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米国株式市場の見通し

米国株式市場の見通し

2018/10/16

先週は久しぶりに米国株式市場がざっくりと調整したのでマーケット全般の見通しを点検してみたいと思います。

1 金利は落ち着きを見せ始めた

今回、マーケットがギクシャクした原因は長期金利がずんずん上昇したからです。その長期金利ですが先週の木曜日を境に下落に転じています。これは株式にとってプラスです。

もし米国10年債利回りが現在の3.15%付近で安定するなら、それは株式バリュエーションにとって支援的な水準だと思います。

<企業業績>
いま2018年第3四半期決算発表シーズンが始まっています。いまのところS&P500採用企業の6%しか決算発表を済ませてないので全体的なコメントをするには少し早すぎると思います。ただ今年ならびに来年のコンセンサス予想は引き続き米国企業が絶好調であることを示唆する数字となっています。

向こう12ヵ月の一株当たり利益(EPS)予想に基づいた株価収益率(PER)は先週の株価の下落で15.7倍という水準まで下がりました。過去5年間の平均が16.3倍なので現在の株価評価は過去平均より割安です。

株式のバリュエーションは1. 金利と2. 企業業績の二つでほぼ決定されてしまうので、上に見たようにその両方で株式に支援的な環境になっているということは余り株式市場に対して神経質にならなくて良いことを示唆していると思います。

2 市場のセンチメント

一方、市場のセンチメントはかなり悲観の方向へ振れました。

たとえば先週金曜日はダウンティックで投げ売りする投資家が極めて沢山見られました。普通、機関投資家は自ら株価を壊し、自分の首を絞めるようなやり方でポジションの整理をしません。しかしパニックしているときに限ってダウンティックでもお構いなしにどんどん売り物をぶつけるのです。これは投資家が狼狽していることを示唆し、相場の転換点であることを示しています。

次にトレーダーは相場が下がると思ったらプットオプションを使ってポジションをヘッジしますが、皆がこぞってプットオプションを買っている場合は逆に相場は上に行くことが多いです。したがってプット・コール・トレーディング・ボリュームは絶好の「逆指標」の役割を果たしてくれます。そのプット・コール・トレーディング・ボリュームは1.20という極端に弱気な数値を先週木曜日に示現しました。これも相場の反騰を暗示していると思います。

2 クリスマス商戦を占う

そろそろ市場参加者はクリスマス商戦期間の小売売上高に注意を払い始めると思います。まだ実際の売上のトレンドを問題にするのは早すぎると思いますが、少なくともクリスマス商戦期間を迎えるにあたって消費者の懐具合がどうか? ということは検証可能です。

その点、米国の失業率は過去49年で最低であり、労働市場は極めてタイトですので、いまクビになることを心配しているアメリカ人は少ないです。

労働市場がタイトなので雇用主はだんだん賃上げを強いられています。これは従業員の立場からすれば歓迎すべき展開です。

賃金が上がると(今年のクリスマスは、少々奮発しても大丈夫だろう)という楽観を消費者にもたらすことと思います。

それに加えてこれまでに決算発表を終えた米銀の決算カンファレンスコールを聞くと消費者への貸付の焦げ付きは低水準であり、家計の懐具合は健全であるというコメントが多かったです。

これらのことを総合すると今年のクリスマス商戦期間はそれなりに良いシーズンになると予想されるのです。

<先週の株価下落は不況の予兆ではない>
先週の株式市場急落は米国経済失速の予兆である可能性は低いと思います。むしろ今年の2月同様、ブル・マーケット(強気相場)の中のスピード調整と考えるべきでしょう。すると現在の株式市場の調整局面はこれまで買いたくても買えなかった銘柄を仕込む好機と考えることが出来るのです。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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