英国の国民投票でマーケットは荒れ模様
6月23日に英国で国民投票が実施されました。その結果、離脱派が勝利しました。これは番狂わせです。
英国が実際にEUを離脱するとなると、複雑で長丁場の交渉が予想されます。経営者の立場からすれば、「関税などに関する新ルールが、どうなるかわからない」という不確実性が増しますので、新規の設備投資や採用は当然、しにくくなります。つまりイギリス経済がこれから景気後退局面に入ってゆくリスクが高まったのです。
日本の場合、イギリスとの直接の貿易額は小さいです。だから一見するとこの材料は日本経済には関係ないように思えます。
しかし予期せぬニュースで世界の投資家のマインドが委縮してしまい、その結果として投資家が本国へとお金を戻した関係で、急激な円高になりました。同様のことはドルにも起こりました。
このように通貨が急激に強含むと、それはあたかも金融引締めを行ったのと同様な効果をもたらします。それが原因で、日本や米国の景気を不安視する市場参加者が増えてきているのです。
利上げ観測は遠のいた
景気の先行きに対する不透明感が強まった関係で、連邦準備制度理事会(FRB)の次の利上げのタイミングに関する市場参加者の期待は大幅に後退しました。「今年は、もう利上げは無いかもしれない」という意見が多くなっているのです。
株価と金利は競争関係にあります。つまり銀行預金の利子が高くなり、その魅力が増えたら、なにもわざわざリスクを冒して株を買いたいという酔狂(すいきょう)な投資家は減るということです。
逆に、現在のようにマイナス金利の状況では、銀行にお金を預けておいてもぜんぜんお金は増えないので、リスクを取り、株式投資するニーズが増えるというわけです。
今回、英国の国民投票のニュースを受けて、利上げ観測が後退したということは、したがって株が上昇しやすい要因が、ひとつ出てきたという風に解釈できるのです。
ボラティリティは漸減する
ボラティリティとは、「相場の荒れ」のことを指します。相場が荒れている時は「ボラティリティが高い」、逆に株価の値動きがマイルドな状況のことを「ボラティリティが低い」という風に形容します。
英国の国民投票の結果が判明した直後のように、ボラティリティが高まった局面では、株価は急落しやすいです。そしてボラティリティが高止まりしている間は、相場の出直りは期待薄です。
しかし投資家の気持ちが鎮まり、ボラティリティがじりじり減り始めると、株価はフラフラと上昇しはじめます。
私は相場の世界に入ってかれこれ30年になりますが、株を買う好機は、まさしくこのような瞬間なのです。
びっくりするニュースが飛び込んできたら、投資家は「次にはどんな悪い進展があるか?」と続報に対し身構えます。その場合、人間は悲観的になって、最悪のシナリオを想定しがちです。それを株式投資の文脈で表現し直せば「株価は最悪のシナリオを一気に織り込む」ということなのです。
いまは正しくそのような局面の典型であり、「EUって、何?」とか「英国は、どうなっちゃうのか?」とかを今頃になって慌てて勉強し、状況を理解しようとするわけです。その傍らで、行き過ぎたボラティリティはじりじり低下し、株価は気がつかないうちにヒタヒタと上昇します。
この瞬間ほど、株式投資をしていて美味しい瞬間は無いし、この局面を取り逃がすと、逆に投資で儲けるのは骨が折れます。
かつてロスチャイルドは「私は舗道に血痕があるときに買い出動する」と言いました。いまは、まさにそのような局面なのです。
マイルドなリスクのETFで勝負
現在のような局面で株を買うのは初心者の場合、なかなか勇気が要ります。でもここは勇気を奮うべき局面だと私は思います。
ただリスキーな局面には違いないのだから、蛮勇(ばんゆう)、すなわち無茶な過信は無用です! 実際に投資に際しては、ちゃんと低リスクの手堅いETFを選ぶべきだと思います。
そこで長期保有に適した、低リスクの株式ETFを最後に列挙しておきます。
コード |
名称 |
内容 |
---|---|---|
ACWI |
iシェアーズMSCI ACWI ETF |
全世界の株式を、まるごと買うETF |
VT |
バンガード・トータル・ワールド・ストックETF |
全世界の株式を、まるごと買うETF |
DIA |
SPDRダウ工業株価平均指数ETF |
米国の優良株で構成されるダウ工業株価平均指数採用銘柄に投資するETF |
IVV |
iシェアーズ・コアS&P500 ETF |
米国の代表的株価指数であるS&P500指数に投資するETF |
VOO |
バンガードS&P500 ETF |
米国の代表的株価指数であるS&P500指数に投資するETF |