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【海外ETF】ETFの仕組み

2016/03/07

ベンチマーク

ETFには、必ずそのベースとなる株価指数などのベンチマークがあります。

例えばバンガード・トータル・ワールド・ストックETF(ティッカーシンボル:VT)はFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスという指数にパフォーマンスが一致するように設計されています。

米国の代表的な株価指数であるS&P500に連動するように作られているETFとしては、バンガードS&P500ETF(ティッカーシンボル:VOO)、SPDR S&P500 ETF TRUST(ティッカーシンボル:SPY)という2つのポピュラーなETFがあります。

またコモディティの例としてSPDRゴールドシェアETF(ティッカーシンボル:GLD)は金価格にパフォーマンスが一致するようにデザインされています。

ETFの中身に何が入っているか? ということを示すリストとしてポートフォリオ・コンポジション・ファイル(PCF)が毎日、公開されています。

乖離(かいり)

ベンチマークとETF価格は、普通、限りなく同じ動きをします。しかし場合によっては、ほんの少しズレが生じることがあります。

そのズレのことを、乖離(かいり)と言います。

我々投資家は、自分が投資しようとする株価指数やベンチマークと全く同じ動きをすることを期待して、それらのETFに投資するわけですから、乖離が大きくては困ります。

別の言い方をすれば、大きな乖離が放置されているETFは、投資に向かないETFです。

そもそもETFの会社にはファンドマネージャーは居ない

さて、「乖離が生じるのは、ファンドマネージャーの腕前が悪いからだ」ということを主張する人がいます。残念ながら専門家の中にも、そういう主張をする人が居ます。

でも、それは間違っています。

なぜなら、ETFの会社には、我々が普段、ファンドマネージャーという言葉を聞いてイメージする、銘柄を選ぶ作業や、株式の売買の判断をする人は、そもそも存在しないからです。

もちろん、ETFの会社の中には「ファンドマネージャー」という肩書を持つ担当者を置いている企業もあります。しかしそれらの担当者はETFの事務作業に携わる人であり、本来のファンドマネージャーの仕事はしていません。

なぜETFの会社にはファンドマネージャーの役目をする人が居ないのでしょうか?

それはETFの会社では、その作業を「外部化」しているからです。

外部化というのは聞き慣れない言葉だと思います。それは要するに社外の人たちに任せているという意味です。

ETF価格の乖離に目を光らせている人たち

さて、社外に居て、ETF価格の乖離に常に目を光らせている人たちのことをAPと言います。

APとは、オーソライズド・パーティシパントの略で、指定参加者とも呼ばれます。指定参加者は、証券会社の自己売買部門や、サヤ取りを専門とするヘッジファンドです。

APは、自分のトレーディング利益を追求する一環として、ETFと、それがベースにしているベンチマークとの間の価格のズレに着目します。

いま、それらの間での価格差が大きくなったら、その一方を買い、同時に他方を売るというトレードをすることで、価格差を利用したサヤ取りをするわけです。

サヤ取り業者が儲ける仕組み

これは具体例で説明した方がわかりやすいと思うので、NYSE Arca金鉱株指数に連動するETF、マーケット・ベクトル金鉱株ETF(ティッカーシンボル:GDX)を例にとって説明しましょう。

同ETFは37銘柄の金鉱株で構成されています。具体的にはバリック・ゴールド(ティッカーシンボル:ABX)、ニューモント・マイニング(ティッカーシンボル:NEM)、ゴールドコープ(ティッカーシンボル:GG)などから成っています。

いま仮に、それらの37銘柄から構成されるNYSE Arca金鉱株指数よりも、マーケット・ベクトル金鉱株ETFの取引値段の方が大幅に割高になったとしましょう。

その場合、サヤ取り業者としては、大急ぎで指数を構成する全銘柄、つまり37銘柄を市場で買い集め、それと同時にマーケット・ベクトル金鉱株ETFを空売りすることで、価格差のサヤを抜くことが出来ます。

このような作業を、アービトラージと言います。

そして買い集めた37銘柄の金鉱株を、1セットとしてETFの運用会社が指定する信託銀行に持ち込むのです。

信託銀行は、この1セットの現物株のバスケットを受け取る代わりに新しいETFを交付します。

この作業、つまり37銘柄の現物株と引き換えにETFを交付することをクリエイションといいます。日本語では「設定」と訳されています。

サヤ取り業者は、マーケット・ベクトル金鉱株ETFを空売りした決済を、出来立てホヤホヤの、新しく設定されたマーケット・ベクトル金鉱株ETFでつけるというわけです。

誰が費用を負担している?

さて、上の例で37銘柄を大急ぎで市場で買い集めたのはサヤ取り業者です。買い注文を出すときの株式売買委託手数料も、サヤ取り業者が自腹で負担しています。

ETFの担当者は、持ち込まれた1セットの銘柄バスケットを吟味し、ちゃんとPCF通りに揃っているかを確認し、それにオッケーを出すだけです。

つまりETF会社自体は、株式売買委託手数料を払っていないのです。これが上で述べた「外部化」です。

ETFの費用比率がとても低い秘密は、ここにあります。

ETF選びのコツ

最後に、上の説明を踏まえて、良いETF選びのコツを伝授します。

ETF会社は、ベンチマークからの価格乖離の是正を外部のサヤ取り業者に任せています。

その関係で、乖離が生じてしまっても、自分ではどうすることもできないのです。

だから乖離が長いこと放置されているようなETFを、我々は買うべきではありません。

一般に、活発に取引され、出来高の多いETFの場合、APがこまめにサヤ取りを行っています。その場合、乖離は即座に是正されるので、ベンチマークからの逸脱の心配は少ないです。こういうETFが、良いETFだと思います。

つまりETFの選びのコツとは、ひとことで言えば「出来高の多いETFを選べ!」ということなのです。

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