今年の4月まで新高値を更新し続けていたビットコインですが、足元で相場が急落しています。
5月末には、一時、今年の最高値の約半値近くまで下落する局面もありました(日本円ベース)。
このような荒い値動きを見てしまうと、やはり買い・売りだけの一方向に投資する戦略においては、暗号資産(仮想通貨)はリスクの高い投資対象だと考えざるを得ないでしょう。
そこで、以前提案させていただいたビットコインとイーサリアムを使ったロングショート戦略の有効性が試されるところです。
改めて検証してみようと思います。
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■ビットコインとイーサリアムの関係性は?
4/16に「2週間で21%のリターン!?暗号資産(仮想通貨)のレバレッジトラッカーを使った投資手法とは?」というレポートを掲載させていただきましたので、おさらいにはなりますが、20年1月1日から21年3月1日までのサンプルデータを使ってビットコインとイーサリアム間に存在する関係式を導き出すと、
ビットコインの価格 = 3245.541 ( USD ) + 25.69812 × イーサリアムの価格
というものになります。
この計算式から導き出されるビットコインの予想価格と実際のビットコインの価格の誤差値が、予想価格に対してどの程度ずれているかという数値を誤差率と定義し、これを時系列的にグラフにしたものが図1です。(期間:2020年1月1日〜2021年4月9日)
前回の記事でも触れましたが、-20%〜+20%のレンジで動いているように見えます。
つまり、
-20%の時点でビットコインを買い、イーサリアムを売る。
+20%の時点でビットコインを売り、イーサリアムを買う。
という戦略を立てれば良い事になります。
■その後、どうなっているか?
それから1カ月半近く経った今、上記グラフはどのように推移しているでしょうか?下の図2をご覧ください。
いかがでしょうか?
誤差率が-20%で反発することなく、さらに拡大してしまっていることがうかがえます。
3月末から4月にかけて誤差率が+20%まで拡大したタイミングでは、狙い通り0%のレベルまで誤差率が収束することにより、2週間程度で約21%のリターンが取れました。
しかし、4月22日に-20%にタッチしたタイミングでは、再び0%まで収斂することなく、誤差率が拡大しています。
もしビットコインを買い、イーサリアムを売っていれば、図3のようなパフォーマンスになっており、一時70%の損失を被ることとなり大失敗となっていたことでしょう。(期間:2021年4月22日〜2021年5月24日)
理由としては、「イーサリアムが急騰したため」の一言に尽きるかと思います。
なぜイーサリアムが急騰したかということに対して、暗号資産(仮想通貨)の専門家の間ではコメントするべき要因が様々あるのかもしれませんが、ここでは統計学的に何が起こっているのか?を考えます。
そこで下の図4をご覧ください。
これは直近50日間の日次データを利用して、ビットコインとイーサリアム間の相関係数の推移を時系列的にプロットしたものです。
当該ロングショート戦略は、両者に十分な相関関係があることを大前提としております。
しかし、図4を見る限り、2021年4月20日頃から急速に両者の相関関係が悪化し始め、一時は負の相関になる場面もあったことが分かるかと思います。
これでは、前述の回帰式で価格を説明することは到底難しいと言えるでしょう。
つまり、今後この戦略を試す際は、相関係数も併せてチェックすることが大事になってくるようです。
少なくとも相関係数が+0.6以上になるまでポジションを取るのは待つべきかもしれません。
先日の事例で言うと、4/22に誤差率が-20%に到達したタイミングで相関係数は+0.61でした。
従って、ここでポジションを取るのは、ある意味間違いではなかったと考えられます。
しかしその後、
4/23:+0.50【-20%】,4/24:+0.39【-18%】,4/25:+0.27【-21%】,4/26:+0.18【-20%】,4/27:+0.12【-23%】,4/28:+0.06【-25%】
※【】内は予測誤差率。
と、相関関係は日に日に悪化していきました。
少なくとも相関係数が+0.2を下回った4/26の時点で、「相関関係はなくなった。」と判断し、一旦ポジションを閉じるべきだったでしょう。
そうすれば、+1%程度の利益を残しつつポジションを解消することができました。
今後は、相関係数も併せて、チェックされることを推奨いたします。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 吉野 真太郎
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