日経平均が歴史的な連騰を記録した一方で、下落を警戒する声も聞かれます。投資家の中には、新規買いや継続保有を心配している方もいらっしゃるかもしれません。2000年のITバブルの崩壊、2008年のリーマンショックを考えると、そろそろ○○ショックといった最悪の事態が起きても不思議ではありません。万が一の相場の急落に備える方法として有効と考えられるのは、相場が下落した際に上昇が期待できる「プット型eワラント」を買って下落に備える保険を掛けておくことです。
eワラントとは?
そもそもワラントってなに?3,000円程の少額から始められる「eワラントの魅力」をご紹介いたします。
「プット型eワラントの買い」を掛け捨ての保険としてイメージする
プット型eワラントは、一般にプット型eワラントの各銘柄が対象としている相場が下落する場合に価格の上昇が見込めるeワラントのことであり、「プット型eワラントの買い」は相場見通しが弱気の場合に買い付けするのが一般的な利用法です。
プット型eワラントの価格は各銘柄に予め決められている権利行使価格を、対象としている相場が下回れば下回るほど価格が上昇します。ただし、満期日において相場が権利行使価格を上回っている場合は0円となりますし、満期日前は一般に相場が動かずに時間だけが経過すると価格は下落していきます。
つまり、「プット型eワラントの買い」は買付時の購入代金が最大損失となりますが、満期日において相場が権利行使価格を下回るほど受取金が大きくなります。これは、掛け捨ての保険をイメージすると理解しやすいでしょう。保険は加入者が保険料を支払い、何かあった場合には保険金を受取れる仕組みです。プット型eワラントの買い手は取引時に買付金額を支払い、相場が権利行使価格を下回れば受取金が発生します。
銘柄の選び方
「プット型eワラントの買い」を掛け捨ての保険のイメージで購入する場合、相場の暴落が無ければ投資元本が全てなくなっても仕方ない、それなら買付代金はなるべく小さいほうが良い、ということになるでしょうから、比較的価格が安いプット型eワラントが対象になります。eワラントの価格は確率の考え方で計算されており、価格が安いということは満期日において受取金が発生する可能性も低いということになりますから、どの権利行使価格を選択するか、どれほどの暴落を想定するか、受取金はいくらになるか、ということが買い付け時の検討ポイントになります。
例えば、本稿を執筆した2017年10月24日の日経平均株価21,800円台という状況において、12月に日経平均株価が大きく下落することを想定し、「プット型eワラントの買い」の銘柄を選ぶとします。図は日経平均株価を対象とするプット型eワラントのうち、2017年12月に満期を迎える銘柄を赤枠で囲んでいます。
具体的に2017年12月13日の満期日に19,000円という想定をしたとします。この図における各銘柄の1ワラント当たりの原資産数(株数)は0.002ですので、権利行使価格と19,000円の差額に0.002を乗じると1ワラント当たりの満期精算金が計算できます。例えば、権利行使価格21,500円の銘柄ですと、19,000円との差額が2,500円ですので、満期精算金は1ワラント当たり5.00円となります。売り気配値は1.03円ですから約4.9倍ほどになることが分かります。この要領で図の銘柄を比較すると下表のようになります(図は回号順になっていますが、下表では権利行使価格順に並び替えています)。
もし2017年12月13日に日経平均株価が19,000円なら・・・
回号 |
権利行使価格(円) |
1ワラント当たり |
売気配値(円) |
収益率 |
---|---|---|---|---|
第795回 | 16,000 |
0.00 |
0.05 |
-100% |
第799回 | 17,000 |
0.00 |
0.07 |
-100% |
第865回 | 17,500 |
0.00 |
0.08 |
-100% |
第804回 | 18,000 |
0.00 |
0.10 |
-100% |
第837回 | 18,500 |
0.00 |
0.12 |
-100% |
第811回 | 19,000 |
0.00 |
0.16 |
-100% |
第843回 | 19,500 |
1.00 |
0.22 |
355% |
第818回 | 20,000 |
2.00 |
0.31 |
545% |
第849回 | 20,500 |
3.00 |
0.45 |
567% |
第825回 | 21,000 |
4.00 |
0.69 |
480% |
第858回 | 21,500 |
5.00 |
1.03 |
385% |
収益率を比較してみると、権利行使価格20,500円の第849回という銘柄の収益率が一番高くなるので、事例の前提であればこの銘柄を選ぶことになります。売気配値は0.45円で取引単位は1,000単位ゆえ450円からこの“保険”を買うことができます。注意しなければならないのは19,000円を想定しているからといって権利行使価格19,000円を選ばないことです。権利行使価格と相場水準が一致した場合は満期受取金はありません。また、権利行使価格が低すぎると買付代金は小さく抑えられますが、受取金がない事態も想定されます。
なぜプット型eワラントなのか?オプション取引との違いは?
先物売り、信用売り、CFD、FXなど他の金融商品でも相場の下落で利益を狙うことは可能です。しかし、次の点から「プット型eワラントの買い」の方が有利と考えられます。
・見込みが外れて相場が上昇した場合にも、投資元本以上の損失が発生しません。つまり、追証がありません。
・追証がないのでポジションが強制的に決済されることもありません。結果的に暴落が起きてもその前に強制決済されてしまっては保険としての意味がなくなってしまいます。
・強制的に決済されることがないので、満期保有が前提ならほったらかしにしても良いでしょう。
なお、eワラントはプットオプションを小口化したものであり、経済効果はオプション取引と同様ですが、日経225オプション取引との違いとしては次の点などがあります。
・満期日まで半年以上など期間の長い銘柄でも取引できます。日経225オプション取引では期近物が中心です。
・権利行使価格が相場から極端に離れた銘柄でも取引できます。日経225オプション取引では取引に応じる相手がいないと成立しません。eワラントはマーケット・メイク方式であり、流動性が高くなっています。
・個別株を対象に「プット型eワラントの買い」ができます。日経平均株価よりも大きく動く傾向のある個別株を対象とするプット型eワラントもあります。上場オプション市場では個別株を対象とするオプション取引の流動性は限定的です。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎(おのだ まこと)
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- eワラント(カバードワラント)は、対象原資産である株式(上場投資信託等を含む)・株価指数、預託証券、通貨(リンク債)、コモディティ(リンク債)の価格変動、時間経過(一部の銘柄を除き、一般に時間経過とともに価格が下落する)や為替相場(対象原資産が国外のものの場合)など様々な要因が価格に影響を与えるので、投資元本の保証はなく、投資元本のすべてを失うおそれがあるリスクが高い有価証券です。また、対象原資産に直接投資するよりも、一般に価格変動の割合が大きくなります(ただし、eワラントの価格が極端に低い場合には、対象原資産の値動きにほとんど反応しない場合があります)。
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