レイバー・デー明けの相場に注目
米国株式市場では「レイバー・デー明けはセンチメントが変わりやすいので気を付けろ!」ということが言われます。
レイバー・デーとは、「労働者の日」の意味で、今年は9月5日(月)です。この日は休日です。
なぜレイバー・デーは重要なのでしょうか?
それはアメリカの学校の新年度と関係しています。
日本の場合、新年度は桜の咲く4月1日からですが、アメリカの学校は9月からスタートします。その関係で、アメリカ人は子供の頃から9月になると新年度入りとなり(さあ、今年もがんばるぞ!)とフレッシュな気分になるというわけです。
レイバー・デーの3連休は、夏休み最後の連休であり、アメリカ人は家族でバーベキューをしたりして過ごします。それが終わると会社員は腕まくりして仕事に取り組みます。
株式市場との絡みで言えば、レイバー・デー明けは、夏の間、待機状態にあった新規株式公開(IPO)や公募増資などのディールが、一斉に動き始めます。このため9月は株の供給が増え、需給関係が崩れやすいです。
これを読んでいる読者の皆さんに是非、やっていただきたい事は、これまでの人気セクターや投資テーマが、9月を境にガラッと変わってしまうかどうか? に注意を払ってくださいということです。
一例として「暗黒の木曜日」のあった1929年は9月から異変が生じました。
またリーマン・ショックのあった2008年は、春先にベア・スターンズがJPモルガンに救済買収されるなど、不穏なムードがありましたが、本当にガラッとムードが暗転したのはレイバー・デー明けからでした。
2008年のS&P500指数(セントルイスFRBのデータからコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
もちろん、私は「レイバー・デー明けに、市場の急落が来る」と言いたいのではありません。ただ例年、9月はアメリカ株が1年のうちで最もパフォーマンスが悪い月として知られていることは、しっかりおさえておく必要があると思います。
金利政策が焦点
株価を決める2つの代表的な要因は企業業績と金利です。このうち企業業績については先月までに第2四半期決算が出揃い、S&P500採用銘柄の70%が一株当たり利益(EPS)でアナリストのコンセンサス予想を上回る決算を発表しました。これはリーマン・ショック以降で最高でした。
すると我々が次に注目しなければいけないのは、金利ということになります。
8月の下旬にワイオミング州ジャクソンホールで開催されたシンポジウムでは、イエレン議長が今年中に利上げをしたい意向をもっていることがシグナルされました。
但し、利上げの決断をするには、まず経済指標がしっかりしていることが前提になります。
先週の雇用統計
その意味では先週金曜日に発表された8月の雇用統計は、誠に微妙な数字であり、利上げの決め手にはならなかったと思います。
具体的には非農業部門雇用者数は予想18万人に対し、15万1千人にとどまりました。
非農業部門雇用者数(千人、米国労働省統計局のデータからコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
先物市場の参加者は、9月21日(水)に実施予定の次の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ確率を21%と見ています。言い直せば12月まで利上げはお預けということです。
これは一見すると株式にとってプラスのように思えます。しかし私は、かならずしも良いニュースではないと考えます。
その理由は、不確実性が12月まで持ち越されるからです。株式の投資家は不確実性を嫌います。だから(利上げする必要があるのなら、むしろ早くそれを済ませて欲しい!)のです。
一方、平均時給は8月も3セント(前年同期比で+2.4%)上昇しました。
平均時給(ドル、前月比、労働省統計局のデータからコンテクスチュアル・インベストメンツが作成)
つまり12月まで利上げを先送りしている間に、連邦準備制度理事会(FRB)が「後手に回る」リスクがあるのです。
イエレン議長は歴代のFRB議長の中でもとりわけコンセンサスを重視する人です。ジャクソンホール・シンポジウムに先がけて、苦心してコンセンサスを利上げの方向へ持って行きました。
しかし先週金曜日の非農業部門雇用者数の結果が中途半端な数字だったせいで、利上げのチャンスを失してしまった観があります。
このことが株式市場にどのような影響を与えるかを見極めたいと思います。