予想されてはいたものの、2015年は米国の利上げに振り回され続けています。他にも、予め予定されていた3月の北陸新幹線の長野〜金沢間開通はやはり話題になり、11月のミャンマー総選挙の結果も予想通りではありましたが大きなニュースでした。もちろん、中国株の乱高下や人民元切り下げで市場が混乱したり、各国中央銀行関係者が集まる8月のジャクソンホール会合に中心人物であるはずのイエレンFRB議長が欠席して肩透かしをくらったように、想定外のイベントもありました。
とはいえ、とかく不確実なことが多い世の中。予め決まっている主要イベントについては、しっかり準備して相場に臨みたいところです。そこで2016年相場に大きな影響がありそうな主要イベントを12個選んでみました。
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これでバッチリ!2016年の主要12イベント
1月1日マイナンバー利用開始
「そんなことはだれでも知っているよ」というほど、多くの企業関係者の頭を悩ませているマイナンバー。なにしろ、一人一人に割り振られる番号そのものを、他の人に知られないように扱わなければいけません。にも拘わらず、税金や社会保障関係のお役所への提出書類には必ず記載しなければならないのです。「デビルマンの正体は知られちゃいけないけど、イザという時には必ず呼んで来てネ」というようなものですw。もう少し分かりやすく言えば、「PCのログインネームを自分の名前にして、パスワードは12桁の数字にするけど、そのパスワードは金融機関や勤務先、お役所には開示しなければならない制度」といった感じです。
ちなみに、国民総背番号制で先行している米国や韓国では、当人に成りすまして借金したり、税金の不正還付請求を行ったり、他人の番号を売買したりする犯罪が横行しているようです。
「日本ではしっかり管理されるから安心?」
いやいや、2015 年も、世界一管理が厳重なはずの米国金融機関や米政府から個人情報が数百万〜数千万人分流出しています。世界最高水準のハッキング技術を持つR国や、軍が関与しているとされるC国やI国だけでなく、犯罪組織や個人ハッカーの技術も極めて高い水準にあります。また、社員や取引先社員に一人でも悪い輩がいればアウトですし、紙ベースでも零細企業の管理は甘いところが多いので安心できません。本来は流出を前提に、制度設計すべきところなのですが…
なお、こういった問題が続出するのはおそらく半年から数年先ぐらいから。ちなみに、マイナンバーによって、社会保障費の不正受給が発覚し、法人の社会保険料滞納・所得税横領や脱税などが減り、“実質的な増税”の景気押し下げ効果が出てくるのも同じ頃からなので、ちょこっと頭の片隅に入れておきましょう。
1月16日 台湾総統選挙
下馬評では、台湾独立志向が強い民進党の蔡英文氏がリードしている模様。与党国民党は劣勢と伝えられ、10月に候補者を有力者の朱立倫氏に代えたばかり。
中国本土への思い入れが強い現職の馬英九氏は、選挙を意識してか、11月に中国の習近平主席と1949年以来初の中台首脳会談を行いました。これは、総統選挙での敗北と政権交代を睨んだ民進党への毒饅頭という見方もあります。仮に民進党政権が誕生した場合に、中国が軍事的な緊張を高めるようであれば、タダでさえ軟調となることが多い1月の株価には悪材料となりそうです。
4月 電力小売完全自由化
今まで大口から段階的に自由化されてきた電力の小売事業が4月から完全自由化されます。消費者にとっては選択肢が増え、電気料金の低下も期待されます。ガスや携帯電話とのセット販売や、ポイント制、メリハリの効いた時間別料金、“エコ”な電気の販売などに加え、スマホ料金などにある“2年縛り”なども登場しそうです。
投資の観点でみれば、長期的には既存電力会社間の競争激化、電力設備投資関連企業の収益率低下、新規参入ブームとその終焉など、かつて電話業界で起こったことが再現されそうです。
2016年春 上海ディズニーランドついに開業
カリフォルニア、フロリダ、東京、パリ、香港に続く6箇所目、12番目のディズニーパークが上海でついに開園。以前は2015年中に開園というウワサもあったようですが、現在の開園予定は2016年春です。西側の価値観の象徴ともいえるディズニーランドが中国本土にできるのは、隔世の感があります。
日本の投資家目線で気になるのは、日本への外国からの観光客がこれによって減るかどうか。上海の大気汚染が改善しそうもないことから、近隣のアジア諸国からの観光客がこれだけのために上海に行くことはなさそうですが、少なくとも開園当初は東京ディズニーランドへの中国人来園者は減ると予想されます。ただ、その後は、「上海の次は東京ディズニーランドに行ってみたい」という新たな中国人観光客のトレンドも出てくるかもしれません。
