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エジプトの例から学ぶ新興国投資で気を付けるポイント

エジプトの例から学ぶ新興国投資で気を付けるポイント

2017/09/29

先日、国際通貨基金(IMF)がエジプトに関する報告書を発表しました。エジプト経済は、去年まで悪化していて、IMFの指導の下、体質改善に乗り出しました。

1 IMFのアドバイス

先日、国際通貨基金(IMF)がエジプトに関する報告書を発表しました。エジプト経済は、去年まで悪化していて、IMFの指導の下、体質改善に乗り出しました。

この報告書は、我々が新興国へ投資する際のリスクや、体質改善のための処方箋が「てんこもり」になっており、ケーススタディとして絶好の教材を提供しています。

そこで今日はエジプトの例から、我々が新興国投資をする場合、気を付けるポイントを解説したいと思います。

IMFはエジプトに対して、「次のようなことが必要です!」とアドバイスしました。

為替の過大評価を是正する
それにより国際収支を改善させる
外貨不足を解消する
財政赤字を減らす
政府負債の増大に歯止めをかける
低成長からの脱却
高失業率を減らす

これに応えるカタチでエジプトは2016年11月にエジプト・ポンドを変動相場制に移行しました。そしてエネルギー補助金の縮小、付加価値税(VAT)の導入、金融の引締めなどを次々に打ち出しました。

2 ショック療法の成果は?

今回のIMFの報告書は、そうした一連の改革に対する「通知表」だと受け止めることができます。その中でIMFは「これまでのところ、エジプトの経済改革は順調な滑り出しを見せている」と高く評価しています。

具体的には、当初IMFが予想していたエジプトの2016/2017年度のGDP 成長率3.5%が、4.2%に上方修正されました。しかも四半期ベースでは、尻上がりにGDP成長が改善し、直近では5.0%まで加速しました。

産業セクター別では、製造業、建設業、小売業、運輸業など、幅広いセクターで活動が加速しました。

また従来存在した「公式レート」と「闇レート」の二重レート構造は完全に解消しました。

海外から再び資本が流入しはじめ、輸出が増え、輸入が減った関係で、外貨準備は増加に転じています。

エジプトのGDP(%、IMF)

さらに付加価値税(VAT)の導入で徴税基盤が拡充されました。エネルギーへの補助金の縮小は今後財政赤字を減らすのに貢献すると思われます。

エジプトの基礎的財政収支(GDPの%、IMF)

3 新興国投資の良い面、悪い面

ここでもう一度、新興国投資のキホンをおさらいしておきたいと思います。

一般に新興国は先進国よりGDP成長率が高いです。例えば2009年までの過去25年間のGDP成長率は、先進国が2.9%であるのに対して新興国は4.4%でした。(出典:IMF WEO)

新興国は人口の増加率が先進国より高く、人口動態を見ても若者が多いです。

新興国は資本市場が先進国より充実しておらず、新興国の産業界は常に「資本に飢えた」状態に置かれています。それは先進国より高い投資リターンを期待することが出来ることを意味します。

このように新興国投資には魅力がある一方で、リスクもあります。

リスクの第一番目として国内資本市場が小さいので、海外から投資資金が流入すると市場が急騰する反面、新興国通貨が強くなりすぎ、それは輸出競争力の減退を招きます。

新興国通貨が過大に評価されると、それは「身の丈以上」の消費を助長し、国際収支の悪化を招きます。これが先に述べた輸出競争力の減退と合わさると、外貨不足の状態を引き起こします。

新興国政府は放埓な財政でも簡単に借金できるので、財政赤字を放置し始めます。そして政府債務は増大しやすいです。

為替の過大評価で国際競争力が殺がれると、だんだん不景気になり、高失業率が常態化してしまいます。

このような状態が続くと、新興国では次のようなことが起こります。

【新興国投資の赤信号】

  1. 1.輸出額が直近のピークより金額ベースで5%以上落ち込む
  2. 2.経常収支が赤字で、しかも赤字幅がだんだん拡大する
  3. 3.外貨準備がどんどん減少する

このようなサインが出たら、すぐにその国への投資をSTOPしてください。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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