米国市場では、4/13(水)、4/14(木)と大手銀行が決算発表を実施し、いよいよ2022年1〜3月期の決算発表シーズンが幕を開けました。日本でも4月下旬以降、3月本決算銘柄の決算発表が本格化する運びです。
今回の「日本株投資戦略」は、2月決算の発表を振り返るとともに、発表が迫ってきた3月決算銘柄について、好業績・業績予想上方修正、株価上昇等が期待できる銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
日本株投資戦略※YouTubeに遷移します。
■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
米国市場では、4/13(水)にJPモルガン・チェース・アンド・カンパニー、4/14(木)にシティグループ、ゴールドマン・サックス・グループ他の企業が決算発表を実施し、いよいよ2022年1〜3月期の決算発表シーズンが幕を開けました。日本でも4月下旬以降、3月本決算銘柄の決算発表が本格化する運びです。ただ、2月決算企業は一足早く決算発表シーズンを迎え、4/14(木)には144社の決算発表がありました。日本もすでに、決算発表シーズンを迎えているといえるでしょう。
2月決算で時価総額1,000億円以上の主力企業について集計(試算)すると、2022/2期の営業利益は前期比18%増となった模様です。また、2023/2期の営業利益は13%増の見込み(会社予想ベース)です。市場コンセンサスのある銘柄だけでの比較では、2022/2期の営業利益は市場コンセンサスに対し-3%、2023/2期の会社予想営業利益は市場コンセンサスに対し-5%弱と試算されます。小売企業を主体とする2月決算企業については、増益傾向が続いているものの、やや市場の期待を下回っているケースが多いようです。
ただ、逆に市場の期待を上回っている銘柄は、株価も堅調となっています。
図表1は、2月決算銘柄のうち、時価総額1,000億円以上の企業で、2022/2期営業利益の実績、および2023期会社予想営業利益がともに、事前の市場コンセンサス(Bloomberg集計)を上回った企業です。ここでは、後者の予想増益率が大きい順にランキングにしました。決算発表日から4/14(木)までの株価騰落率をみると、しまむら(8227)が+7.6%、ローツェ(6323)が+21.4%、ベルシステム24ホールディングス(6183)が+5.6%といずれも株価が上昇となりました。4/14(木)に決算発表のディップ(2379)は、4/15(金)の東証プライム市場値上がり率上位に顔を出しています。
これらの銘柄は今後も、市場での物色対象になる可能性もありそうです。ウクライナ問題やインフレ・金利上昇懸念を背景に、株式市場自体は不安定な状態が続きそうですが、株式市場全般が下がっているときに押し目を拾う対象として考えてよいかもしれません。
図表1 ≪2月決算・大幅増益予想ランキング≫22/2期実績、23/2期会社予想ともに市場予想を上回った5銘柄
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価(4/14) | 2022/2期営業利益(予想比) | 前期比増減率 | 2023/2期予想営業利益(予想比) | 前期比増減率 |
2379 | 2379 | 2379 | 2379 | ディップ | 3,560 | 5,602(+4.5%) | -23.4% | 13,150(+9.6%) | +134.7% |
6323 | 6323 | 6323 | 6323 | ローツェ | 13,320 | 15,810(+1.3%) | +69.7% | 24,733(+7.2%) | +56.4% |
6183 | 6183 | 6183 | 6183 | ベルシステム24ホールディングス | 1,492 | 13,234(+0.4%) | +12.2% | 14,000(+1.0%) | +5.8% |
8227 | 8227 | 8227 | 8227 | しまむら | 11,620 | 49,420(+4.6%) | +30.0% | 52,058(+4.9%) | +5.3% |
9974 | 9974 | 9974 | 9974 | ベルク | 5,440 | 13,072(+0.6%) | +9.6% | 13,193(+1.5%) | +0.9% |
- ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※2022/2期営業利益の単位は百万円。カッコ内は事前の市場コンセンサスを何%上回ったのかを示しています。
- ※2023/2期の予想営業利益は、会社予想ベースで、単位は百万円。カッコ内は事前の市場コンセンサスを何%上回ったのかを示しています。
- ※ディップ(2379)の2023/2期予想営業利益はレンジ(9,400〜16,900百万円)で表現されており、表にはその中間値を掲載しました。
さて、日本でも4月下旬以降、3月本決算銘柄の決算発表が本格化してくる予定です。4/15(金)現在の発表スケジュール(SBI証券Webサイト参照)をみると、発表予定社数は4/28(木)に246社と最初のヤマ場を迎え、5/9(月)〜5/16(月)は毎日3桁以上社数の発表が続く予定です。5/13(金)は最大のヤマ場となり、1,281社が発表する見込みです。おもな企業では、トヨタ(7203)が5/11(水)、ソフトバンクグループ(9984)が5/12(木)の予定です。
