2017年度も終わり、4月中旬から主要企業の本決算発表が始まります。日本の主力企業には輸出企業が多いため、為替レートの変動は企業業績や株価に与える影響が大きいといえるでしょう。
とはいえ、為替レートをどのように想定しているかは各企業ごとに異なりますし、為替相場変動の影響の受けやすさも異なります。その違いをうまく捉えることができれば、投資機会とすることができるかもしれません。
そこで、本レポートでは今後の本決算の発表シーズンに備え、主要輸出企業が想定していた為替レートと地域ごとの売上構成から、為替相場の変動が業績に与える影響を考えます。また、本決算で波乱があるとすればeワラントを使ってどのような投資戦略が実行できるのかについてもご紹介しています。
国内主要企業の想定為替レートと地域別売上比率 |
為替相場はリアルタイムで変動しますが、各企業では年度の事業計画を立てる上で、前提となる為替レートを決めて業績の見通しを計算しています。このときの前提として置かれる為替レートを「想定為替レート」と呼びます。
一般的に円安は輸出企業にとって良い、と言われます。輸出企業は外貨ベースの売上を日本円で評価するため、事前の想定為替レートよりも円安が進行していれば円換算ベースでの評価額がかさ上げされるためです。そのため、円安の進行は輸出企業の株価にとってポジティブ要因、円高の進行はネガティブ要因になっていると考えられています。
ここでポイントとなるのは、輸出企業が想定為替レートをいくらにしているかということです。想定為替レートよりも円安が進んでいればかさ上げ効果が見込める一方で、想定為替レートよりも円高が進んでいればかさ上げどころか評価減が生じてしまいます。
2018年4月2日に公開された日銀短観(3月調査)では、2017年通期の大企業・製造業の想定為替レートは110.67円/ドルとされています。ただし、想定為替レートは企業によって異なりますので、ここでは主要企業が想定為替レートをいくらにしていたのか見てみましょう。
業種 |
銘柄名 |
コード |
想定為替レート(通期) |
|
---|---|---|---|---|
ドル |
ユーロ | |||
輸送用機器 |
トヨタ |
7203 |
111 |
129 |
ホンダ |
7267 |
110 |
— |
|
日産 |
7201 |
110 |
130.2 |
|
SUBARU |
7270 |
112 |
130 |
|
マツダ |
7261 |
111 |
130 |
|
スズキ |
7269 |
111 |
123 |
|
機械 |
コマツ |
6301 |
108.6 |
119.3 |
ダイキン工業 |
6367 |
110 |
126 |
|
電気機器 |
日立 |
6501 |
111 |
126 |
村田製作所 |
6981 |
110.5 |
128.1 |
|
ソニー |
6758 |
113 |
134 |
- ※第三四半期決算発表時点で取得可能な決算情報からeワラント証券作成。本情報は正確性を保証するものではありません。
3/31時点における米ドル対円相場は106円程度、ユーロ対円相場は131円程度でした。
総じて、各社ユーロに対しては想定どおりまたはやや保守的な想定為替レートになっていますが、米ドルに関しては総じて実勢為替レートが想定為替レートよりも円高になってしまっています。米中の貿易摩擦激化への警戒感から、安全資産である円にマネーが流入したことが原因と考えられます。
上記のうち、輸送用機器ではホンダとSUBARUは売上に占める北米の割合が高いので、ユーロよりも米ドルの変動の方が業績に影響が大きく、円高ドル安は誤算となるかもしれません。一方、トヨタやスズキ、マツダは売上に占める北米の割合が他社よりも相対的に低く、ドル安の影響は比較的軽微となるかもしれません。ただし、スズキの場合はインドなどアジア圏の比率が高くなっているので、そちらも確認しておいたほうがよさそうです。
機械、電気機器では日立は売上に占める日本の割合が高めですが、コマツやダイキン工業、ソニーや村田製作所は海外の売上比率が高くなっています。特にコマツとダイキン工業は米国の比率が他社よりも高めなので、ドル安の影響を受けそうです。村田製作所はその他地域が多くなっており、特に中華圏の比率が高くなっています。
本決算で波乱があるとするなら |
主要企業の想定為替レートを踏まえると、ユーロに対しては各社保守的に為替レートを想定していますが、米ドルについては事前の想定よりも円高米ドル安が進行したため、米国からの売上が高い企業には本決算発表において、過去の実績および将来の見通しに関してネガティブな内容が発表されるかもしれません。
投資戦略としては値動きが似ている同業種で想定為替レートが低め、又は米国からの売上比率が低い銘柄のコールと、想定為替レートが高め、又は米国からの売上比率が高い銘柄のプットを両方建てることで、全体の相場変動の影響を受けにくくしたうえで利益を狙うことができるかもしれません。相場が大きく動いた場合、一方の利益が他方の損失を相殺して、なおかつ数%の利益を狙うという投資戦略です。
利益を狙えるのはコールの原資産になっている株式が、プットの原資産になっている株式を大幅に上回るパフォーマンスになった場合か、プットの原資産になっている株式が、コールの原資産になってる株式を大幅に下回るパフォーマンスになった場合です。目安として、合成ポジションが3〜5%程度の含み益が発生したら利食い売りをしましょう。
【輸送用機器で合成ポジションを組むなら】
トヨタ自コール 第273回 or スズキコール 第21回
+
ホンダプット 第167回 or SUBARUプット 第53回
【機械・電気機器で合成ポジションを組むなら】
日立コール 第172回
+
コマツプット 第120回 or ダイキン工プット 第70回
今回のコールくん、プットくんの注目銘柄 |
コールくんが選ぶ〜注目銘柄
NTT(9432)の株価はこのところ上昇基調にあるね。自社株買いの実績が投資家に評価されているということかもしれないね。子会社のNTTデータ(9613)については米系証券が投資判断を中立⇒買いに引き上げたようだよ。株価に順張りする前提でコール型を選択したよ。
短期的な株価の上昇を狙って、権利行使価格の高い銘柄を選んだよ。
4月末ぐらいまでに手仕舞いたいところだね。
1.2円程度を目標価格とするよ。
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- ※コメント作成時、eワラントホームページのアクセス状況に基づきます。
プットくんが選ぶ〜注目銘柄
2月の中旬以降、米ドル対円相場の値動きは小幅で105〜107円くらいで留まっている印象だよ。今後も為替相場のボラティリティが低い状態が続くと考えるなら、ニアピンで大きなリターンが狙えるかもしれないね。
満期の米ドル対円相場が105〜107円の範囲内になると予想して選んだよ。
ピン価格から大きく外れない限りは満期で保有してみても良いかもしれないね。
50円以上では売却したいところだね。
- ※あくまでも現在の市場動向から推測した目安であり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
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