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新高値銘柄を買いに行くやり方
新高値銘柄を買いに行くやり方
2018/03/13
今回は新高値を更新した銘柄を、その水準から新たに飛び乗り買いする手法について書きます。
新高値銘柄を買いに行く
今回は新高値を更新した銘柄を、その水準から新たに飛び乗り買いする手法について書きます。このアプローチは、私自身、忘れられない思い出のある手法です。そこで本題に入る前にまずそのへんからお話ししましょう。
私は1982年に大学を出て、最初は建設会社に入り、その後、中東などでプラント建設の仕事に従事しました。1980年代の半ばになると原油価格の暴落でプラントの仕事がパッタリと無くなったので、ちょうど当時起こりはじめていた「銀行よサヨウナラ、証券よコンニチハ」という証券ブームに乗るかたちで、ある準大手証券に中途採用で潜り込みました。同僚より4年道草を食った関係で、配属された日本株国際営業部でどん尻の「新入り」でした。
証券外務員試験を合格点スレスレの低空飛行でなんとかクリアし、見よう見まねで営業を始めて間もない頃、歳は同じくらいだけれど、経験としては私よりずっと上の同僚から、注意を受けました。
「こら広瀬っ!おまえ、新値の株を売って、どうすんねん? 新値は売ったらあかん! 新値は、買いや!」
まだ株と債券の違いすらわからないほどド素人の自分が、同僚に大声で叱られたので、これは堪えました。
しかし……いま思い返してみると、これほど親身な、そしてズッシリと価値のあるアドバイスは無かったように思います。
新値というのは、過去最高値を指します。過去に一度も付いたことのない値段が、ある株に付く……それは大袈裟な言い方をすれば「前人未到の世界に歩み出てゆく」ことに他なりません。そんな冒険をおかしてまで、上値を買い上がるということは、重大な何かが、その株に起こっており、その関係でこれまでと違う、全く新しい評価が生まれている瞬間だと理解できるのです。
こういう場合、株価はさらに勢いをつけることが多いです。その一つの理由は、年季の入った投資家ほど、そういう事情をよく心得ており、新値を更新したところから、新しく買い始めることが多いからです。
また需給関係から言えば、株価が過去最高値の水準にあるということは、とりもなおさず、その株に投資して含み損を抱えている投資家が皆無だということを意味するので、「戻り待ちの売り」というような売り圧力は存在しません。
それらの事情から、新高値をとった銘柄は、値運びが急に軽くなる場合が多いです。それを「新波動入り」という風に表現することもあります。
新高値銘柄に飛び乗る時の注意
さて、新高値銘柄に飛び乗るということは、「高くなっている株を買う」行為に他ならないわけですから、「割安なので買う」という切り口は通用しません。割高でも、勢いがあるから、その株を買うのです。そういう買い方をモメンタム投資と言う場合もあります。
モメンタム投資では上がっている株を買うのが鉄則です。
またモメンタム投資で「買い増し」を考えるべき時とは、その株が下がったときではなく、その株が自分の買い値よりさらに上昇し、まんまと利食いになった時でなくてはいけません。つまり強気の買い乗せです。
逆に買って直ぐに利が乗らない場合は、あなたのやっていることが何か間違っているリスクがあるので、ピリピリ警戒しながら、自分の持ち株の動きをフォローしてください。言い換えれば、「エイヤア!」と気合で飛び乗ったポジションは、最初の数日が勝負だということです。最初の数日のうちに利が乗りはじめなければ、ポジションを処分する心の準備を始めてください。損切りは、早ければ早い方が良いです。
さらに言えば、新高値銘柄を買う際の切り口は「勢いがいい」ということである以上、株価収益率(PER)、配当利回り、株価純資産倍率(PBR)などのバリュエーション尺度は無視してください。
つぎに首尾よく利が乗り始めた場合のポイントを書きます。
まずその株が自分の買い値よりさらに上に行き、新値を更新している間は(もうそろそろだろう)という自分の勝手な思い込みから慌てて降りることはしないでください。モメンタム投資では株価が上がっている局面で売るのはまずいです。むしろモメンタムが衰えてくる瞬間に気をつけてください。特に大きな出来高を伴い株価が大きく下げたら、いつでも売れるように心の準備をしてください。そういう場合でも、直ぐに株価が持ち直すケースもあります。その場合は粘って、未だ売らないで下さい。つぎに再び大きな出来高を伴って株価が大きく下げる日が出たら要注意です。このようなアクションを数回続けるうちに、気がついたら株価はダウントレンド入りしていた……というようなケースが多いです。
もし売りタイミングに関して確信が持てないなら、自分のポジションの半分だけ売るというやり方もできると思います。
自分のスタイルを見直す
さて、今日、紹介したような手法を(軽薄なやり方だな)と感じる読者も居ることと思います。なにを隠そう、そういう私も、新値を買うアプローチは食わず嫌いで、ずっと馬鹿にしてきました。でも(自分はバリュー投資家だ)と自負しつつも、なぜか周りの人は儲かっているのに自分だけは成果が出せていないというケースも多々あります。
そういう場合、自分の保有銘柄の一部を「新値を買う」やり方に変えてみてはどうでしょうか?
するとたちまちポートフォリオのパフォーマンスが改善する場合もあるのです。
これはどうしてかというと、人間、自分のことは自分が一番わかっているようで、実はそうではない事もあるからです。私の場合は、勝手に(自分はバリュー投資が好きだ。だから自分はバリュー投資に向いているはずだ)という風に思い込んで、頑迷にその考えを変えない時期がありました。しかし客観的に見ると自分は投資で好成績を出せていないわけです。そんなとき、モメンタム投資に切り替えてやると、(なんだ、自分はこっちの方が遥かに向いているな)と言う風に、自分自身の適性を発見するわけです。
大事なことは、心を開いて新しいアプローチにも挑戦し、あとは投資成績を見て客観的に自分に向いているスタイルを悟ってゆけばいいのです。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。