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モメンタム投資に要求される「強いメンタル」
モメンタム投資に要求される
「強いメンタル」
2017/06/30
モメンタム投資とは、現在の株価のトレンドが、今後も継続することを想定した投資手法です。モメンタムとは「勢い」を指します。トレンドとは、「傾向」という意味です。
「テクニカル分析の聖書」が説く、トレンドの重要性
アメリカの機関投資家が、「テクニカル分析の聖書」と位置付けている『先物市場のテクニカル分析』(ジョンJ.マーフィー)という本があります。その本は「テクニカル分析で最も大事なことは、トレンドという概念を、しっかりおさえておくことだ」と主張しています。またウォール街の格言に「トレンドはフレンド(ともだち)だ」というのがあります。トレンドが重要な理由は、ひとたびトレンドが形成されると、そのトレンドが崩れるより、継続する確率の方が高いからです。
株式投資はオッズ(確率)のゲームです。それはつまり、勝つこともあれば、負けることもあることを意味します。しかし少しでも「そうなる確率が高い」方へ繰り返し賭けることで、勝率をUPすることができるのです。上に述べたように、トレンドが形成されれば、それが持続する確率の方が高いわけだから、そちらに賭けた方が勝率は良くなります。
トレンドラインの引き方と、その信頼性
それではトレンドラインをどう引くか? ということですが、直近の安値①を起点に、次の安値②を直線で結んだものがトレンドラインです。
ここで重要な点は、単に二つの安値を結んだ線だと、その信頼性は低いということです。株価がトレンドラインに近づくことを「トレンドラインを試しに行っている」と表現します。③は、トレンドラインを試しに行き、ちゃんとそこで反発した例です。このように何度もトレンドラインを試し、トレンドラインを死守できた回数が多くなるほど、(そのトレンドラインの信頼性は高くなった)と解釈します。モメンタム投資家は、最低でも二回、トレンドラインを試し、それを死守した銘柄に投資します。そしてトレンドラインを割り込むことが無い限り、その銘柄を持ち続けるのです。
次に「売り時」としては④のようにトレンドラインを割り込んでしまったのを見届けて、そこで売るわけです。
モメンタム投資に要求される「強いメンタル」とは?
さて、ここまで書いてくると、読者のみなさんは(なんだ、モメンタム投資って、カンタンだな)と思うでしょう。
そうです。モメンタム投資のコンセプト(概念)自体は、あっけないほどシンプルです。
しかし、実際にモメンタム投資をやると、この「トレンドラインを下に破った瞬間に、売る」ということが、なかなか実行出来ません。
プロはトレンドラインが破られたら、すぐその銘柄から降ります。
これに対して、個人投資家の多くは、この大事な瞬間に迷いが出てしまい、売りタイミングを逃すことが多いです。つまりモメンタム投資にとって最大の敵は、(ま、いいか?)という投資家本人の心の弱さなのです。
アメリカで大きな富を築いた歴代のヘッジファンド・マネージャーには、スティーブン・コーエン、ラジ・ラジャナトナン、ジェフ・ヴィニックなどが居ます。彼らは、いずれもモメンタム投資で成功しました。
彼らは、上の④のような局面では、すぐに持ち株を処分しました。
個人投資家が(ま、いいか?)と迷っている間に、ヘッジファンドから怒涛の売り注文がやってくるのです。
あなたは、そのような圧倒的な売り圧力に立ち向かう愚行を犯していませんか?
よく「メンタル(精神)を鍛える」と言った場合、「売らずに耐える」ことだと勘違いしている人がいます。
それはバリュー投資にはあてはまるかもしれません。しかしモメンタム投資にはあてはまりません。
モメンタム投資は、そもそもトレンドラインに惚れて投資するスタイルなのですから、トレンドラインを割り込んだ株は、「買い理由」を喪失した銘柄に他なりません。
このような局面で、アタマを咄嗟に切り替えて、損切りできる精神力の強さこそがモメンタム投資に要求される、「強いメンタル」なのです。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。