スマートフォンは広告や有料コンテンツを届けるインフラと化した
調査会社イー・マーケターズによれば、今年世界のスマートフォンのユーザー数はいよいよ20億の大台を超えると見られています。
このように多くの消費者の手にスマートフォンがあるということは、それを通じて広告やオンライン・ゲーム、電子書籍などの有料コンテンツを届けるインフラストラクチャが整ったことを意味します。
この新しい訴求経路の持つ可能性と、その投資機会について今日は論じたいと思います。
グローバルのモバイル広告市場
まず調査会社IDCはグローバルのモバイル広告市場の規模を下のグラフのように予想しています。
グローバルのモバイル広告市場(10億ドル、IDC、LINE売出目論見書よりコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
このうちアジアのモバイル広告市場の部分を取り出すと、下のグラフのようになります。
アジアのモバイル広告市場(10億ドル、IDC、LINE売出目論見書からコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
さらに日本のモバイル広告市場だけを抽出すると、下のグラフのようになります。
日本のモバイル広告市場(10億ドル、IDC、LINE売出目論見書からコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
今度は同じデータを、それぞれの地域のマーケットシェアに直したグラフをお見せします。
グローバルのモバイル広告市場シェア(%、IDC、LINE売出目論見書からコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
つまり日本のモバイル広告は急成長しているけれど、世界全体から見れば小さいし、将来のシェアは下がってゆくことがわかります。
主なプレーヤー
モバイル・メッセージング市場では、フェイスブック(ティッカーシンボル:FB)、ツイッター(ティッカーシンボル:TWTR)、グーグル(ティッカーシンボル:GOOGL)、ヤフー(ティッカーシンボル:YHOO)、テンセントなどがサービスを競っていますが、代表的な日本企業としてLINE(東証コード3938、NYティッカーシンボル:LN)を挙げることができるでしょう。
グローバルのモバイル有料コンテンツ市場
さて、スマートフォンを経由した商機としては、広告だけでなく、有料コンテンツを提供するというやり方もあります。ここで有料コンテンツと言った場合、具体的にはオンライン・ゲームとか電子書籍、ミュージック・ダウンロードなどを指します。
先述のIDCは、同市場の成長性を次のグラフのように見ています。
モバイルで消費される有料コンテンツの市場(10億ドル、IDC、LINE売出目論見書からコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
モバイル広告とモバイル有料コンテンツの両方に足を突っ込んでいるLINE
さて、LINEの場合、ライバル企業と少し違う点として、モバイル広告とモバイル有料コンテンツの提供の両方に足を突っ込んでいることが挙げられます。
LINEの売上高構成比(%、LINE売出目論見書からコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
LINEの課金顧客数がどのように推移しているかは、MPU(マンスリー・ペイド・ユーザー)という経営指標によって表されます。
LINEのMPU(百万ユーザー、LINE売出目論見書からコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
LINEゲームの月次アクティブ・ユーザー数は、過去に減少したケースもあり、安定感に欠けます。
またLINEスタンプの売上は、良い感じで伸びているのですが、今のところ顧客の大部分は日本人です。
海外でもスタンプを販売できるかどうか? ということに関しては、一抹の不安が残ります。
海外では台湾、タイ、インドネシアにフォーカス
さて、当初LINEが海外戦略を打ち出したときは、世界全体を視野に入れていました。しかし海外にはフェイスブックのWhatsAppに代表されるような手強い競争相手も多く、「勝てる」地域を慎重に選ぶ必要があります。
そこでLINEは、台湾、タイ、インドネシア市場を重要な戦略市場とし、そこへ集中する戦略を採用しています。
LINEの月次アクティブユーザー数(百万人、LINE売出目論見書からコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
なおこれらのターゲット市場は、いま国民がどんどん豊かになっていることに加え、文化の面で、スタンプのようなサービスが受け入れられやすいと思われます。
前例なきケース
さて、私はずっと外国株や上場の仕事に携わってきたのですが、今回のLINEの日米同時上場に関しては、感慨深いものがあります。
なぜなら既に東証で取引されている企業の米国預託証券(ADR)をアメリカでもトレードするという例は過去に幾つもありましたけど、最初からいきなり両方の市場で上場されるというのは前例が無いからです。
これはLINEという会社が「グローバルに展開してゆく!」という決意を持っていることをアピールする効果があると思います。
LINEは、東証ではコード番号3938で、ニューヨークではコードLNで取引されます。7月6日現在の仮条件は東証の場合2900円〜3300円、ニューヨークの場合28.5〜32.5ドルとなっています。
円建てのトレードを考えている人、ドル建てのトレードを考えている人のどちらも参照しやすいように、過去の業績の一株当たりデータを、それぞれの通貨で示しておきます。
LINEの業績(LINE売出目論見書からコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
LINEの業績(LINE売出目論見書からコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
【略号の読み方】
DPS 一株当たり配当
EPS 一株当たり利益
CFPS 一株当たり営業キャッシュフロー
SPS 一株当たり売上高