民主党、共和党両党の候補選びが終盤に差し掛かり、当初クリントン氏の楽勝と思われていましたが、トランプ氏の躍進とサンダース氏の善戦、共和党本流候補の相次ぐ撤退で、米大統領選が相場の一大テーマになりつつあります。
そこで、クリントン氏、トランプ氏ら有力候補の主張を整理し、世界情勢への影響とそれに合わせた投資戦略を早めに考え、手を打っておく必要があるように思われます。
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2016年米国大統領選挙の日程
2016年の米国大統領選挙は11月8日に行われ、勝者が大統領に就任するのは2017年1月20日です。二大政党である民主党と共和党候補でなければ大統領になる可能性はほとんどないため、大統領選の投票日だけでなく、両党の候補者が決まる時期も相場動向に大きく影響を与える可能性があります。
両党ともに各州で行われる予備選挙(共和党は2016年6月7日まで、民主党は2016年6月14日まで)で過半数の代議員を獲得した時点で候補者が確定します。過半数に誰も達していない場合は、党員集会(共和党は2016年7月18日から21日まで、民主党は2016年7月26日から28日まで)で、両党の大統領候補が決まります。
シナリオ1:クリントン大統領誕生なら懸念はTPPだけか?
民主党は社会主義的な主張を展開するサンダース氏が善戦しているものの、ヒラリー・クリントン氏優勢が続いています。本選挙でも、極論が目立つ共和党非主流派候補が相手なら、米国初の女性大統領誕生の可能性が高そうです。クリントン氏は弁護士、元ファーストレディー、元上院議員、元国務長官(日本の外務大臣に相当)という華々しい経歴と実績があり、抜群の知名度で民主党予備選を有利に進めています。既得権益層とのつながりが深い点が選挙戦に不利という見方もあるものの、クリントン氏はヒスパニック、非白人、女性層からの支持が底堅いという強みがあります。
クリントン氏が大統領に選出された場合、基本的にオバマ政権の政策を踏襲するものと考えられています。オバマ政権との違いは、外交面で武力行使を躊躇しないタカ派であることや、民主党候補指名を争っているサンダース氏の主張を取り込み、最近はTPPの見直しや大学の学費負担の軽減など左寄りの主張が増えている点です。日本政府あるいは日本経済への影響を考えた場合、民主・共和両党で予備選で勝利の可能性が残っている他候補と比較しても、クリントン氏が外交・安全保障・通商政策の継続性の観点から最もサプライズが少ない大統領候補であると思われます。
クリントン氏の主張のポイント
・30兆円超のインフラ投資(道路、橋、トンネルの改修)
・最低賃金の引き上げ、男女の賃金格差の解消
・処方薬の価格引き下げを含む医療制度改革の拡充
・TPP合意内容の見直し(ただし、以前は賛成)
・日本の金融政策を円安誘導とみなして対抗措置
・不法移民への市民権・滞留資格の付与
・米国内のフラッキング禁止(シェールガス・タイトオイル開発規制強化)
・イエレンFRB議長再任(2018年2月)
・シリア・イラクへの軍事介入
クリントン大統領誕生に備える投資アイデア
クリントン氏が予備選挙中にコメントした米国内のシェールガス開発への規制を実際に強化するなら、いまや世界最大の産油国となった米国の原油生産が減少し、原油価格が大幅に上昇する可能性があります。また、米国にとって中東原油の重要性が高まり、シリアやイラクへの軍事介入がありそうです。一方、米国内のインフラ投資では米国内の建設・土木産業にはプラス、波及効果も期待できます。逆に製薬業界や医療機器業界は収益減に泣くでしょう。TPP見直しと円高ドル安誘導は日本株にマイナスです。つまり、買う(ロング)ならWTI原油、米国建設・土木株、米国軍事関連株や米国株価指数(S&P500)、売る(ショート)なら米国製薬・医療機器株、日本株全般も暴落は無くても弱含みになると思われます。また、予備選で過半数を取る直前と大統領選挙直前にWTI原油コールの短期的な買い戦略も一案と考えられます。
シナリオ2:トランプ大統領で世界秩序は大混乱か?
