,650 | 半導体の製造工程で使われる精密加工装置を製造・販売。主力のダイシングソー(ウェハーを切り分ける装置)は長期間、世界シェア7〜8割を維持。脱炭素を指向したパワー半導体向けに需要が拡大。2021/10〜12期の出荷額は過去最高を更新。今期予想営業利益は833億円(前期比56.9%増) |
- ※Bloombergデータ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
- ※この表のデータは過去の実績を示したもので、将来を示唆するものではありません。
図表2 「図表1」の銘柄の主要指標
コード | 銘柄名 | 1/5終値比株価変動率 | 2021/4〜12期営業増益率 | 2022/3期会社予想営業増益率 | 2022/3期市場予想営業増益率 | 2023/3期市場予想営業増益率 |
6967 | 新光電気工業 | -17.9% | +252.6% | +191.6% | +148.1% | +10.1% |
6807 | 日本航空電子工業 | -13.8% | +233.2% | +112.5% | +111.5% | +9.3% |
6504 | 富士電機 | -13.2% | +132.1% | +48.2% | +41.5% | +13.1% |
6954 | ファナック | -12.5% | +114.4% | +65.8% | +68.2% | +18.6% |
6857 | アドバンテスト | -21.9% | +75.5% | +62.6% | +58.3% | +19.1% |
6146 | ディスコ | -10.6% | +72.5% | +56.9% | +57.1% | +3.3% |
- ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※「市場予想」はBloombergが集計した市場コンセンサス
- ※この表のデータは過去の実績を示したもので、将来を示唆するものではありません。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
- ※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。