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ADR(米国預託証券)を利用し世界に投資しよう!
ADR(米国預託証券)を利用し世界に投資しよう!
2017/09/15
ADRはAmerican Depositary Receiptの頭文字をとったもので、米国預託証券と訳されます。
ADRとは?どんな銘柄がある?
ADRはAmerican Depositary Receiptの頭文字をとったもので、米国預託証券と訳されます。早い話、アメリカの取引所に上場されている、アメリカ以外の国の個別株だと思ってください。取引はドル建てで、米国株とまったく同じ感覚でトレードできます。
具体的に、どんな銘柄が上場されているのでしょうか? 下は代表的なADRのサンプルです。
国名 |
銘柄名 |
コード |
事業内容 |
---|---|---|---|
中国 |
BABA |
インターネット関連事業 |
|
中国 |
BIDU |
インターネット関連事業 |
|
中国 |
CTRP |
インターネット関連事業 |
|
中国 |
EDU |
教育事業 |
|
中国 |
JD |
インターネット関連事業 |
|
中国 |
WB |
インターネット関連事業 |
|
中国 |
YY |
インターネット関連事業 |
|
インド |
HDB |
銀行 |
|
インド |
INFY |
アウトソーシング |
|
インド |
TTM |
自動車メーカー |
|
インド |
VEDL |
鉱業 |
|
ブラジル |
ABEV |
ビール |
|
ブラジル |
BAK |
化学 |
|
ブラジル |
BBD |
銀行 |
|
ブラジル |
BSBR |
銀行 |
|
ブラジル |
ERJ |
航空機製造 |
|
ブラジル |
FBR |
製紙業 |
|
メキシコ |
BSMX |
銀行 |
|
南ア |
AU |
産金会社 |
|
南ア |
GFI |
産金会社 |
|
南ア |
HMY |
産金会社 |
|
南ア |
SSL |
化学 |
|
英国 |
DEO |
アルコール飲料 |
|
英国 |
SNN |
医療機器 |
|
英国 |
UL |
日用品 |
なぜADRを発行する?
さて、中国やインドにも株式市場は存在します。すると上のリストにあるような企業は、なぜわざわざADRをアメリカで発行するのでしょうか?
まずアメリカの投資家は世界で最も大きな運用資産を持っています。したがって多額の資金調達をする場合、本国市場よりアメリカでADRを出したほうが有利です。
つぎに本国の投資家だけでなくアメリカの投資家に自社の株を保有してもらうことで株主の分散を図ることができます。
さらにアメリカに株式を上場することで、取引先企業への信用をUPすることが出来ます。加えて一般消費者への認知度を向上することもできます。さらにアメリカで人材を採用するとき、優秀な人材を採用しやすくなります。
またインターネットのようなセクターでは、アメリカにその業界に詳しい投資家が集中している関係で、アメリカで上場した方が有利な値段で資金調達することができます。
投資家がADRに投資するメリット
次に投資家目線でADRに投資するメリットを考えてみましょう。
まずADRを出している企業はその国を代表する優良企業が多いです。
次にADRを出している企業は情報開示が充実しています。
米国でADRを上場し、資金調達する場合は、アメリカの証券取引委員会(SEC)の審査を受ける必要があります。これはハードルが高いだけに、それをクリアした企業には安心感があります。
最後にアメリカで上場すると株主権利の擁護などの点で厳しい注文が付けられます。
今年は米国以外の世界の市場のパフォーマンスが総じて良いです。新興国も好調です。わけても中国のインターネット企業は株式市場における存在感をどんどん増しています。中国のインターネット企業の多くは、中国や香港ではなく、米国に上場しています。
これらのことから、主に中国株に投資している投資家でも、最近は中国本土市場や香港市場に加えて、米国の中国株ADRにも投資せざるを得なくなりつつあります。
インドはモディ政権が経済改革に取り組んでいます。近年はGDP成長率で中国をしのぐ勢いで成長しています。現在のインドの法律では外国の個人投資家が直接インド株に投資することは出来ません。許されているのはETF(上場型投信)かADRのみです。
ブラジルは汚職事件で政治がごたごたし、長期に渡って低迷してきましたが、ようやくティメル大統領の汚職疑惑が鎮静化し、経済改革に集中できる環境が整いました。ティメル政権は大胆な経済改革、民営化プログラムを打ち出しており、株式市場は出直る様相を見せています。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。