日本の連休中の3日に発表されました米国の4月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が26万3000人増と大幅に伸び、失業率は3.6%と改善しました。失業率は1960年代後半以来となる低水準であり、米国経済の強さを示したものと言えるでしょう。連休最終日の6日にトランプ大統領は対中関税引き上げに言及しましたが、中国に対して強気に出ている背景には米国経済の強さへの自信が背景にあるのかもしれません。そこで本稿では2019年5月7日時点の米国経済の現状を確認するとともに、今後の取引戦略について紹介しています。
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雇用環境
図1は米国の失業率、失業率の5カ月の移動平均、NYダウ平均株価の月次データです。失業率と株価の関係を見ると、失業率が低下傾向にあるときには株価が上昇傾向にあり、失業率の低下傾向が止まって移動平均が横ばいになると米国株が下落しており、失業率の動向は長期的な米国株下落の前兆として役に立ちそうです。
5月3日に発表された4月の失業率は3.6%と歴史的な水準に低下しました。3月までの直近数カ月の失業率は横ばい傾向にあったことから、景気後退局面入りの懸念がありましたが、4月に低下したことで米国経済の拡大がまだ続いていることが確認できました。
在庫循環
図2は米国企業の在庫と出荷の関係を示したものです。この図では縦軸に在庫の前年同月比を、横軸に出荷の前年同月比を表示しています。在庫と出荷の関係で示される点がどのように過去から動いてきたかを見ることによって短期的な景気循環を見ることができると考えられます。3月時点では右上の左側、つまり、景気拡大期終盤にあることが分かります。
住宅市況
住宅には建材、家電、設備、運送など様々なモノやサービスが関わりますので住宅市況も景気動向を見る上で重要と考えられます。
図3は米国の新築一戸建て住宅販売件数と株価の推移ですが、新築一戸建て住宅販売件数と株価の動く方向は似ていると言えそうです。とくに2007年には新規一戸建て住宅販売件数がピークアウトした後で株価の下落が生じており、株価の先行指標となっていました。2018年は年末にかけて住宅市況が悪化しましたが2019年に入ってからは持ち直しており、この傾向が今後も続くのか注目です。
金利動向
長期国債の利回り(イールド)は短期国債の利回りを上回るのが一般的ですが、長短の利回りが逆転することを「逆イールド」と呼び、これが発生すると注意が必要です。米国では過去に「逆イールド」の状況が発生した後に株価がピークを迎えており、景気後退のシグナルとされるからです。図4は直近、1カ月前、3カ月前、6カ月前の米国債の年限別利回りを示したものです。2年から5年の利回りの低下が目立っており、1年未満のところと比較すると「逆イールド」となっていることが分かります。10年の利回りはまだ1年未満のところより高くなっていますが、イールドの状況からは警戒域に入っていると言えそうです。
取引戦略
以上の指標を見る限り、米国株相場は景気後退期にはまだ入っていないと見ることができそうです。
株価の上昇トレンドはまだ続きそうだけれども、以前のように大きな上昇幅を狙うのは難しいと考える場合、最大損失が買付代金までに限定されていて、レバレッジ(てこ)の効果があるeワラントを活用するのも一手でしょう。
初心者の方でしたら、権利行使価格が低めのNYダウ平均株価を対象とするコール型eワラントを、可能であればNYダウ平均株価が下落したタイミングで買い(いわゆる押し目買い)、1〜2週間後に一旦売却、再度タイミングを見て買い、ということを繰り返します。
反対に、下落に備えておきたいと考えるなら、相場の下落時に収益の獲得を期待できるプット型eワラントの利用を考えることになりますが、プット型eワラントの取引が初めて、という方でしたら、権利行使価格が高めのNYダウ平均株価を対象とするプット型eワラントを、可能であればNYダウ平均株価が上昇したタイミングで買い、1〜2週間後に一旦売却、再度タイミングを見て買い、ということを繰り返します。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎(おのだ まこと)
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