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景気後退?米国経済の現状確認と取引戦略(2019年2月時点)

2019/2/15

米国株式市場が昨年末に大きく下落したことなどから、「米国の景気は悪くなってきたのかも」と考えている投資家が増えてきているのかもしれません。米国の景気の先行きを不安視する声を受けてか、米国の中央銀行にあたる連邦準備理事会(FRB)は、昨年まで政策金利の誘導目標の引き上げ、いわゆる利上げを続けてきましたが、最近では利上げを止めるかもしれない、という観測が出てきています。利上げは景気の過熱を抑える解熱剤のようなものですが、解熱剤を投与しすぎると米国景気をかえって悪化させてしまうからです。

利上げが止められることは株式市場にとってはプラスの材料ですが、利上げを止める理由が景気後退だとすると株式市場にとって喜べるものではないでしょう。そこで本稿では2019年2月12日時点の米国経済の現状を4つの図でチェックするとともに、今後の取引戦略について紹介しています。

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失業率は上昇傾向に転じるか?

米国の失業率とは、職探しをしている失業者の比率のことです。失業率が低ければ失業者が少ないことになりますので、景気が良いということになり、失業率が高ければ失業者が多いことになりますので、景気が悪いと解釈できます。なお、失業率は働くつもりがある失業者を対象にしており、働くつもりがない失業者は含まれません。

図1は米国の失業率、失業率の5ヵ月の移動平均、NYダウ平均株価の月次データです。移動平均を掲載しているのは、上下にブレのあるデータをならして長期的な傾向として上がっているのか下がっているのかを見るためです。失業率と株価の関係を見ると、失業率が低下傾向にあるときには株価が上昇傾向にありました。失業率の低下傾向が止まって移動平均が横ばいになるとその後に米国株が下落していました。失業率の動向は米国株下落の前兆として役に立ちそうです。

2018年11月の失業率は3.7%、翌12月は3.9%、2019年1月は4.0%と徐々に上昇してきています。1月の失業率の上昇は米国の政府機関閉鎖によるものという見方もありますが、一時的な理由でなく失業率の低下傾向が止まったとすれば注意が必要かもしれません。次回3月8日に発表される2月の失業率の数値には注目です。

在庫循環は景気拡大期の終盤に?

在庫循環とは企業の在庫に注目して景気の動向を探るものです。好景気と不況が繰り返し起きることを景気循環といいますが、在庫循環は景気循環の中でも短期的なものとされます。景気が良いときは、企業が製品をたくさん作ってもどんどん買ってもらえるので、出荷が増えて在庫は減ります。景気が悪くなってくると製品が売れなくなり、出荷が減って在庫が増えてきます。不景気になると、企業が積みあがった在庫を減らそうと生産を減らして事業のリストラなどコスト削減に努めることになります。そのうちに景気が回復してきて再び出荷が増え、在庫が減っていくという循環です。

図2は米国企業の在庫と出荷の関係を示したものです。縦軸に在庫の前年同月比を、横軸に出荷の前年同月比を表示しており、反時計回りで在庫循環を見ます。斜め45度の線が入っていますが、この線より下側が好景気、上側が不景気となります。データが取得できるのは2018年11月分までで、図中の黄色の線が2018年分です。2018年11月時点ではまだ右上、つまり、景気拡大期にあることが分かりますが、11月に左側に大きく動いたことが分かります。縦軸の在庫は減少していますが、それ以上に横軸の出荷が大きく減少していたことが分かります。この要因として考えられるのは米国による対中関税によって中国景気が減速していることやスマートフォン出荷の減速でしょう。2018年12月以降のデータはまだ見られませんが、斜め45度の線を超えて景気拡大期の終盤に入っている可能性があります。

長短スプレッドは低下傾向

長短スプレッドは長期金利と短期金利の差のことです。長期金利とは長期国債の利回り、短期金利とは短期国債の利回りのことです。一般的に長期金利は短期金利を上回ります。定期預金やローンで長期のほうが短期より金利が高くなるのと同じ理屈です。しかし過去には、短期金利が長期金利を上回る状況が発生したことがあります。金利のことをイールドといいますが、この長短金利の逆転を「逆イールド」といいます。

米国では過去に「逆イールド」が発生し、その後に株価がピークを付けていました。図3は米国の長短スプレッドとNYダウ平均株価の関係を見たものです。長期金利は米国10年国債利回り、短期金利は米国2年国債利回りを用いています。

「逆イールド」が発生する理由にはいくつかありますが、理由の一つとして長期金利の低下があります。長期金利は指標となる長期国債が人気となり市場で買いたい投資家が増えると利回りが低下します。長期国債は安全資産とされるので、株式などのリスクの高い資産が危ないと見なされれば投資家は長期国債にお金を置いておこうとし、長期国債が買われて長期金利が低下するわけです。長短スプレッドは低下傾向にあり、「逆イールド」の発生は時間の問題といえます。

米国家計債務は過去最大に

ニューヨーク連銀が2月12日に公表した2018年第4四半期の米国の家計における負債残高は13.54兆米ドルとなり、データを取得できる2003年以降で過去最大を更新しました。内訳を見ると自動車ローン、クレジットカード、学生ローンが2003年以降で最大となりました。

2007年から2008年に表面化したサブプライムローン問題とその後の金融危機の要因の1つとされるモーゲージローンは、家計の負債残高の内訳として一番大きなものとなっています。2018年第4四半期のモーゲージローンの残高は9.12兆米ドルとなり、過去最大の2008年第3四半期の9.29兆米ドルに迫っています。

米国で利上げの停止を求める声が強まっている背景として、積みあがった家計の債務問題も挙げられるでしょう。利上げはローン金利の上昇につながりますので、家計の債務支払い負担を増加させるものになり、個人消費を減退させ、ひいては景気後退入りを早める可能性があります。家計債務が過去最高という債務が膨らんだ状況において利上げを行うことによる景気減速及び株安へのインパクトは小さくないものと思われます。

投資戦略

指標を見る限り、米国景気は後退期に入ったかもしれません。米国株式市場は戻り基調にありますが、今後の本格的な景気後退と米国株安に備える保険として活用したいのがプット型eワラントです。プット型eワラントは対象となっている相場が下落すればするほど値上がりを期待することができます。NYダウ平均株価を対象とするプット型eワラントがあります。

例えば毎月1回、プット型eワラントを掛け捨ての保険のように一定額を買付けて1カ月保有してみるという投資戦略が考えられます。予期せぬタイミングで米国株式市場の急落があった場合にプット型eワラントの値上がりで保有資産の下落の一部を相殺できるかもしれません。
NYダウ平均株価を対象とするプット型eワラント一覧

なお、SBI証券では1月21日より、eワラントの新商品「コメeワラント」の取扱を開始しました。 そこで、コメeワラントの取扱開始にあたって、SBI証券では2大特典付きのコメeワラント開始記念キャンぺーンを開催しています。
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eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎(おのだ まこと)

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