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原油価格の急落は何を示唆している?
原油価格の急落は何を示唆している?
2018/11/15
このところ原油価格の下げがきついので今日はそのことについて書きます。
原油価格が急落
原油価格は10月30日から11月9日にかけて10日連続安しました。これは1984年7月以来の出来事です。
そしてこれを書いている11月13日もザラバにおいて−4%を超える急落となっており、57.4ドルまで下がりました。
10月3日の高値76.72ドルから起算すると−25.18%の下げ幅です。
<原油急落の直接の理由>
下げの理由としてサウジアラビアならびにロシアが原油を増産したことがあげられます。11月から始まるイランに対する経済制裁を前にアメリカがサウジアラビアに増産を要請したことがその背景にあります。
実際に11月に入ってイランへの経済制裁が開始され「材料出尽くし」になったことも強気筋が原油先高シナリオをあきらめるきっかけになったと思います。
加えて11月2日にトランプ政権が8か国に対して「アメリカのイランに対する経済制裁に協力しなくてもいい」という例外措置を発表したことで供給のひっ迫感が減ったことも相場急落の一因だと思われます。
米国の原油在庫は急増
米国の原油在庫はここへきて急増し、過去五ヵ月で最高の水準に達しました。
米国内での原油生産の伸びが在庫のだぶつきを招いたと思われます。
北米で稼働しているオイルリグの数はこのところ微増ですが、リグ一本当たりの生産量は大型化ならびに効率化により増えています。それが供給増の理由です。
ここまでの話をまとめると、世界の三大原油生産国はアメリカ、サウジアラビア、ロシアですが、この3国が揃って増産しているので、原油相場は崩れるべくして崩れたといえるでしょう。
以上は原油の供給サイドの話ですが、需要はどうなっているのでしょうか?
需要への懸念
原油の需要は世界の好景気で安定的に推移してきました。しかしここへきて中国、欧州の経済には陰りが見えます。
下はユーロ圏製造業購買担当者指数です。
欧州の景況感がぐっと減速している様子がわかると思います。
一方米国のISM製造業景況指数も予想以上に減速しました。
このことから一部の市場参加者は「原油の相場がこれほどまでに急落しているのは世界的な景気後退の前兆では?」という声が出始めています。
未だそのように結論付けるのは早いと思いますが、今回の原油相場の急落がとてもドラマチックであったことは知っておくべきことであり、今後も引き続き注意を払いたいと思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。