「大安吉日」などといわれるように、普段気にしない方でも大きな行事や冠婚葬祭では大安、仏滅、友引といった六曜(ろくよう)を考慮する場合が多いようです。このためか、市場関係者の一部には「大安は相場が動きやすい」という見方もあります。そこで、実際の値動きを調べてみました。
みんなが気にするなら大安は相場に影響する?
アノマリー(特異現象)とは、原因がよく分かっていないものの結果としてそうなることが多いというマーケットの値動きのことをいいます。よく知られているものには、例年5月から10月まで株価が軟調になることが多い「半年(ハロウィン)効果」や小型株のリターンが大型株を上回ることが多い「小型株効果」などがあります。大安や仏滅などのアノマリー(六曜アノマリー)についても、相場の転換点になるという考え方があります。
転居や起工式、内閣組閣から結婚式まで「吉」とされる大安に行われるなら、各種式場やホテル、パーティー会場は賑わい、自然と市場関係者の心理状況が明るくなっても不思議ではありません。また、人々が何か行動を起こすと考えるなら、上下の方向に係わらず変化が大きな日となる可能性もあります。
そこで2010年1月からの日経平均とTOPIXの日次の値動きと大安の日との関係を比較したのが図表1です。
図表1:大安の株価指数の前日からの平均変動率
項目 | 項目 | |||
---|---|---|---|---|
日次変動率 | 日次変動率(絶対値) | 日次変動率 | 日次変動率(絶対値) | |
大安 | 0.063% | 1.030% | 0.053% | 0.979% |
その他の日 | 0.057% | 1.011% | 0.051% | 0.917% |
全観測日 | 0.058% | 1.014% | 0.052% | 0.927% |
※ロイターデータよりeワラント証券が作成
まず、大安の日は日経平均とTOPIXともに僅かながら他の日に比べて日次変動率の平均値が高くなっています。また、前日からの変動率の絶対値(つまり変化の大きさ)をみるとこれも大安の日の方が大きくなっています。特にTOPIXの日次変動率の絶対値は、日経平均よりも大安の日は顕著に差があるようにもみえます(黄色のハイライト部分)。なお、仮に日経平均よりもTOPIXの方が大安の影響を受けやすいとするなら、日経平均がファーストリテイリング、ファナック、ソフトバンクといった一部の値がさ株の影響を受けやすい一方、TOPIXの方が相対的に業種が分散されている、あるいは古くからの企業が多い、といった理由があるのかもしれません。
これら全てについて、「大安」であることの影響をさらに調べてみたところ、もっとも顕著に差があるTOPIXの日次変動率の絶対値を含め、統計的に意味のある差は見出せませんでした。つまり、上記の差は全くの偶然である可能性が否定できません。
前日からの変動ではなく、日中の値動きが大きい日?
仮に“大安は相場が大きく動いた”としても、前日からギャップアップ、あるいはギャップダウンして始まったもののその日の値動き自体は小さい場合、日中の高値と安値の差が大きいジェットコースターのような場合、あるいは前日終値とたいして変らない水準で始まったものの日中に大きく動き初値と終値の変動率が高い場合、といったいくつかのパターンがありえます。そこで、大安の日とそうでない日について、日中のTOPIXの値動きに絞って調べたのが図表2です。
ここでも大安の日の方がそれ以外の日よりも大きく動いているように見えます。特に取引開始時の株価(始値)と取引終了時の株価(終値)の変動率の絶対値と、1日の最高値と最安値の変動率では、大安の日の変化が他の日よりもかなり大きいようです。ただし、これが統計的に有意といえるかを調べてみた結果は、前日比よりも関係はありそうなことは分かったのですが、有意といえるほどではありませんでした。
図表2:大安におけるTOPIXの日中平均変動率
終値/始値 | 終値/始値(絶対値) | 高値/安値 | |
---|---|---|---|
大安 | -0.030% | 0.678% | 1.200% |
その他の日 | -0.018% | 0.611% | 1.119% |
全観測日 | -0.020% | 0.622% | 1.132% |
※ロイターデータよりeワラント証券が作成
2015年の第1四半期における大安
平均値が偶然の大イベントに引っ張られたのか、大安に大イベントが重なるのか?
極めて大きな変動となった少数の観測点が大安の日における平均値を押し上げている可能性をみるために、大安の日の変動率を時系列にプロットしたのが図表3です。
これを見ると、「東日本大震災翌週初の取引日」や「バーナンキショックの翌日」といった大安であることとは関係なさそうなイベントがある一方、「日銀の異次元緩和発表の翌々営業日」、「GPIFの日本株比率引き上げ発表日」といったように、もしかしたら大安が意思決定者の行動などに影響していた可能性も捨てきれないケースもありました。
ただ、仮に大安の日の値動きが0.06%大きいとしても、TOPIXを1550ポイントとして0.93ポイント、1000円の株にしてみれば60銭だけです。それも上下どちらに動くかは分からないとなると通常の投資手法では投資機会に活かし難いように思われます。
なお、この場合でも、eワラントのレバレッジと値動き特性を活かせば、直前まで一本調子に上昇している時なら大安の前日に日経平均やTOPIXのプットを仕込んでおく、しばらくボックス圏にあるなら大安前日に日経平均ニアピンの両端待ち、長らく底這い状況なら日経平均かTOPIXのレバレッジの大きなコールを少額だけ仕込むといった手法を試すこともできます。
図表3:TOPIX日次変動率-大安の日
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)
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