第3四半期決算発表シーズン到来
米国は第3四半期の決算発表シーズンに入っています。そこで今日は決算発表の前後に投資家がやっておくべきことについて書きます。
1年に4回ある決算シーズン
米国企業は四半期決算を採用しています。つまり3か月ごと、1年に4回、業績を報告するわけです。
大部分の米国企業はカレンダー・イヤーと会計年度が同じです。その意味するところは、1月1日から新会計年度が始まり、12月末に第4四半期が終わるということです。
この場合、1月から3月までを第1四半期、4月から6月までを第2四半期……という風に呼びます。
小売業の場合、クリスマス商戦が重要で、なおかつ年末年始のセールまで含めて「ひとつのシーズン」とみなすことが一般的なので、決算の〆を1月末にするところが多いです。
また企業によっては会計年度末を3月末や9月末に持ってくるところもあります。
このように、業種や個々の企業によって決算の〆のタイミングは必ずしも一致していないけれど、少なくとも1年に4回は自分の投資先企業の「健康診断」をする機会があるという点が重要だと思います。
決算発表が集中するのは:
1月第3週以降
4月第3週以降
7月第3週以降
10月第3週以降
です。
そこでまず皆さんにやって頂きたい事は、自分の投資している銘柄の決算発表日を知るということです。これはGoogle Financeで自分の投資している会社の株価を見るとき、そのページの右下に「Events」という項目があるので、そこで「Earnings Release」という日付を確認してください。
決算発表に臨む下準備
さて、決算発表日を確認したら、次にやってほしいことはコンセンサス予想を書き留めるということです。これはEPS(一株当たり利益)と売上高の両方について調べて下さい。
調べ方ですが、英語版ヤフー・ファイナンス(finance.yahoo.com)のサイトに行くと、一番上に四角い枠があり、「Search」というボタンがあります。そこに企業名、ないしはティッカーシンボルを入れます。たとえばアップルなら「Apple」、もしくは「AAPL」という具合です。
するとアップルの株価などを示したサマリー(Summary)ページが表示されます。その、Summaryと書いてある部分の右に、いろいろなタブが並んでいますが、その右端に(Analysts)というタブがあります。そこをクリックしてください。
これは「アナリスト予想」をまとめたページです。
太字のEarnings EstimateのところでCurrent Qtr.というのが、これから発表される四半期のEPS予想です。Avg. Estimateというのがコンセンサスの数字になります。
次に太字のRevenue Estimateを見てください。これは売上高予想になります。さきほどと同様、Current Qtr.のAvg. Estimateに注目します。これが売上高コンセンサス予想です。なお「B」とあればそれはBillion、つまり「10億ドル」を指し、「M」とあればそれはMillion、つまり「100万ドル」という意味です。
ここでEarnings EstimateとRevenue Estimateを調べる際、Current qtr.の右隣にNext qtr.の数字も出ています。こちらの数字も、EPSと売上高のそれぞれに関し、ついでに書き留めておいてください。
ここまでを整理すると下の表のようになります。
Current Qtr. | Next Qtr. | |
---|---|---|
Earnings Estimate (Avg. Estimate) | ||
Revenue Estimate (Avg. Estimate) |
つまり決算発表前に皆さんがやるべき下調べとは、これらの四つの空欄を埋める作業に他ならないのです。
次に、これらの数字をどう使うか?という点を説明します。
「良い決算」とは?
決算が発表されたら、その決算リリースでEPSと売上高を確認してください。なお、こまかい議論になりますが、これらの数字に「operating」という単語が書き添えてある場合があります。
ここでのoperatingとは「営業ベースの」という意味です。もしそう書いてあったら、必ずそちらの数字を使用してください。
これはどうしてか? というと会計報告に際しては、事前にアナリストが知る由もない特別な事情(例:訴訟費用や特別売却益など)で、決算の数字が嵩(かさ)上げ、ないしは実際より少なくなっている場合があります。それらは「雑音(ノイズ)」ですので、除去して考えなければいけないのです。
さて、ていねいに比較すべき数字を選り出したところで、いよいよ予め調べておいたコンセンサス予想と結果の数字を比較してください。
もし結果がコンセンサス予想を上回れば、それはポジティブ・サプライズ(positive surprise)です。逆に下回れば、それはネガティブ・サプライズ(negative surprise)です。
ここで「良い決算」を定義します。
「良い決算」とは:
1) EPSでコンセンサス予想を上回る
2) 売上高でコンセンサス予想を上回る
3) 来期以降の会社側ガイダンスがコンセンサス予想を上回る
の三拍子揃った決算を指します。このうち、ひとつでもクリアしてないものがあれば、それは「良い決算」ではありません。
なお3)のガイダンスは、上の表でいえば(Next Qtr.)部分に相当します。
どんなに急成長企業でも、期待を下回っていれば、売られる
個人投資家の皆さんからよく受ける質問に「売上高が前年比で+100%とか、そういう成長率は重要ではないの?」ということです。
もちろん、それは高いに越したことはないのですが、どれだけ成長率が高くても、投資家の事前の期待を下回っていれば、決算発表後に株価は売られます。
何が「織り込み済み」になっているのかが重要
これはどうしてか? と言えば、株価には先見性があるからです。
株価は将来の良いニュースを刻々と織り込んでゆきます。だから「売上高が前年比+100%……」ということも、すでに織り込み済みであれば、それはもうオドロキでは無いのです。
むしろそれが+100%に届かなかったときは、そうなることを期待していた向きの落胆を誘います。
言い換えれば、「コンセンサスがどこにあるか?」ということを知る作業は、「なにが織り込み済みになっているのか?」を知ることに他ならないのです。
大化け株発掘に近道は無い
よく「千里の道も一歩から」と言いますが、これはどんな偉大な事業も、まず手近なところから着実に努力を積み上げて行くことが必要だという意味です。
これは出世株にもあてはまることです。
毎回の決算で、上に書いたように「良い決算」をずっと出し続ける……そういう企業は伸びるし、株価も大化けするというわけです。
ですから自分が購入した株が、四半期の決算で毎回、コンセンサス予想を上回っているかどうかを継続的にチェックする習慣をつけてください。
よく自分の投資先を「継続フォローする」ことの重要性が言われますが、「継続フォロー」とは、具体的には今日、書いたような作業を指すのです。
言い換えれば、あなたが、毎回の決算で自分の保有株のコンセンサス予想が何処にあり、ちゃんとそれを上回ったことを確認していないのなら、ただ漫然とその銘柄のニュースを追っているだけでは「継続フォロー」していることにはならないのです。