中国株が春先に急騰したと思ったら、ほんの数ヶ月で大きく下げている展開を見て、世界金融危機直前の2007年の急騰急落と似ていると思われた方も少なくないでしょう。当時は2006年に米国のサブプライムローン市場の崩壊が始まり、2007年夏に仏パリバ銀行系のファンドが破綻して警戒感が広がっていた時期でした。だとすると、そろそろ波乱に備えておく必要がありそうです。
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中国バブルの崩壊が始まった?
中国国家統計局が7月15日に発表した2015年4〜6月期の国内総生産(GDP)の速報値は、前年同期比7.0%増でした。これは6年ぶりの“低成長”となった1〜3月期と同じ水準ですが、日米欧などの先進国の基準で考えれば極めて高い成長率です。しかしながら、地方政府の数字を積み上げた中国の経済統計は水増しも多いとされ、実態は相当悪いという疑いもあります。
一方、世界景気のバロメーターとも言える銅価格は、中国経済の減速の影響を受け、2011年2月のトン当たり10,000ドルから5,500ドル程度と45%も下落しています。また、中国国内の高級車の売れ行きも落ち、中国汽車工業協会は7月に、2015年の自動車販売額を年初の+7%から+3%と大幅に引き下げています。さらに中国の新築不動産価格は4月まで主要70都市12ヶ月連続で下落しました。5月には前月比では微増となったものの回復トレンドに入ったかどうかは分かりません。これらを見る限り、中国がとても7%もの経済成長をしているとは思えません。
中国で進行中のバブル崩壊は、金融システムへの影響が大きな不動産バブルの崩壊です。典型的なパターンでは、不動産バブルの収縮が始まると、不良債権の増加⇒銀行の新規不動産融資の停止・貸し剥がし⇒更なる不動産投げ売りの増加⇒不動産価格低下・担保割れ⇒銀行の破綻・金融システムの混乱という経緯をたどります。
不動産バブルに加えて株式バブルもはじけたとなると、実体経済への影響はさらに大きくなります。悪いことに、今回中国政府は株価下落を止めるために、個別株の売買自体を止めてしまうという奇策に出ました。この結果、株価指数自体もアテにならない指標になってしまいました。この措置に問題があることは、仮に日経平均を構成する225銘柄のうち半分の112銘柄の売買が行われない状況を想像すれば分かります。構成銘柄がまともに取引されていない指数には連続性も、相場全体の株価水準を表す指標性もありません。投資家にとって状況が分からないことと、いざとなったら売れなくなってしまうことが確認されたことで、ますます株式への投資意欲は減退するでしょう。
こういった状況にも拘わらず、中国経済や中国株の専門家からは「株価下落の逆資産効果は大きくない」、「株価下落は地価下落には影響しない」、「中国株は2007年と違って割高ではない」といった見方が多いようです。実はこれもバブル崩壊ではよくある現象で、バブルの渦中にいる当事者には過熱感は高揚感と感じられるのです。企業の利益は水物で、不景気になれば直ぐに利益が減り、現在の株価は割高になってしまいます。これは1989年から1990年に日本のバブル景気時に個別株担当の証券アナリストだった私の個人的な経験とも一致するので、中国のエコノミストやアナリストの“前向きで楽観的“なコメントも既視感があります。
誰の目にも明らかになる時期は中国政府の政策次第?
仮に、中国の不動産と株のバブル崩壊が既に進行中だとすると、実体経済への影響が誰の目にも顕著になり、それが日本を含めた諸外国に波及するのはいつになるのか、と言う点がもっとも気になります。まず、サブプライムバブル崩壊のように比較的早い展開となれば、不動産市況のピークの2年後、株のピークの翌年にクラッシュが起きたので、2016年頃が要注意といえます。
一方、日本が1990年代に行ったように不良債権処理を先送りして財政出動やPKO(政府資金による非公開の株式買い支え)で延命を図る可能性も低くありません。中国ではバブル処理を誤れば大衆の不満が共産党一党独裁体制に向かいかねないからです。この場合、中国が「失われた10年あるいは20年」を経験することになるでしょう。ただ、この場合でも日本への中国人旅行客は目に見えて減少するはずなので、インバウンド関連銘柄は伸び悩むことになります。
他にも山積みの懸念材料
7月の世界の金融市場はギリシャと中国に振り回されましたが、これから秋にかけては他の問題も出てきそうです。まず、もっとも懸念されるのがウクライナで、最短では7月末にもデフォルトする可能性があるとの見方が出ています。ウクライナに貸し込んでいるのがロシアで、実はロシア自身も1991年と1998年と直近で2回もデフォルトしています。
また、イランが米国など核問題を巡る協議で合意に達したことで、イランからの原油輸出増が予想され、これで原油価格下落に拍車をかける可能性があります。その場合、原油価格低迷で苦境にあるベネズエラやナイジェリアがデフォルトするリスクが高くなります。実は両国とも1980年以降だけでベネズエラは対外債務のデフォルトが4回、ナイジェリアは5回もあります。中国は両国への関与も大きいので、ここでも無傷ではいられません。また、資源価格がさらに下がれば、これもデフォルト“常連”のブラジルが怪しくなってきます。
