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FOMO(取り残される恐怖)が正当化されるケース 取り返しのつかない事になるまえに
2018年の投資戦略
2018/01/16
最近、FOMOという言葉をよく目にします。
FOMOとはFear of Missing Out.の略で「取り残される恐怖」を指します。これは主にネット依存症を論じる際に使われる表現です。たとえば高校生は、自分だけが友達のグループから仲間はずれにされているのではないか? とか、自分の知らないところで友人たちが楽しく過ごしているのではないか? という不安に駆られ、SNSをひっきりなしにチェックするということをします。これがFOMOです。
株式市場にもあるFOMO
最近は株式市場のコメンテーターもFOMOという言葉を多用します。つまり自分が株を買っていなければ、相場に取り残されるのではないか? というわけです。長期に渡る強気相場の末期に、このようなことが論じられることが多いです。
もちろん、相場に取り残されるという現象は、今日にはじまったことではありません。それは昔からありました。しかし、昔はそれを「買わない恐怖」という風に表現していただけです。
一般に株式市場では「買わない恐怖」云々が言われ始めたときは、相場の天井が近いと言われます。その意味では、最近、やたらとFOMOという言葉を目撃することは、相場の天井が近いのかもしれません。つまりFOMOと言う言葉が乱発されているのは、危険なシグナルなのです。
しかし……
FOMOと言う本能的行動が、正しい場合もあります。それが正しいときとは、超長期での個人の資産形成の局面です。
超長期での個人の資産形成とつみたてNISA
貯金や資産形成は(そんなの、いつでも始められる)と思う人が多いです。つまり上で述べた(友達に仲間はずれにされる)とか(相場に乗り遅れる)といった切迫感を伴わないケースが殆どだということです。
しかし貯蓄や投資は、若い頃に始めた方が圧倒的に有利です。なぜなら投資は「複利の効果」などにより、長く続けるほど資産を大きくはぐくみやすいからです。
今年からつみたてNISAという制度がスタートしました。これは主に若者を対象とした貯蓄・投資奨励制度です。そこでは20年という長い期間に渡って税控除の扱いを受ける事が可能です。
普通、ウォール街のアナリストは2年以上先の企業の業績を予測することは不可能だと言われています。つまり未来を予言することは、とても難しいことなのです。だから20年も先ということになると、どの個別株が良いかを予想するのは全く意味が無いとすら言えるでしょう。
さらに20年もの歳月が経つ間には、不況の1回や2回は訪れてもおかしくないし、その過程で倒産する企業や酷い弱気相場に呑み込まれる国が出てくることは容易に想像できます。
「世界の株式に投資する」など広範囲なファンドを選べ!
だからつみたてNISAで皆さんが選ぶべき商品は「世界全体の株式市場に投資するファンド」のような、きわめて広い投資対象を持つ商品でなければならないのです。
そのようなファンドを買うと、折角、どこかの国の株式市場のパフォーマンスが良くても、かならずパフォーマンスの悪い国が出てくるので、相殺されて、いつも退屈なリターンしか得られないという現象が起きます。
しかし、この退屈な投資をコツコツと継続してゆけば、20年経って振り返った時、どえらい差がつきます。
つまり「ウサギとカメ」のレースのようなことが起きるのです。
つみたてNISAのような商品は、エキサイティングではないので、投資家から馬鹿にされがちです。
しかし退屈で、急がなくても良い、後回しにされやすい商品だからこそ、新登場した今、急いで自分の生涯設計に採り入れるべきです。
つみたてNISAに関しては、FOMOの切迫感を持ってください!
そうしないと、本当に20年後に取り返しのつかない差を付けられてしまいますから。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。