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アセット・アロケーションについて
アセット・アロケーションについて
2017/08/18
アセット・アロケーションの日本語は「資産配分」です。
なぜアセット・アロケーションは重要なのでしょうか?
それは「未来は、誰にもわからない」からです。
百戦百勝ならアセット・アロケーションは必要なし!
もし「次に騰がる株」を毎回、ピッタリと言い当てることが出来るのなら、アセット・アロケーションは必要ありません。単純に、次に騰がる株を買えば、それでオシマイです。
しかし、ある程度投資をかじった人なら、そのような「百戦百勝」という主張が、どれだけ嘘っぱちか痛いほどわかっているでしょう。
現実には、相場観や銘柄選択は、当ることもあるし、はずれることもあるのです。
そこで(当たることもあれば、はずれることもある)という事実を前提に投資を進めるのなら、ハズレから受けるダメージを限定するスキルを体得せねばなりません。
このスキルこそが、アセット・アロケーションの考え方なのです。
具体的には「銘柄分散すれば、個別株でハズレくじを引くリスクを、ある程度、制御できる」ということです。
ノーベル賞を取った考え方
1952年に、当時若干25歳だったシカゴ大学の大学院生、ハリー・マーコウィッツが「ポートフォリオ・セレクション」と題された、革命的な学術論文を書きます。
この学術論文は、たった14ページの、サラッとした論文ですが、その後の学術研究やウォール街での運用の実務をガラッと変える、画期的な提言を含んでいました。
その提言とは、「リスクは高い投資リターンを得ようと思えば避けて通れない。そしてポートフォリオ・リスクは分散投資を心掛けることである程度手なずけることができる。また個々の株のリスクよりも、ポートフォリオ全体としてのリスクを調整することのほうが大事だ」というものです。
マーコウィッツは1959年にノーベル経済学賞を受賞します。(正確には「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞」)
マーコウィッツがその論文の中で具体的に示した例は、「いま自分のポートフォリオの中にひと銘柄だけしか保有銘柄が無ければ、その保有銘柄に何か悪材料が出た時、ヤラレになるリスクはとても大きい。しかし保有銘柄を二つにすれば、そのうちの一つの銘柄が悪いニュースを出すことによってポートフォリオ全体が受けるダメージは、大幅に軽減される。さらに保有銘柄を三銘柄に増やすと、個々の銘柄のリスクはもっと下がる」ということです。
ただ、そのようにして銘柄をどんどん追加してゆくと、さらに銘柄を追加することによって得られるリスク軽減効果は、だんだん小さくなる、つまり漸減(ぜんげん)します。
すると、ある程度銘柄数が増えてしまうと、むやみに銘柄を増やすメリットは無くなるということです。
性格の異なる資産に分散すること
さて、折角、複数の銘柄を保有してもそれが全て同じ業種に属する企業なら分散は万全ではありません。
分散する際には、性格の異なる資産を併せ持つことを心掛けてください。
たとえばフェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、アルファベットの四企業は、その頭文字を取って「FANG」と総称されますが、これらの銘柄は殆ど同じ動き方をします。するとこの四銘柄だけを持っていたのでは、十分なリスク分散ができたことにはならないのです。
むしろインターネットとは無縁のビジネス、たとえば石油会社のエクソン・モービルや日用品のジョンソン&ジョンソンを併せて持てば、これは性格の異なる資産に分散したことになります。
ようするに「幕の内弁当」のように、いろいろな彩(いろどり)があった方が、おかずがひとつしかないよりも、ポートフォリオとしての質は高いのです。
さて、アセット・アロケーションの話をすると決まって話題になるのがリバランスという概念です。
リバランスとは「再びバランスを取る」という意味です。
それでは具体的にリバランスで何をやる? ということですが、これは単純な言い方をすれば「一番勝っている投資先を少し減らし、他へ資金を割り振り直す」ことを指します。
このアプローチに対しては、抵抗感を覚える読者も多いと思います。
「なぜ一番上手くいっている投資先を減らすの?」という声が、聞こえてきそうです。
実際、ある銘柄やセクターが勝ち始めると、それがどんどん勝ち続けることが多いので、あまり早くリバランスをかけてしまうことに私は賛成しません。
しかし、リバランスが必要になる時というのは、そういう勝ちが長く続いた結果、ポートフォリオが偏ってしまった場合です。
たとえばネット株が勝ち続けて、ポートフォリオ全体に占めるネット株の比率が極端に大きくなってしまったとします。その場合、もしネット株に急落が来たら、こっぴどくやられてしまいます。
このようにリバランスというのは、あくまでも「勝ち過ぎによるポートフォリオの歪(いびつ)」を是正する行為として行われるべきことなのです。
見直しの頻度としては、1年に1回程度のリバランスで十分だと思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。