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テンバガー(10倍株)発掘のためにやってほしいこと
テンバガー(10倍株)発掘のためにやってほしいこと
2018/7/13
テンバガー(ten bagger)はウォール街独特の表現で「10倍株」を指します。ここでのbaggerはbag、つまり袋を指し、「獲物を捕獲して袋に押し込む」イメージです。
一体、我々はどうすればテンバガーにぶち当たることが出来るのでしょうか?
今日はそのことについて書きます。
「良いストーリー」は浜辺の砂ほど無数にある
10倍に化けるような出世株は、何か特別に良いストーリーがあるに違いない……我々はテンバガー発掘に乗り出すにあたって、ついそう考えがちです。
しかし投資家が見落としがちなのは、「良いストーリー」は浜辺の砂ほど無数にあるという事実です。テンバガーに成長する銘柄は、ごく一握りですから、大半の「良いストーリー」の銘柄は、途中でテンバガーのレースから脱落するわけです。
したがって、我々が問うべきことは、まず「企業は、一体、いつ、どのようにしてテンバガーのレースから脱落するのか?」ということです。
アメリカの上場企業は四半期に一度、決算発表を義務付けられています。四半期の決算発表シーズンは1月中旬、4月中旬、7月中旬、10月中旬の年四回やってきます。決算発表の日時は個々の企業によって違います。いまは7月中旬ですから、ちょうど6月で〆た2018年第2四半期の決算発表シーズンが開幕しようとしているわけです。
結論を言えば、この四半期決算で投資家を落胆させる企業は、テンバガーのレースから脱落します。だから我々は「最後まで残っている、しぶとい奴」を探さないといけないのです。決算発表が1年に4回しか回ってこないことからもお分かり頂ける通り、「最後まで残っている、しぶとい奴」を発掘するためには長期に渡ってそれらの企業を観察しなければいけないのです。
決算の継続フォローはアメリカの機関投資家の大半が励行していることです。
だから皆さんもかならずやる習慣をつけてください。
決算のどこを見る?
それでは四半期決算が発表されたとき、具体的にどこを見れば良いのでしょうか?
これはカンタンです。四半期決算では:
(1)一株当たり利益(EPS)がコンセンサス予想を上回っているか?
(2)売上高がコンセンサス予想を上回っているか?
(3)会社側ガイダンスがコンセンサス予想を上回っているか?
この3つが全て予想以上の場合のみ、「今回の決算は、良い決算だった」と結論付けることが出来ます。これらの項目のうちひとつでも予想を下回ったら、それは「決算のとりこぼし」、つまり失敗を意味します。その時点で、その株はテンバガー・レースから脱落したと考えてほぼ間違いないです。
それでは具体的にどこを見ればコンセンサス予想を知ることができるのか? ということですが、私の場合、英語版ヤフー・ファイナンスの個別株ページのうち「Analysis」というページを利用しています。
下はその一例です:
https://finance.yahoo.com/quote/INTC/analysis?p=INTC
(外部サイトへ遷移します。)
なお、自分の好きな銘柄を探すときは右端の「Quote lookup」にティッカー・コードを入れれば良いです。
この表中、Earnings estimateの1列目「Current Qtr.」の2行目「Avg. estimate」が、今回発表されようとしている決算の一株当たり利益(EPS)のコンセンサスになります。
同様に売上高に関しては、その下のRevenue estimateの1列目「Current Qtr.」の2行目「Avg. estimate」が売上高のコンセンサスになります。
以上は、いずれも「今期」、すなわち今〆たばかりの四半期の話になります。
次に会社側ガイダンスというのは「会社が示す、来期ならびに通年のEPS、売上高予想」を指します。(いまは上に書いたように6月期決算が「今期」なのだから、「来期」は9月期、そして通年とはカレンダー・イヤーで2018年末で〆た1年間に相当します)
これらのコンセンサスは、上で述べたEarnings estimateならびにRevenue estimateの「Next Qtr.」ならびに「Current year」に相当します。
従って皆さんにやって欲しいことは自分が注目している銘柄の決算が発表されたら:
EPS: 予想○○¢、結果○○¢
売上高: 予想○○億ドル、結果○○億ドル
来期EPSガイダンス:予想○○¢、結果○○¢
来期売上高ガイダンス:予想○○億ドル、結果○○億ドル
通年EPSガイダンス:予想○○¢、結果○○¢
通年売上高ガイダンス:予想○○億ドル、結果○○億ドル
という感じで決算結果をノートに書きつけておいて欲しいのです。
すると上の数字がパーフェクトに予想を上回った場合、(お、これはすごいな。この会社は、ひょっとしてイケるかも?)と考えていいわけです。
しかし中学生が1回の中間試験でたまたま良い成績を取ったからと言って、その生徒の学力が向上していると断定できないのと同じで、伸びてゆく生徒は、その次の試験も、そのまた次も、着実に順位を上げてゆかなければいけないのです。
これと全く同じような感覚で、テンバガーになる大化け株は、次の決算も、その次の決算も、パーフェクトに予想を上回るということを繰り返します。
つまり継続してフォローしていないと、ある株がテンバガーになる素質をもっているかどうか? を正確に判断することは出来ないのです。
なぜこの手法が有効か?
ここまで読んで頂いた皆さんの中には「ふーん、そんなものかなぁ?」と納得してない方もいらっしゃるでしょう。
そこで「なぜこの手法が有効なのか?」ということを説明します。
実は、そのヒミツは「会社側ガイダンス」に隠れています。上で書いたように会社側ガイダンスとは「会社が示す、来期ならびに通年のEPS、売上高予想」ですから、これは会社が自由に決めることができます。
つまり会社は自分でゴールを設定しているのです。
普通、企業は到底達成できないような無茶な目標は設定しません。大体、余裕を持たせて、フツーに努力すれば達成できる、ラクショーなゴールを設定するわけです。
企業がガイダンスを示すと、アナリストの予想数字はどうしても会社側の設定するガイダンス付近に収斂(しゅうれん)しがちです。
だから我々が「アナリスト・コンセンサス」と呼んでいる数字は、実は会社側が用意した容易に達成可能な数字に他ならないのです。
だからもし実際の決算がアナリスト予想を下回ったら、何か深刻な経営上の問題をその企業が抱えていると疑ってかかるべきなのです。
決算を取りこぼした企業をテンバガーのレースから外す理由は、その銘柄が自分で設定した目標すらも守れないダメ会社だからに他なりません。
当初の「良いストーリー」がどんなに立派でも、企業をめぐる経営環境は刻々と変化してゆくもの。新しい競争相手が登場したとか、ビジネス・モデルが陳腐化したというようなケースは掃いて捨てるほどあります。だから皆さんが良い銘柄に気が付いた場合でも、そのストーリーが継続して良好であることは必ず「定期検診」しなければいけないのです。
決算発表は「定期検診」の良い機会です。だから決算発表をちゃんとモニターしない投資家は「本気」を出しているとは言えません。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。