決算発表を控え、どのような銘柄が注目されるでしょうか。前項でご説明した通り、決算発表を経て、利益実績、会社予想営業利益がともに市場予想を上回るような銘柄の株価が上昇する可能性が大きそうです。そこで、「日本株投資戦略」では以下のようなスクリーニングを行ってみました。
(1)東証に上場している時価総額(4/13現在)1,000億円超の銘柄であること。
(2)2名以上のアナリストが業績予想を公開している銘柄であること。
(3)3月決算銘柄であること。
(4)2021/4〜12期累計営業利益が前年同期比で20%以上の増益になっていること。
(5)2021/4〜12期累計営業増益率が2022/3期市場予想(Bloomberg集計)営業増益率を10%以上の差で上回っていること。
(6)2023/3期市場予想営業利益が、2022/3期市場予想営業利益に対し10%超の増益予想となっている銘柄であること。
(7)2022/3期市場予想EPSが過去4週間で上昇している銘柄であること。
(8)2021/4〜12期累計営業利益の2022/3期市場予想に対する進捗率が、前年同期に対して改善していること。
(9)上記(8)を満たしていない場合、2021/4〜12期累計営業利益増加額(前年同期比)が、2022/3期(通期)の市場予想営業利益増加額を上回っていること。
図表2の銘柄は、これらすべての条件を満たし、2021/4〜12期累計営業増益率が高い順でランキングされています。
「日本株投資戦略」では、これらの銘柄は、2022/3期決算で市場の期待を上回る決算となり、株価が上昇する可能性が大きいとみています。
ただ、業績予想について、読み切ることが難しいのが会社予想業績です。合理的に予想された通りに、会社側が予想を出してくれるとは限らず、市場予想と比べ過度に楽観的であったり、過度に保守的であったり等、会社ごとに「クセ」があるように思われます。インフレや金利上昇に対する不透明感が強く、ウクライナ情勢の予想も難しい事業環境下において、企業の2023/3期の業績予想が保守的になり、市場の事前予想を下回ってくるケースも少なくないと予想されるので、その点は注意が必要です。
図表2≪3月決算・3Q大幅増益ランキング≫上方修正・好決算、株価上昇が期待できる銘柄は?
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価(4/14) | 2021/4〜12期営業利益 | 前期比増加率 | 2022/3期予想営業利益 | 前期比増加率 |
6967 | 6967 | 6967 | 6967 | 新光電気工業 | 5,750 | 52,496 | +252.6% | 69,155 | +196.4% |
6305 | 6305 | 6305 | 6305 | 日立建機 | 3,130 | 61,296 | +235.0% | 86,281 | +205.6% |
6807 | 6807 | 6807 | 6807 | 日本航空電子工業 | 1,992 | 14,473 | +233.2% | 18,615 | +113.8% |
6770 | 6770 | 6770 | 6770 | アルプスアルパイン | 1,218 | 27,875 | +221.5% | 31,563 | +140.8% |
7735 | 7735 | 7735 | 7735 | SCREENホールディングス | 10,770 | 40,162 | +213.9% | 56,376 | +130.2% |
6407 | 6407 | 6407 | 6407 | CKD | 1,722 | 13,237 | +197.7% | 17,260 | +124.2% |
6951 | 6951 | 6951 | 6951 | 日本電子 | 5,780 | 8,786 | +172.1% | 11,917 | +128.1% |
6504 | 6504 | 6504 | 6504 | 富士電機 | 5,690 | 32,660 | +132.1% | 73,396 | +51.0% |
6963 | 6963 | 6963 | 6963 | ローム | 8,950 | 56,201 | +129.7% | 68,820 | +78.8% |
8129 | 8129 | 8129 | 8129 | 東邦ホールディングス | 2,030 | 5,549 | +68.3% | 6,375 | +48.2% |
5803 | 5803 | 5803 | 5803 | フジクラ | 557 | 27,948 | +61.4% | 33,450 | +37.0% |
3110 | 3110 | 3110 | 3110 | 日東紡績 | 2,565 | 5,655 | +32.4% | 7,300 | +22.4% |
- ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※2022/3期営業利益の単位は百万円。
- ※2023/3期の予想営業利益は、Bloomberg集計の市場コンセンサスで、単位は百万円。
日本電子(6951)〜半導体向けマルチビーム描画装置で今後市場をリードか?
