そもそもなぜ日本株だけではダメ?
今日は「そもそもなぜ日本株だけではダメなのか?」という問題に立ち戻って投資というものを考えてみたいと思います。
私の考えでは、日本のみなさんが日本株に投資するということは、おおいに結構なのだけれど、それ「だけ」では不十分だと確信しています。
その理由は、突き詰めて言えば「それは、あなたの日常生活に即していないから」です。
そう書くと(ちょっと待って! 自分は日本に住んでいるから、日本企業こそが自分にとっての日常だ!)と皆さん思うに違いません。
本当にそうでしょうか?
われわれの生活に入り込む米国企業
たとえば皆さんはいま、私のこのコラムをiPhoneやMacで読んでいただいているのかもしれません。もしそうなら、それらはアップル(ティッカーシンボル:AAPL)の製品です。
たまたま検索してこの記事に辿りついたというのなら、それはグーグルの親会社、アルファベット(ティッカーシンボル:GOOGL)のサービスを経由したことになります。
あるいはフェイスブック(ティッカーシンボル:FB)やツイッター(ティッカーシンボル:TWTR)などのソーシャル・ネットワークでシェアされていた記事が目に止まったというのが、クリックした理由かも知れません。
これらのサービスや製品は、いずれも米国企業によって提供されています。
人生の限られた時間の中で、われわれが今日一日の時間のうちのどれだけを、どんな活動に振り向けているか?
その様子を観察すると、米国企業の関与比率は、確実に上がっているのです!
それらの企業は、クリック課金など、われわれが直接、気がつかない経路で売上高を上げています。その詳しいメカニズムについては、今日は論じませんけれど、要するに皆さんのアテンションをそれらの企業が獲得すればするほど彼らが儲かる仕組みになっています。
現代を象徴する真のインフラストラクチャとは?
スマホを取り出せば今日の天気やニュースなど、自分が知りたいことが、たちどころにわかる……これは我々の日常生活を支えている基礎的なサービスです。そのような基盤のことをインフラストラクチャと言います。
するとアップルやグーグルは、すでにわれわれの日常生活にとって、なくてはならない存在ですので、これは立派なインフラストラクチャです。
ちょっと話が脱線しますけど、ドナルド・トランプが大統領に当選したとき「大型インフラストラクチャ投資を行い、製造業の職をアメリカに戻す!」ということを打ち出しました。これに対し「トランプの経済観は、ちょっと前時代的じゃないか?」という批判がありました。
トランプの経済観に対する違和感の原因を追究してみると、それは比較競争優位に立脚した国際分業という「自然な成り行き」に抵抗する、ムリのある政策提言だからということになります。
つまりアメリカが圧倒的な生産能力を誇ったのは第二次大戦や戦後初期の頃の話であり、いまは「モノ作りの国」から「技術や知的所有権の国」への移行を完了しているのです。
だからいまさら「製造業をアメリカに戻す!」と主張したところで、そもそもアメリカの製造業の競争力は失われて久しいわけですから、それは経済原理を無視した、無駄に満ちた提案なのです。
もう一度、話を戻すと、アメリカが世界に構築したデジタル・インフラストラクチャこそ現代を象徴する真のインフラストラクチャであり、そのプラットフォームを彼らが握っているということは、とてつもない競争優位を彼らが握っていることを意味します。
でもそれはわれわれにとって悪い事だけじゃありません。
なぜなら、あらゆるインフラストラクチャが、広く社会全体に恩恵を及ぼすのと同様に、デジタル・インフラストラクチャの恩恵は私や皆さんも日常的に享受しているからです。
つまりグーグルなどのネット企業が我々にもたらす利便性は、国家という枠組みを超え、世界の消費者が受け取っているのです。
日本株の物足りなさ
結局、日本株で「何に投資しようかな?」と思案したとき、なにかワクワクする投資先が足らないぞと皆さんが思ったのだとすれば、それは上に書いたような皆さんの日常生活で愛用している製品やサービスと、「それを提供しているのは日本企業か?」の間にある齟齬(そご)、言い換えればギャップに起因すると私は考えています。
もっと辛い現実を直視すれば、いまの日本株には未来志向の投資対象が決定的に不足しているということです。
日本人として、これほど悔しいことはありません。
株価は将来を先取りします。だからこれから伸びてゆく企業をポートフォリオに組み込むというのは、投資家にとって欠かせない視点になります。
ふだん皆さんがやっている生活を観察すると、たぶん「モノ」の消費が占める割合は相対的に低下し、より「体験」や「つながり」に重きを置く消費態度へシフトしているはずです。これは情報化社会では当然の成り行きでしょう。
そしてそれらの「つながり」は、主にアメリカ企業によってもたらされているのです。