5月9日 フィリピン大統領選挙
日本、韓国、中国、シンガポール、タイなどが生産年齢人口減少に悩む中、若年人口の多さで気を吐いているフィリピン。ここ3年の実質経済成長率は2013年7.18%、2014年6.10%、2015年6.71%(出所:IMF)と日本から見ると大変うらやましい高水準です。現職のアキノ大統領は高い経済成長を実現し、南沙諸島問題で中国と対立、親米・親日路線をとってきました。またTPPへの参加も検討しているようです。
気になる次期大統領ですが、現在最有力とされているのが、出自が孤児でありながら人気俳優の養子となり、現在は上院議員を務めるグレース・ポー氏。クリーンなイメージに、養父の人気も後押ししている模様。
現職のアキノ大統領が後継指名したロハス前内務相は、エリートで資産家である点で国民のウケが悪いようです。政策についてはポー氏、ロハス氏ともにアキノ路線を継承するとしているので、外国人投資家や外国企業にとってはこの二人ならそれほど心配することはないでしょう。
3人目の候補者はビナイ副大統領です(ちなみにフィリピンでは大統領と副大統領は別々に選出)。ビナイ氏は貧困層の支持が厚く、貧困対策重視、対中経済関係重視とされています。
フィリピンの大統領の任期は6年と長いので(再選なし)、フィリピンが有望な投資先となり続けるか、“ちょっと待つべき次の6年”になるか、見極めが必要となります。
5月26日 伊勢志摩G7サミット(主要国首脳会議)
G7の首脳が一同に会するサミットの議題は2016年初頭に発表される予定です。もちろん直前に大きな問題が発生すれば、それについて集中的に議論が行われることになります。現段階では、安倍首相が「女性による起業促進」を議題の一つにするとしています。これは誰からも反対意見が出にくいものですが、基本的には各国の競争力強化を目指す国内政策なので、G7で大きな進展があるかどうかは分かりません。
一方、正式な議題として挙げられなくても、シリア問題と欧州への難民、ウクライナ、南沙諸島、世界的な景気後退への懸念、AIIBの運営方針への日米の懸念、温室効果ガス問題などが話し合われることになるでしょう。
また、風光明媚な三重県志摩市で開催されるこのサミットは、伊勢神宮や真珠の観光PRに大いに貢献しそうです。なお、日露交渉が行き詰っているために可能性は高くはありませんが、仮にロシアのプーチン大統領がサミットに参加してG7がG8に戻るようなことがあれば、超ビッグニュースになりそうです。
5月〜6月頃かも? イギリスがEU離脱に関しての国民投票を実施?
イギリスで、EU離脱の是非を問う国民投票が2016年に前倒しして行われる可能性がありそうです。もともとイギリスは、EUに参加しつつもユーロを採用していないので、ちょっと距離を置いた立場にあります。とはいえ、EU内の人の移動は原則自由なので、社会福祉手当が手厚く、景気が良くて仕事もあるイギリスにどんどん人が押し寄せました。そのため、イギリスは、都合が悪い政策は採用しなくてよいようにEUと交渉していたのですが、他のEU加盟国との交渉は進展しませんでした。そこに出てきたのがシリアやアフリカから押し寄せる難民の問題です。
この結果、外国人への社会保障費増大に加えて、EUの難民割り当てにも与党である保守党の支持層からの反発が強まり、国民投票が前倒しされそうという訳です。AIIBへの加盟も習主席の訪英に象徴される英中接近も、EUから距離を置く布石にも見えます。ただ、イギリスがEUから離脱するとなれば、スコットランドはEU残留を目指してイギリスから独立、ポンドにもユーロにも悪材料となるでしょう。
6月19日 公職選挙法改正法公布 満18歳以上に選挙権
公職選挙法改正によって、いよいよ18歳〜20歳に選挙権が与えられます。これで「投票できないからデモするんだ」といっていた方々も、投票によって意思表示ができるようになります。
とはいえ、もともと現在の日本の人口構成上中高年以上が多いことに加えて、国政選挙では高齢者が多く暮らす地方への国会議員割り当て数が多くなっています。さらに、実際に高齢者の方がしっかり投票に行く傾向があるので、若者重視への政治に早々変わるわけではありません。
ただし、市町村議会選挙のように数百人で大きく結果が変わる地方選挙では、若者の票は侮れません。組織的に票を固めて「若者の代表を議会に」なんてことも可能になります。で、投資への影響は…「若者に選挙権」というネタに新聞やテレビが忙しくなって、国会議員の先生方や企業経営者がホッと一息といった程度でしょうか。
7月 2016年参議院選挙