- 期間:2021/10/21〜2022/4/15 15:00時点(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■露光装置大手ASMLの成長と連動か
同社は電子顕微鏡の他、分析機器、医療機器、産業用機器などの製造・販売・開発・研究などを手掛けています。なお、半導体回路の原板であるフォトマスクに微細な回路パターンを描写する電子ビーム描画装置の分野では、これまで1本の電子ビームを使っていたのに対し、同社の装置は26万本の電子ビームで一気に描画することができます。
世界で独占的な露光装置(ステッパー)のシェアをもつASML社の装置を使う際にも、同社の電子ビーム描画装置が不可欠な存在と言われています。このため、同社の業績はASML社の露光装置の販売増加に連動して成長することが期待されています。
■SBI証券 企業調査部では成長を予想
SBI証券 企業調査部も同社をカバーしています。2/22(火)付レポートでは、予想営業利益は2022/3期131億円から、2023/3期は185億円、2024/3期は227億円と拡大の予想です。
株式市場全般のグロース銘柄の調整もあり、当社株も大きく下げてきました。SBI証券企業調査部でも、妥当な予想PERを引き上げたため、目標株価は12,000円から9,500円に引き下げられています。
それでも、時価は目標株価を大きく下回っています。決算発表で好業績を確認することができれば、株価底打ちから反転を期待することもできそうです。
富士電機(6504)〜パワー半導体で成長。「カーボン・ニュートラル」の流れも追い風か?
- 期間:2021/10/21〜2022/4/15 15:00時点(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■パワーエレクトロニクス技術が基板
1923年に古河電気工業(5801)と独シーメンスの合弁企業として設立されました。
電気エネルギーを効率的に使うパワーエレクトロニクスが当社の技術的基盤です。一般産業向けに広く普及するパワー半導体の他、プリンタに使われる感光体、HDDを構成するメディア媒体、自動販売機、コーヒーマシンなど広範囲にわたる製品を開発し、販売しています。
2021/3期に売上高は8,759億円(前期比2.7%減)と伸びませんでしたが、営業利益485億円(同14.3%増)、純利益419億円(同45.6%増)と最高益を更新しました。このうち、売上高1,575億円、営業利益177億円を確保した半導体事業がけん引役となっています。
2022/3期・第3四半期は売上高6,199億円弱(前年同期比10.5%増)、営業利益326億円(同132.1%増)。通期の会社予想営業利益は720億円(前期比48.2%増)ですが、市場では733億円前後を見込んでいます。
■パワー半導体の成長に期待
半導体事業の中心はパワー半導体です。
パワー半導体は高い電圧を扱うことができる半導体で、発熱・破損しやすい分、電力損失を少なくすることが求められるのが特徴で、パワー半導体の使用により、エアコンの消費電力は10年で40%減少したと言われます。
なお、パワー半導体の世界トップ企業は独インフィニオンテクノロジーで、国内では三菱電機がトップ、同社は第5位とされています。
EV(電気自動車)やハイブリット車では、ガソリン車に対して数倍から10倍程度のパワー半導体が必要になると言われており、今後も市場は拡大し、同社業績も成長しそうです。
SBI証券 企業調査部も同社をカバーしています。3/3(木)付レポートでは、予想営業利益は2022/3期725億円から、2023/3期は808億円、2024/3期は907億円と拡大の見込みです。同レポートでの目標株価は7,100円で、投資判断は「買い」と評価しています。
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