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テーマ投資とは何か?
テーマ投資とは何か?
2017/07/14
テーマ投資(Thematic investing)は新しい流行や経済の傾向の大局観をまず把握し、その流れに沿った投資対象だけを選別することにより、平均以上のパフォーマンスを得ようとする投資手法です。
新しい流行の例で言えば、「自動運転車」、「人工知能(AI)」、「バーチャル・リアリティ(VR)」などが挙げられます。
経済の傾向の例で言えば、「トランプ・トレード(=トランプ大統領の登場により恩恵をこうむると思われる銘柄群)」や「ニュー・ノーマル(=経済の低成長、低インフレが常態化すること)」などが挙げられます。
テーマ投資とマルチプル・エクスパンション
テーマ投資が優れている第一の理由は、流行は初心者にもわかりやすいという点です。
株式投資では自分の考えに同調する人、自分のトレードを模倣する人が出れば出るほど株価が上がります。
わかりやすいテーマは、多くの投資家に受け容れられるので、おのずと人気化しやすいです。
いま、株式市場全体の動きで説明し切れない好パフォーマンスのことを投資の専門用語でアルファ(α)と称しますが、テーマ投資は、比較的容易に「アルファを出せる」ことで知られています。
テーマ投資では、往々にして、その投資対象に「新しい評価」が生まれます。
言い換えれば、これまでの、その投資対象に対する見方とは違った、より積極的に「将来性を買う」投資態度が投資家の中に芽生えるのです。
そのような局面では「過去の経験では、この銘柄の株価評価のレンジの上限に来ているけれど、今回は特別なテーマが株高の背景にあるので、もっと高い評価を付けても良いはずだ」式の、割高なバリュエーションの容認が起こります。
これを投資の専門用語では「マルチプル・エクスパンション」と言います。
マルチプル・エクスパンションが起きている局面では、面白いように株価が上昇するので、効率よく儲けることが出来ます。
テーマ投資の落とし穴
しかしテーマ投資の弱点は、そのストーリーの賞味期間が、短いのか、長いのか? 誰にもわからない点にあります。
実際、ストーリーの賞味期間が短かった例は、山ほどあります。
具体的にはウェアラブルの流行は短命に終わりましたし、3Dプリンターも下火になっています。
またバーチャル・リアリティ(VR)のように、幅広い普及が、いつまで経っても起こっていない例もあります。
マルチプル・エクスパンションが起きているということは、とりもなおさず、実際の業績の伸長を伴わず、株価だけが「出世払い」のように一足先に上昇することを意味するので、流行、ないしは人気が剥げたら、その分、下げもきついです。
つまり(流行は、終わったな)という見切りがしっかり出来ないと、テーマ投資では大損するリスクがあるということです。
テーマ投資と業績
なお、投資テーマが本当に我々の日常にインパクトを与え、「社会が変わる」のであれば、そのときは関連する企業もビジネスが増え、儲かっているはずです。
つまり賞味期間の長い、ホンモノの投資テーマなら、それはある程度のタイムラグはあるかもしれないけれど、いずれ企業業績にハッキリ反映されてこないとおかしいわけです。
言い換えれば、テーマだけは立派だけれど、業績がいつまで経ってもついてこないという場合は、警戒した方が良いです。
まとめますと、
テーマ投資は新しい流行や経済の傾向を大局的に捉え、投資する手法を指します。
流行は初心者にもわかりやすいので、この投資手法はとっつきやすいです。
またテーマ投資は、比較的容易にアルファを出せる手法として知られています。
将来性を買うという性質上、マルチプル・エクスパンションが起こりやすいです。
その反面、投資ストーリーの賞味期間は短命に終わる場合もあるので注意が必要です。
人気が剥げたら、下げもきついです。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。