「金曜ロードショー」(日本テレビ)でスタジオジブリが制作した映画が放映されると株やFXが荒れるとまことしやかに言われるのがいわゆる“ジブリの呪い”です。ある映画が民放テレビ局で放映されることと金融市場に直接の関係があるとは想像しがたいため、テレビ局や映画制作関係者にとってはコメントする気にもならないウワサかもしれません。とはいえ、一部の市場参加者が気にするのであれば、過去の値動きは実際どうだったのか気になるところです。
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“ジブリの呪い”はあったのか?
図1は2005年1月から2015年6月までに金曜ロードショー(日本テレビ系列)でジブリ作品が放映された時の、翌営業日のTOPIXの騰落率と当日夜から翌日にかけての米ドル円レートの変化率(世界標準時ベースでの為替レートの前日比)をプロットしたものです。
これを見ると2008年10月の『ハウルの動く城』、2010年2月の『崖の上のポニョ』、同『風の谷のナウシカ』」、2010年7月の『ハウルの動く城』では、放映翌日(翌週)のTOPIXはマイナス2.7%〜マイナス1.7%と大きく下げています。逆に、2006年7月の『となりのトトロ』、2010年7月の同じく『となりのトトロ』、2013年1月の『ハウルの動く城』、2013年8月の『天空の城ラピュタ』はプラス1.9%〜3.3%と極めて大きく上昇しています。
これは巷でウワサされるとおりで、放映後に決まった方向に相場が動くのではなく、「相場が荒れる」あるいは大きく動くといわれる状況といえなくもありません。
ただし、2008年はリーマンショックの年ですし、2010年にはギリシャ危機が起きているので、これだけでは材料不足ではあります。
図1: “ジブリの呪い”は存在したのか?(2005.1-2015.6の金曜ロードショー後の影響)
※ロイターデータ、日本テレビHP掲載情報からeワラント証券が作成
どちらに動くか分からないけど、変化が大きいというなら絶対値を見る必要があります。また、“ジブリの呪い”ではタイトル毎に影響の有無を語る場合もあるようです。そこで、放映後のTOPIXとドル円相場の変化率の絶対値をとり、その平均値を求めたのが図2です。これを見る限りは『ハウルの動く城』、『天空の城ラピュタ』、『コクリコ坂から』、『崖の上のポニョ』の放映後の相場の値動きが大きいようです。とはいえ、2005年からの11年間の全放映回数は63回だけで、放映回数が最も多かった『となりのトトロ』、『風の谷のナウシカ』、『紅の豚』、『千と千尋の神隠し』でさえそれぞれ5回に過ぎません。それに続く4回の放映回数となっているのが、『ハウルの動く城』、『もののけ姫』、『火垂るの墓』、『耳をすませば』、『天空の城ラピュタ』、『猫の恩返し』、『魔女の宅急便』でした。
これしか放映回数がないのでは、それぞれの映画タイトル毎ではサンプル数が少なすぎて統計的に有意といえるのかどうか分析することができません。そこで、ジブリ作品放映自体を一つのイベントとして分析を進めることとしました。
図2:タイトル別の値動きの大きさ(2005.1-2015.6)
※ロイターデータ、日本テレビHP掲載情報からeワラント証券が作成
7月、雇用統計、金曜日???
図3は、金曜ロードショーでのジブリ作品放映の月別の分布を見たものです。夏に新作映画が封切られることが多かったためか、35%が7月に集中しています。経験的に夏には相場を大きく動かすイベントが起こることが多いので、これが影響を与えている可能性もあります。
他ファクターとしては、原則として毎月第一金曜日の日本時間夜に発表される米国の雇用統計、金曜日であることの影響(放映は夜なので単純に株式の場合は月曜日、為替の場合は金曜(欧州時間とほぼ同じ世界標準時))も調べてみました。
図3:放映月の分布(2005.1-2015.6)
図表4は「ジブリ放映日」、「7月の金曜日」、「金曜日」、「雇用統計」の各ファクターと、TOPIX,ドル円との関係を分析した結果です(分析期間:2005年1月〜2015年6月)。
図表4:各ファクターの分析結果
ファクター | TOPIX変化率 | TOPIX値動き | ドル円変化率 | ドル円値動き |
---|---|---|---|---|
ジブリ放映日 | X | X | X | X |
7月の金曜日 | X | X | X | X |
金曜日 | X | ◎+0.17%** | X | ◎+0.13%** |
雇用統計 | X | ◎+0.23%* | ◎+0.20%** | ◎+0.15%** |
** 信頼度99% * 信頼度95%
今回の分析では、“ジブリの呪い”とTOPIX、米ドル円レートにはなんら統計的に有意な関係は見出せませんでした。一方、「金曜日」というだけで翌営業日と当日夜のFXの値動きが大きくなる傾向が認められました。また、米国雇用統計の発表日(原則として第一金曜日)である場合は、翌営業日のTOPIXの変化率と当日夜のドル円レートの変化率は方向に拘わらず大きくなっています。興味深いことにドル円レートに関しては、雇用統計の発表時に、0.2%程度円安ドル高になる傾向があることも分かりました。
これを投資に活かすのであれば、“ジブリの呪い”に拘わらず、毎週の金曜日夕方と米国雇用統計発表日には、TOPIXのコールとプットの両建て、米ドルニアピンの両端待ち、米ドルコールとプットの両建てなどが有効と言えそうです。また、米国雇用統計発表日には円安ドル高になりやすい傾向が今後も継続すると考えるのであれば、FXでの米ドルロング、米ドルコールの買いも一案と考えられます。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)
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