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景気拡大局面はいつまで続く?
景気拡大局面はいつまで続く?
2018/10/30
このところ米国の株式市場が軟調なので「景気拡大局面がそろそろ終焉するのでは?」という懸念が出ています。そこで今日はこの話題について書きます。
景気循環
景気循環とは好況と不況が交互にやってくることを指します。不況(リセッション)は英国では「二期連続でGDP成長率がマイナスになること」と定義されています。
米国の場合、不況が来たか? を判定するのは全米経済研究所(NBER)の役目です。同研究所は沢山の経済学者から構成されており、ノーベル経済学賞受賞者20人を含んでいます。
同研究所の不況の定義は「経済活動の広範に渡る低下を指し、普通、それは数カ月以上続き、GDP、実質所得、雇用、鉱工業生産、卸売ならび小売売上高などに顕著に表れる」というものです。
全米経済研究所によると1980年以降、アメリカは4回の不況を経験しました。
上の定義に従い、実際にデータを検証しましょう。まず失業率です。一般に不況になると失業率は高くなります。
これで見ると1980年、1981年、1990年、2001年、2007年に失業率がジャンプしていることがわかります。
次に鉱工業生産を見ます。こちらは数字の落ち込みに注目してください。
先ほどと同じく1980年、1981年、1990年、2001年、2007年に落ち込みが見えます。
今回の景気拡大局面について
さて、現在の景気拡大局面は2009年7月から始まっているので、実に112か月に及んでいます。これは過去最長だった前回の景気拡大局面(120か月)にあと少しで届く長さです。ちなみに第二次世界大戦以降の景気拡大局面の平均の月数は58.4か月でした。
今回の景気拡大局面の特徴として、経済成長率は過去の景気拡大局面に比べると弱々しいことが指摘されています。そのぶんインフレ圧力も強くないので、じわじわと、長持ちしやすい景気拡大だと言われています。
連邦準備制度理事会の手綱さばきに注目
景気が強くなっている局面では中央銀行はインフレを抑制し過度の投機を抑える目的で政策金利を引き上げます。
米国の中央銀行は連邦準備制度理事会(FRB)です。FRBはフェデラルファンズ・レートを引き上げることで景気拡大局面をなるべく長持ちさせることに努めます。
こうした利上げ局面の途中で、ちょうど今、我々が経験しているような株式市場の調整が来るとFRBは利上げの手を休めることもあります。実際、1990年代の景気拡大局面ではそういう小休止が何度かありました。
現在の株安がさらに続くようだとジェローム・パウエルFRB議長は利上げを見合わせる決断をするかも知れません。しかし90年代の経験を見ても分かるとおり、それは必ずしも景気拡大サイクルの終焉をシグナルするとは限らないのです。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。