9月26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)において、米連邦準備理事会(FRB)は政策金利の誘導目標を2.00%〜2.25%に引き上げるという見方が市場の大勢です。米国株は史上最高値圏での水準を維持していますが、株価に向かい風と考えられる追加利上げに加え、FRBのバランスシート縮小は進められており、いわゆる金融引き締め策が本格化しています。本稿では2018年9月11日時点の米国経済の現状を4つの図で確認するとともに、今後の取引戦略について紹介しています。
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失業率
図1は米国の失業率、失業率の5ヵ月の移動平均、NYダウ平均株価の月次データです。移動平均は、月次データが上下にブレるので失業率の傾向を見るために用いています。失業率と株価の関係を見ると、失業率が低下傾向にあるときは株価は上昇傾向にありますが、過去には失業率の低下傾向が止まる、移動平均が横ばいになるとその後に米国株が下落しています。失業率の動向は米国株下落の前兆として役に立ちそうです。
6月の失業率は4.0%、7月と8月は3.9%と横ばい傾向が続いています。失業率の低下傾向が止まったとは言えませんが、年末にかけて毎月発表される失業率には注目です。
在庫循環
図2は米国企業の在庫と出荷の関係を示したものです。この図では縦軸に在庫の前年同月比を、横軸に出荷の前年同月比を表示しています。短期的な景気循環としてはこの在庫循環図を反時計回りに回ると考えられます。今年は図中の黄色の線で、7月までのデータを反映しています。7月時点では右上、つまり、景気拡大期にあることが分かります。
長短スプレッド
「長短スプレッド」は長期金利と短期金利の差のことです。長期金利は短期金利を上回るのが一般的ですが、短期金利が長期金利を上回る、いわゆる「逆イールド」の状況になると注意が必要です。米国では過去に「逆イールド」の状況が発生し、その後に株価がピークを迎えることが発生していました。図3は米国の「長短スプレッド」とNYダウ平均株価の関係を見たものです。長期金利として米国10年国債利回り、短期金利として米国2年国債利回りを用いており、データは2018年9月11日までです。
興味深いのは、「逆イールド」が発生した数ヵ月後には株価がピークを迎えていることが分かります。「長短スプレッド」は9月11日時点で約0.23%にまで縮小しています。このペースでいくと年内にも「逆イールド」が発生するかもしれません。
米国家計債務
ニューヨーク連銀が先月公表した2018年第2四半期の米国の家計における負債残高は13.29兆米ドルとなり、データを取得できる2003年以降で過去最大を更新しました。
家計の負債残高の内訳として一番大きいモーゲージローンは2018年第2四半期の残高は9.00兆米ドルであり、過去最高は2008年第3四半期に記録した9.29兆米ドルに及ばないものの、徐々に増加しています。2007年から2008年に表面化したサブプライム問題は債務返済能力の低い層(サブプライム)向けのローンの焦げ付きでした。当時は不動産価格の上昇を背景にサブプライム向けの不動産を担保とするモーゲージローンが積み上がっていましたが、不動産価格の下落によってモーゲージローンの延滞や債務不履行が増え、株価の下落を伴い金融危機に発展していきました。
債務不履行に関連して、図4で差押え件数と前年同期比を見てみると、差押え件数は前年同期比でマイナスが続いており、問題はなさそうです。しかし、2017年第2四半期に前年同期比が一時的にプラスに転じているなど、差押え件数の減少傾向は終わりに近づいているのかもしれません。今後もこの傾向が続くのか注意が必要でしょう。
取引戦略
以上の指標を見る限り、米国株相場はピークに近いものの、大きな下落となる兆候が出るには至っていません。上昇トレンドはまだ続きそうだけれども、以前のように大きな上昇幅を狙うのは難しいと考える場合、最大損失が買付代金までに限定されていて、レバレッジ(てこ)の効果があるeワラントを活用するのも一手でしょう。
初心者の方でしたら、権利行使価格が低めのNYダウ平均株価を対象とするコール型eワラントを、可能であればできればNYダウ平均株価が下落したタイミングで買い(いわゆる押し目買い)、1〜2週間後に一旦売却、再度タイミングを見て買い、ということを繰り返すことを考えてみるのもいいでしょう。
今後、上記4指標で米国株に下落の兆候が出た場合は、コール型eワラントではなく、相場の下落時に収益の獲得を期待できるプット型eワラントの利用を考えることになりますが、これについてはあらためて解説します。
NYダウ平均株価を対象とするeワラント一覧
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎(おのだ まこと)
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