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米国のネット企業の動向

米国のネット企業の動向

2017/08/04

今回は米国のネット企業の動向について述べます。まず総論ですが、大手ネット企業の業績は概ね好調です。大手ネット企業の寡占は、いっそう強まっている観があります。

1 フェイスブック

フェイスブック(FB)は、いま課金戦略がたいへん順調に展開しています。とりわけモバイル動画広告への注力が、良い成果を生んでいます。これを受けて同社のフリー・キャッシュフローは力強い成長を見せています。

フェイスブックのフリー・キャッシュフロー(百万ドル、フェイスブック)

フェイスブックはFacebookの他にInstagram、WhatsApp、Messengerなどのプラットフォームを展開しています。 このうちInstagramは、いま広告主がどんどん増えています。Instagramは、もともと画像・映像を中心としたプラットフォームなので、ブランド広告とすこぶる相性が良いです。とりわけInstagram Storiesは、新鮮な切り口でユーザーに訴求できると広告主に好評です。

つまりフェイスブックの場合、Facebookでの成功を、これらの新しいプラットフォームで次々に再現すれば、当分の間、成長の鈍化を回避できるのです。

フェイスブックの第2四半期の決算カンファレンスコールでは、殆どの時間が広告ならびにマーケティングに関するディスカッションに費やされました。これは同社の業績が好調なことを裏付けていると言えます。

会社側が強調していたことは、先ず幅広いユーザー・ベースを獲得すること。つぎにユーザーがオルガニックにブランドと直接、やりとりできるようにすること。そして最終的にはユーザーがどれだけブランドと質の高いやりとりをしているか?がマネタイゼーションの可能性の大きさを決定するということです。

2 アマゾン

アマゾン(AMZN)は高水準の先行投資を続けています。先の第2四半期決算でEPSが予想$1.39に対し、僅か40¢にとどまったのは、そのためです。

具体的にはアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のためのソフトウェア・エンジニアを大量採用しているほか、AWSの営業マンも積極採用しています。

AWSは5月に値下げを実施しました。インフラストラクチャの追加、新地域への進出費用などによりAWSのマージンは下がっています。

次に配送センターに目を転じると、今年のキャパシティ追加の8割が、今年下半期に集中する予定です。

消費者が自分で商品をピックアップする「アマゾン・ゴー」、1~2時間以内に配達する「プライム・ナウ」、生鮮食料品を配達する「アマゾン・フレッシュ」など、斬新な配送形態を実験中です。そのことは、それらに対する先行投資が続くことを意味します。

さらにフルフィルメント・バイ・アマゾンも好評で、+40%で成長していることから、今後も投資負担は大きいままで推移すると思われます。

一方、ビデオ・ストリーミングでは、オリジナル・ドラマに対し、引き続き高水準の先行投資を行っています。

第3四半期の営業利益が、予想9.5億ドルに対し、新ガイダンス−4億ドルから黒字の3億ドルへと大きく引き下げられたのは、上のような理由によります。

3 アルファベット

グーグルの親会社、アルファベット(GOOGL)は1)ユーザーのモバイルへのシフトと2)動画広告へのシフトという二つの大きなトレンドの中で、上手くその流れに乗っています。

しかしモバイル広告は単価が安いため、モバイルにシフトすればするほど全体としての広告単価(アグリゲート・コスト・パー・クリック)は下落します。

アルファベットのアグリゲート・コスト・パー・クリック成長率(前年比、%、アルファベット)

幸い、クリック数はこれを補って余りあるほど成長しています。

アルファベットのアグリゲート・ペイド・クリック成長率(前年比、%、アルファベット)

今年に入ってからブランド各社が「わが社の広告が不適切なサイトに表示されているのを何とかして欲しい!」という苦情をグーグルに寄せました。

グーグルは広告出稿者の管理ツールを改善する、不適切なサイトにはアドセンスの報酬を払わないなどの措置を講じました。さらに不適切なコンテンツを含む心配のない大手サイトにより多くの広告を表示するようにしました。

これらの措置によりブランド各社の離反はかなり食い止めることに成功したものの、それらの大手サイトはグーグルの広告を表示する際に要求するコスト(=それをTAC:トラフィック・アクイジション・コストといいます)が高いので、広告売上高に占めるTAC比率は去年同期より1パーセンテージ・ポイント高い22%になりました。これがアルファベットの営業マージンは去年同期の27.8%から26.4%へ下がった理由です。

4 ネットフリックス

ネットフリックス(NFLX)は目先の利益を犠牲にして、積極的に新規加入者を取りに行く戦略を続けています。とりわけ海外市場では、いまどんどん加入者が増えており、ついにアメリカ国内の加入者より、海外の加入者の方が多くなりました。

第2四半期の海外新規加入者数は予想260万人に対し、414万人でした。海外総加入者数は5,203万人になりました。

一方国内新規加入者数は予想142万人に対し、107万人でした。国内総加入者数は5,192万人でした。

第2四半期の営業マージンは4.6%でしたが、第3四半期はこれが6.9%に増え、ゆくゆくは8%を目指すというガイダンスが示されました。

つまり目先は魅力あるTVシリーズを制作するため、高水準の先行投資を継続しているわけですが、だんだんユーザー・ベースが拡大するに従い、利幅が拡大すると見ているわけです。

5 ツイッター

ツイッター(TWTR)はユーザー成長率が伸び悩んでいます。加えて課金戦略も思うような成果を上げていません。

先の第2四半期決算では、平均マンスリー・アクティブ・ユーザー(MAU)成長は+5%にとどまりました。現在のユーザー数は3.28億人です。

売上高成長率は前年比−4.7%でした。

フェイスブックの第2四半期の売上高が93.2億ドルであることを考えると、今期のツイッターの売上高5.74億ドルというのは、ものすごく差がついてしまった観があります。

言い換えればツイッターは、広告主が広告を出稿する際、「戦略的に重要でない」と判断されることが多くなっているのです。

この状況を克服するためには、まずユーザー数を伸ばすことが必要ですが、肝心のユーザー成長は頭打ちなので、打開策が見えない状況となっています。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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