カナダの中央銀行であるカナダ銀行は7月12日に約7年ぶりとなる利上げを実施しました。米国の利上げに追従する格好ですが、カナダでインフレが加速すれば米国よりも利上げスピードを上げる可能性があります。今後の政策金利発表スケジュールに注目です。
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約7年ぶりの利上げ
6月以降、為替相場でにわかに注目を集めているのがカナダドルの上昇です。主要先進国通貨の中でもカナダドルは対円での上昇が目立っています。6月中旬にカナダ銀行のウィルキンス上級副総裁が利上げを示唆する発言をし、さらに6月末にはポロズ総裁とパターソン副総裁が利下げは役割を果たしたとの見解を示したことが背景です。FRBの利上げやECBの量的緩和縮小の動向に注目が集まっていた為替市場は不意を突かれた格好となりました。
図1にあるように6月中旬以降のカナダ銀行の要人発言を受けてカナダドルは急上昇し、そして7月12日、カナダ銀行は約7年ぶりとなる政策金利の引き上げを実施しました。カナダの政策金利は0.50%から0.75%となりました(図2)。
図1:カナダドル対円相場(日足、2017年2月1日から2017年7月18日)
出所:ロイターよりeワラント証券投資情報室作成
図2:米国とカナダの政策金利推移(2000年1月から2017年7月)
出所:ロイターよりeワラント証券投資情報室作成
カナダの経済状況
図3はカナダの失業率の推移です。6月の失業率は6.5%となり、低下傾向が続いています。米国の失業率は2008年の金融危機以前の水準まで低下していますが、図3にあるようにカナダでは金融危機以前の水準にまで到達していません。為替市場が不意を突かれたのは、米国ほどに低下していないカナダの失業率の状況もあったものと思われます。
図3:カナダ失業率(2000年1月から2017年6月)
出所:ロイターよりeワラント証券投資情報室作成
図4はカナダの消費者物価指数です。消費者物価指数はインフレ率の動向を見るものです。消費者物価指数は金融危機後の2009年に前年同月比でマイナスとなるまで低下した時期もありましたが、直近ではカナダ銀行が目標とする2%前後で推移しています。
図4:カナダ消費者物価指数(2000年1月から2017年5月、前年同月比)
出所:ロイターよりeワラント証券投資情報室作成
今後のカナダ銀行の利上げスピードは?
図1にあるようにカナダの政策金利は経済的な結びつきが強い米国と連動していますが、過去を振り返ると米国の政策金利を上回っている時期があります。この時期はカナダの消費者物価指数が2%を超えている時期であり、インフレの進行を政策金利の上昇で封じ込めていた時期と言えそうです。つまり、カナダ銀行は米国に追従して利上げを実施する可能性があることに加えて、カナダでインフレが加速した場合には米国の政策金利動向に関わらず追加利上げを行う傾向があると言えそうです。
今後発表されるカナダの消費者物価指数の上ぶれや米国の追加利上げがあれば、カナダ銀行も利上げに動くと考えられ、短期金利の上昇を背景とするカナダドル高が続く可能性があります。今後はカナダ銀行の政策金利発表スケジュールにも注目した方が良いでしょう。今年は9月6日、10月25日、12月6日に政策金利の発表が予定されています。
eワラントにはカナダドル(リンク債)を対象とする銘柄もありますので、カナダ銀行の政策金利発表をイベントとして、イベント前にはカナダドル相場の変動を見込んだコール型eワラントとプット型eワラントの両建て戦略も有効かと思われます。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎(おのだ まこと)
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