ドナルド・トランプ氏は著名な実業家ですが、あまりに過激な発言から当初は泡沫候補と思われていました。しかし、所得格差の拡大と既得権益層に対する根強い不満からか、現段階(3月末時点)では共和党で最も指名獲得に近い位置にいます。主張は「再び米国を偉大にする」で、19世紀からの第二次世界大戦までの米国の孤立主義(モンロー主義)と重商主義そのものです。なお、トランプ氏に関しては、メディアへの露出効果を計算した上で挑発的な発言を意図的に繰り返してはいるものの、大統領になったら現実的な政策を採るはずという見方も存在します。ただ、真偽の程は当人以外は分からないので、以下は、今までの彼の発言に基づいた政策を実施するという仮定での検討となります。
トランプ氏は米国民の現状に対する“怒り”をすべて盛り込んだような主張が多いため、随所に矛盾が見られます。米軍の海外展開縮小と南シナ海での軍事プレゼンス向上、シリア内戦不介入とISIS支配地域への核攻撃、所得税減税と法人税引き下げは同時に行うことが困難です。さらに、NATOや日米安保見直しとそれに必然的に伴う軍事予算縮小、ISIS支配地域への核攻撃や日韓核保有容認は、米軍や軍産複合体からの支持を得にくいと考えられます。巨額の費用がかかる不法移民1100万人の強制送還やイスラム教徒の入国禁止措置は米国議会の協力が得られそうもありません。
日本の立場から見ると、同盟国の中でも突出して米軍の駐留経費を負担していること(防衛省HPによると年7200億円超!、防衛省予算から在日米軍の駐留に関連する経費3725億円、沖縄米軍関連46億円、米軍再編関連経費1426億円、防衛省以外から2053億円)や、過去の貿易摩擦以降日本企業は積極的に米国で現地生産を行っていることを理解していない点(あるいは分かっていて無視)は、外交・安全保障・経済上の不安材料です。
トランプ氏の主な主張
・イスラム教徒入国禁止、ISIS支配地域に核攻撃
・ISIS戦闘員家族を誘拐、テロリスト尋問に水責め
・シリア内戦不介入、ロシアのプーチン大統領に任せて米国は手を引く
・グリーンカード発行中止、1100万人不法移民強制送還、メキシコとの国境に壁を建設
・米軍駐留費負担増か在日・在韓米軍の撤収、“不平等な”日米安保条約再検討
・日本と韓国の核保有を容認
・NATO(北大西洋条約機構)への関与反対
・中国の冒険主義に対抗、東シナ海と南シナ海で米軍の存在感を高める
・中国の人民元切り下げ、環境基準や労働基準の不備、知的財産権侵害・ハッキングを批判
・TPP反対、NAFTAはカナダ・メキシコと再交渉
・対中、対日貿易見直し 関税引き上げ
・中国、日本、メキシコ、ベトナム、インドを為替操作国として批判
・FRBの現在の政策に懐疑的、2018年2月のイエレン議長再任なし
・低所得者の所得税免除、法人税を35%から15%に引き下げ
・米企業の海外留保利益に10%のみなし課税
トランプ大統領誕生に備える投資アイデア
万が一トランプ大統領が誕生した場合には、米国企業の競争力の根源となってきた有能な移民の受け入れができなくなります。また、米国のプレゼンス低下に加えて、諸外国との関係が冷えこみ交易が停滞すれば、米多国籍企業の強みである海外生産・外国での権益などが失われ、連結ベースの収益が減り、米国株全般が大きく下落する可能性があります。
さらに、議会との対立で行政が混乱すれば、米ドルが急落する結果となります。日本企業も米国への輸出が一方的な高率関税で減少したり、米国子会社が不利な扱いを受けたり、世界情勢全般が緊迫化することによる売上減少が懸念されます。
このため、共和党予備選でトランプ氏が過半数を獲得しそうなタイミングや大統領選直前に現物株を保有していればポジションを手仕舞った上で、NYダウプット、日経平均プット、日経平均マイナス3倍トラッカーの買い、ベアETFの買い、米ドルプットの買いが効果的と考えられます。トランプ大統領誕生で上がりそうなものといえば金ぐらいなので、金プラス5倍トラッカー、金ETF、金先物、金地金の買いなどが資産価値を保全する有効な手段となりそうです。
シナリオ3:クルーズ氏、サンダース氏の可能性を考えるなら
共和党では主流派が「トランプおろし」のために、非主流派でありながら予備選で健闘しているテッド・クルーズ氏を支持する動きもあります。とはいえ、クルーズ氏は筋金入りのキリスト教福音派で、相当右寄りの保守グループ「ティーパーティ」公認でテキサス州選出の上院議員となった人物です。2013年の予算審議でオバマケアに反対するために21時間に亘って本会議場で演説したことでも知られています。
一方の民主党予備選でクリントン氏に迫っているのは、従来の米国では考えられないような自称“民主社会主義者”のバーニー・サンダース氏です。彼の主張は、大きな政府を主張しているものの、対外政策に無関心という点では、トランプ氏やクルーズ氏に近いものがあります。
クルーズ氏の主な主張
・国民皆保険(オバマケア)反対、銃規制反対
・LGBTや妊娠中絶、障がい者権利保護に反対
・イランとの核合意破棄、イスラエルとの同盟強化
・ISISへのじゅうたん爆撃、シリア反政府勢力支援に反対
・TPP反対
・不法移民への福祉打ち切り、メキシコ国境に壁建設、国境警備員を3倍に
・米国内のイスラム教徒を監視
・税率を一律にして内国歳入庁を廃止
・エネルギー、商務、教育、住宅都市開発の各省を廃止して小さな政府を実現
・インターネット規制に反対
・進化論と地球温暖化を否定
・FRB議長交代(2018年2月)、金融政策はタカ派に
サンダース氏の主な主張
・国民皆保険
・大学の無料化
・富裕層への課税強化
・巨大金融機関の解体
・最低賃金の引き上げ
・インフラ整備
・シェールガス開発禁止
・TPP反対
・海外派兵に反対
クルーズ氏、サンダース氏の躍進を想定した投資アイデア
両候補とも現時点では本選挙の候補となるかどうかに関心が集まっています。クルーズ氏の反移民・反イスラムやイランとの合意破棄は、政策が実行される可能性が出るだけで株価急落の材料になりそうです。サンダース氏の主張は国内向けが多いものの、巨大金融機関の解体が示唆されただけでも米国株式市場の暴落を招く可能性があります。また、両候補ともTPPに反対なので、日本株にとってもプラスとはいえません。共通しているのは、クルーズ氏による中東情勢の緊迫化でも、サンダース氏の米国内のシェールガス開発禁止でも原油価格は上がる可能性があることと、どちらの場合も米ドルが下落すると考えられることです。
投資アイデアとしては、両候補が予備選で健闘して、共和党・民主党の党員集会までもつれ込みそうになったら、とりあえず世界各国の株式投資ポジションを減らした上で、5-10%程度の資金でWTIコールの買い、NYダウプットの買い、米ドルプットの買いで党員集会に臨むのが良さそうです。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)
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