現時点では衆議院を解散して7月に衆参同時選挙を行うことはなさそうなので、政権交代を伴わない選挙になりそうです。通常なら与党不利となるところなのですが、今回改選されるのは2010年の民主党政権下で行われた議席の改選なので、実は自民・公明にはそう不利ではありません。自民党改選数49議席に対して2013年に獲得した議席は65議席。一方の民主党は改選41議席に対して2013年の獲得議席数はたった17議席。自民党が65議席ほどは取れなかったとしても、55-60議席は獲得できるでしょう。となると、総議席数は改選前の114議席から120〜125議席とかなり増え、上手く行けば単独過半数もありそうです。仮に苦戦したとしても受け皿となる民主も維新も弱体化しているので票が割れ、伸びるのは組織表があって批判票も取り込む公明と共産となるでしょう。とすると、自民・公明の連立与党から見ると順当な結果に終わりそうです。
とはいえ、番狂わせの自民大敗だと株式相場は大幅安になるので、野党再編の動きと与党要人の失言には要注意です。
8月5日〜21日 ブラジル リオデジャネイロ夏季五輪開催
急速に経済発展を遂げた後にオリンピックを開催すると、景気後退が来るとされています。東京(1964)、ソウル(1988)、バルセロナ(1992)、北京(2008)はまさにそうでしたし、メキシコ(1968)やアテネ(2004)はしばらく後に財政破綻してしまいました。
さらに近年は、8年毎のオリンピックと景気循環が重なっているようです。2000年のシドニー五輪の後にITバブルが崩壊し、2008年の北京五輪の後にリーマンショックが訪れました。
となると、新興国のオリンピック開催と2008年から8年後が重なる2016年のリオデジャネイロ夏季五輪の後は、少なくてもブラジルでのさらなる景気後退、悪くすると世界的な暴落かも…そうならないことを願いつつも、対策は立てておいた方が良さそうです。
11月8日 アメリカ大統領選挙
その後の世界の政治・経済情勢に大きく影響を与えるので、アメリカ大統領に誰がなるのかは世界中の関心事です。ロシアのプーチン大統領や中国の習主席だけでなく、個人投資家にとっても大問題です。ノーベル平和賞受賞者で、イラク・アフガンでの戦争を止めることを公約にしていたオバマ大統領の次は「強いアメリカ」を体現する人物になりそう。
民主党候補は元国務長官のクリントン氏でほぼ決まり。元弁護士で、元ファースト・レディー、かつ元国務長官というスーパーウーマン。現実的な実務派と言われつつも、「現段階ではTPP不支持」というのはやや気がかりです。
共和党候補は混沌としていて、不動産王のトランプ氏、精神科医のカーソン氏、マルコ・ルビオ上院議員、テッド・クルーズ上院議員が争っているようです。前大統領の弟のジェブ・ブッシュ氏はやや押され気味の様子。当初はトランプ氏がリードしていたものの、さすがに毒舌が過ぎたのか流れは止まった感があります。このところ上昇中なのが、保守派で44歳と若く、かつキューバ移民2世でヒスパニック層の支持もあり、政治経験もあるマルコ・ルビオ氏。まだ先は長いのですが、誰になっても2017年1月以降のアメリカの対外政策、特に対中姿勢は強硬になりそうです。
12月上旬 驚きの2016年7月-9月GDP速報発表か?
GDP600兆円を目指す安倍政権の隠し玉が、2016年7-9月分から反映される予定のGDPの基準改定です。なんとなく予想されているとはいえ、実際の12月上旬に発表された時に、「あれ?ちょっと大きく出ましたね〜」などと各社のエコノミスト達がビックリする可能性もありそうです。
日本の名目GDPは2015年でだいたい500兆円。これが、2008SNAといわれる国際的な新基準に移行することによって、研究開発費がGDPに参入されて約15兆円(GDPの3%程度)増加することになるとされています。しかし、実は特許権収入が所得収支からサービス収支に変わることで1.5兆円程度増えるようでもあります。また、日本に先行してGDP基準を変更した米国では+3.2%(うち研究開発費の影響は2.5%)、ドイツ+3.3%(+2.3%)、イギリス4.9%(+1.6%)、韓国7.8%(+3.6%)、イスラエル6.4%(+2.2%)となっていて、OECD平均では+3.4%(うち研究開発費+1.9%)となっていました(出所:内閣府経済社会総合研究所資料)。だとすると、研究開発費だけで+3%も増えるのに、日本経済全体の影響が+3%だけというのはちょっと控えめ過ぎると思うのは私だけでしょうか?仮にプラス5%なんて数字が出てきたら、600兆円がいきなり近づいて、市場関係者はかなりビックリしそうです。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)
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