かつて世界の基軸通貨は英ポンドでした。それが第二次大戦を経て米ドルに変わりました。1971年のニクソンショック以降に変動相場に移行すると、英ポンドは通貨価値が大きく下落しました。かつて世界中に植民地を持ち、「日の沈むところなし」といわれた超大国であった英国と、当時も今も超大国ではない日本の現状が全く同じとはいえません。しかし、植民地を失い、超大国で無くなった後の数十年間の英国の投資家の目線で過去の外国株や金相場を見るなら、これからの私たちにとっての長期投資のヒントがありそうです。
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パフォーマンス比較で忘れがちなこと
図1は日米英の主要株価指数と金価格の1971年の値を100として、2015年末までの推移を見たものです(年終値、FT100の1971年〜1983年は遡及値)。まず分かるのが、金(ドル建、図中黄色線)がダントツで44年間に25倍にもなっていることです。一方、米国株(S&P500、図中みずいろ線)なら20倍、英国株(FT100、図中オレンジ線)なら15倍とこれもまずまずな一方、日本株(日経平均、図中紫線)はようやく7倍でした(ともに配当、税金を考慮せず)。
しかし、巷に溢れる各種金融商品のパンフレットにありがちなこの比較では、為替レートとインフレ率が考慮されていません。1971年の日本円、米ドル、英ポンドは為替レートが違いますし、同じ国でもインフレによって通貨の価値が異なっているので、単純な比較はできないのです。
図1:日米英の株価指数と金価格の推移
※ロイターデータよりeワラント証券が作成
英ポンドは米ドルよりも対円で大きく下落、今後の日本円も同じ?
そこで、まず為替レートの推移を確認したのが図2です(金利・税金は考慮せず)。これをみると、米ドルと英ポンドは日本円に対して長期にわたって下落してきたことが分かります。特に英ポンドの下落は大きく、1960年代から70年代かけて“ヨーロッパの病人”といわれた英国の通貨の価値がどんどん下がったといえます。
米国は軍事・経済・外交のすべてにおいて、かつても今も超大国で、先進国には珍しくいまだに人口が増加しているので、日本の現状とはかなり違います。一方、過去数十年の国際社会における英国の相対的な経済規模の低下と、現在の日本の少子高齢化による低成長と予想される相対的な国力の低下には共通する部分があります。そう考えると、英ポンドのかつての長期下落は、今後の日本円の長期低落の先行事例といえそうです。
図2:米ドルと英ポンドの対円レートの推移
※ロイターデータよりeワラント証券が作成
まずは米国の投資家目線で見てみると
仮に米国投資家が1971年時点で外国株や金地金への投資を行い、2015年になってそれを再び売却して米ドルに戻すと考えれば、少なくとも同じ時点なら投資成果を比較することができます。実際のところ、インフレ率の差が示すとおりに為替相場が動くわけではないので、同じ1米ドルでも1971年に海外で購入できたものと2015年に購入できるものは、対米ドル相場と相手国のインフレの程度によって異なってきます。しかし、投資の成果を結局自国通貨に戻すのであれば、為替レートさえ分かれば、米国投資家にとって、日本株投資がよかったのか、金投資がよかったのか判断できると言う訳です。
そこで、図1の値をその時点の為替レートで米ドル換算して比較し、同時に日本円/米ドルと英ポンド/米ドルも米国投資家が外貨投資をしたものとして加えたのが図3です(配当・金利・税金は考慮せず)。 図1との大きな違いは以下の4点です。
◎2015年末時点で、日経平均のパフォーマンス(図中紫線)が円高ドル安の影響でS&P500(図中みずいろ線)と同程度の好成績になった!
◎1989年の日経平均高値から2015年末時点で円ベースでは48.9%と半値以下だが、米ドルベースでは58.4%まで戻っている
◎FT100(英国)のパフォーマンス(図中オレンジ線)がポンド安ドル高の影響で相対的に大きく低下
◎日本円は対ドルで44年間に2.6倍、英ポンドは対ドルで4割減となり、外貨投資は、仮に金利を考慮しても株式や金地金の20〜30倍には及びそうもない(参考:2%の44年複利なら2.4倍、3%なら3.6倍)
図3:米国投資家目線で見たら…
※ロイターデータよりeワラント証券が作成
英国投資家目線は日本の投資家にとって長期投資のヒントになる
同様に英国投資家目線を想定して、図1の値を英ポンド換算したのが図4です(配当・金利・税金は考慮せず)。これから以下のことが言えそうです。
◎外株や金地金のパフォーマンスは米ドル換算での比較を大きく上回る(大幅なポンド安のため英国投資家にとって国内投資よりも魅力が高かった)
◎日経平均は(英国にとって国内投資である)FT100のパフォーマンスを大きく上回った
◎1989年の日経平均高値から2015年末時点で円ベースでは48.9%と半値以下だが、英ポンドベースでは米ドルベースの58.4%を上回り、63.9%まで戻っている
◎1971年時点でともに先進国であった米ドルへの外貨投資は44年間に1.7倍になったものの、あまりよいパフォーマンスとはいえない
図4:英国目線は今後の日本のヒントに?
※ロイターデータよりeワラント証券が作成
投資に活かすには
日本円が今後成長が見込まれる新興国の通貨や米ドルに対して下落する可能性が高いと考えるのであれば、英国投資家目線の過去の日米英株・金地金・外貨への投資パフォーマンス比較から以下のことが言えそうです。
◎ 日本株投資よりも、通貨高が予想される新興国や相対的に堅調な先進国(米国など)への投資の方が長期的に(日本円に換算して)成功する可能性が高い
◎ 金地金への投資は日本人投資家にとって、米国人投資家よりも有益となる可能性がある
◎ 外貨投資では、先進国では日本と同様な状況にあるユーロよりも、基礎的条件が有利な米ドルの方がよさそう。ただし、あくまで外貨投資は日本円においておくよりマシな程度か?
◎ 英ポンドに換算しても日経平均は1989年高値には戻っていないことを考えると、同様に巨大バブルが破裂したと思われる中国株は外貨換算で高値に戻らない可能性がある
以上を鑑みると、日本株への投資ウェイトを大きく下げ、金地金の安値を拾い、外貨投資(FX)よりも外国株投資を長期投資の軸として実践していくと好結果につながるように思われます。具体的には、金レバレッジトラッカーや金ETF、外国株価指数連動ETF、外国株価指数対象のコール、米国個別株、米国上場のADRなどを長期投資のポートフォリオに上手に組み込んでいくことが有効と考えられます。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)
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