資金繰りが苦しくなる新興国の状況にトドメを刺すような結果になりそうなのが、9月か12月に予想される米国の利上げです。1994年のメキシコ通貨危機も1997年のアジア通貨危機も、米国の金利上昇に起因した資金還流が原因とされています。今回は日米欧中の超金融緩和策で世界中にばら撒かれたお金が一気に米国に還流する結果になって、従来よりも大きな規模で新興国の経済危機が起こる可能性もあります。
“ほったらかし”つつ波乱に備えるなら
米国株は高値圏、欧州株はズルズルとギリシャに引きずられ、日本株は上げ渋り、中国本土株は開店休業で内情は火の車、ブラジルなどの新興国は米国利上げに戦々恐々といった状況で投資を考えるなら、拙著『最強の「先読み」投資メソッド』(ビジネス社)でご紹介している「バフェット流大底投資」、「半年投資」といった10個の投資手法のうち3つか4つを組み合わせて投資戦略の分散を図ることが効果的です。従来の日本株と米国株といった国際分散投資では役に立たないことは前回のリーマンショックでも明らかです。
とはいえ、市場の波乱でガッツリ儲けなくてもよいから、時間と手間をかけずに損失を抑える、あるいはほどほどに乗り切る次善の策はないかと考える方もいます。そこで、そういった“ほったらかし”志向の方に便利な波乱に備える方法を挙げるなら下記のようなものがあるでしょう。
【1】 5倍レバレッジトラッカーで利益を伸ばしつつ、最大損失を限定する
日本株がまだ上がるなら手間を掛けずに乗りたいけれども、暴落時には損失を抑えたいという場合、損失限定のレバレッジ金融商品を使う手があります。例えば、日経平均5倍トラッカーを使って、レバレッジ分の1(レバレッジが5倍なら1/5=20%)の投資資金で投資し、残りを現預金で保全しておくという極めて簡単な手法です。なお、7月27日(月)に日経平均プラス5倍トラッカー19回(権利行使価格20,000円、満期2016/4/13)が追加されるのでこれを用いると便利だと思われます。
【2】 ほったらかし投資の対象国を厳選する
どんな暴落でも3年から5年程度で株価は概ね元の水準に戻ることが多いものです。例外は、バブル景気の日本株や、2000年頃のITバブル時、2007年の中国株のようなバブルの高値をつかんでしまう場合です。それなら、暴落後の不況期に塩漬けにできる性格の資金であれば、戻りやすい国のETFを購入するか、5-10銘柄の外国株を所有しておけばよいことになります。
条件は、原油下落に耐性があって、人口が増加していて、経済成長率が高く、政治混乱が無く、かつ中国への依存が相対的に少ない国ということになります。具体的にはインド、フィリピン、バングラデシュ、スリランカなどが候補となるでしょう。なお、先進国では米国だけがこの条件を満たします。
逆に、生産年齢人口(15歳から64歳)が減少していて、経済成長率が低下気味で、政治的・軍事的に不安定な国はほったらかし投資厳禁です。具体的には中国、韓国、タイあたりがこれに属します。政治的には安定しているものの、日本や欧州も成長率が低いので、ほったらかし投資は避けた方が無難です。
【3】 キャッシュ イズ キング(現金が一番)の半分を狙う
投資ポジションを減らしておけば、儲け損ねることはあってもショック時の損失は確実に減ります。実際、国内の個人投資家はここ数ヶ月高値警戒感から現金ポジションを積み上げていて、7月の急落も比較的冷静に対処できたはずです。行動心理学的には損失と利益が仮に同額であっても損失を嫌う方が多いとされています。このため、キャッシュポジションを50%程度まで上げておけば、上がったら「半分儲かってOK」、下がっても「半分は損しなかった」となって不思議とストレスが少なくなります。なお、暴落時には円高となりそうなので輸出関連株、中国のインバウンドが減るのでインバウンド関連株のポジションを減らしておくことが特に有効と思われます。
【4】 逆行高セクターで凌ぐ
このところ米国で2000万人というとてつもない件数の政府職員のデータがハッカーに盗まれました。現在は、米中ロにテロリストも入り乱れてサイバー戦争が勃発しているともいえる事態です。こんな時に、日本では2016年からマイナンバーの利用が始まります。このため、サイバーセキュリティ関連企業は、日米欧どこでも急成長を続けそうです。これに簡単に投資するには7月27日(月)から取引が始まる「サイバーセキュリティバスケットトラッカー1回」(満期2016/4/13)が便利です。これはトラッカーなので、オプション性もレバレッジも無く、限定したテーマ投資に適した金融商品です。この投資手法は、相場全体が下がって仮にPERが半分になっても、一株当たりの利益が3倍になれば株価は大きく上がることを狙ったものです。
【5】 ハンセン指数、ハンセンH株指数のプットで“保険”を買う
中国本土では先物をショートすると場合によっては犯罪とされるという報道があります。しかし中国株と相関が高い香港市場ではそうではありません。また、今回のバブル崩壊の中心が中国なら、中国株に “保険を掛ける”のが効果的です。
しかし、日本国内から香港の株価指数先物をショートするのは為替コストや取引手数料が割高なので、eワラントの中国株指数のプットを購入して中国株の大波乱に直接備えることが効果的です。具体的には、運用資金全体の5%程度で中国株の雲行きが怪しくなったら満期が2ヶ月程度で権利行使価格が現在の株価指数の水準に近いハンセン指数プットかハンセンH株指数プットを購入するとよいと思われます。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)
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