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今週のFOMCの見通し
今週のFOMCの見通し
2019/1/29
今日は「今週のFOMCの見通し」に関して書きます。
今年初のFOMCが開催される
1月29・30日(火・水)の両日、今年最初の連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。
今回は現行のフェデラルファンズ・レート2.5%が維持されるというのがコンセンサスになっています。
ここへ来るまでの経緯
去年の10月以降、米国株式が軟調なのを見てトランプ大統領はジェローム・パウエルFRB議長に対する批判を強めました。
パウエル議長はそれに耳を貸さない姿勢を貫きました。その一方で、ある程度マーケットに配慮する発言も行ってきました。
たとえば11月28日(水)にエコノミック・クラブ・オブ・ニューヨークの会合に登壇したパウエル議長は「FFレートは中立的と考えられる水準よりちょっと下(just below)のところまで来ている」とコメントしました。
さらに12月6日(木)には「FRBは12月19日のFOMCで0.25%の利上げをするのを最後に、しばらく様子見に入る」という観測記事をウォールストリート・ジャーナルのニック・ティミラオス記者に書かせています。
しかし12月19日(水)のFOMCでは「もう少し緩やかな利上げを続ける」という表現が使われ、「打ち止め」感はありませんでした。さらに記者会見で「いま蔓延しているのは神経質なムードだ。しかしそれはあくまでもムードに過ぎない」として金利政策を考える上で株式市場の下落に配慮しない姿勢を打ち出しました。
1月2日(水)にアップルが利益警告をしたため株式市場は不安に包まれました。そこでパウエル議長はトーンを変え、1月4日(金)アトランタの討論会で次のアクションを起こす前に「辛抱強く」データを見守ると語り、当分追加利上げしないことをほのめかしました。現在は、このとき打ち出された考え方が市場関係者の期待を形成する上での根拠となっています。
さらに1月24日(木)にウォールストリート・ジャーナルは「FRBは量的引締め政策を予想より早く切り上げることを検討している」という記事を掲載しています。
量的引締め政策はQT政策とも呼ばれ、リーマンショック後に実施した量的緩和政策の結果としてFRBが在庫にしている債券が償還期限を迎え現金に換わった場合、もういちど債券を買い直すことをしない政策を指します。
そのようなことを通じて現在FRBは毎月500億ドルのペースでバランスシートを縮小しているのです。
現在のFRBのバランスシートは約4兆ドルであり、ウォールストリート・ジャーナルの記事では最終的なFRBのバランスシートの「着地点」は3.5兆ドルになるという観測が示されていました。するとあと10か月ほどで「着地点」に達する計算になります。
記者会見の「聞きどころ」
今年から全てのFOMCで記者会見が開かれることになりました。従って1月30日にも記者会見が予定されています。
今回の記者会見では上記の量的引締め政策の早期切り上げに関し、記者団から質問が出ると思われます。とりわけ「着地点」、すなわちFRBの総資産がどの段階で量的引締め政策をSTOPするのかに注目が集まると予想されます。
これまでのパウエル議長の采配を振り返ってみると、ハト派と見せかけておいて公式の場では記録を残すようなカタチで譲歩していないことがわかります。
これは「トランプ大統領からの圧力に屈した」という証拠を残さないようにするためのパウエル議長独特のやり方なのかもしれません。
その流れでゆくと30日のFOMCの記者会見でも案外サラッとQT政策の問題がスルーされてしまうリスクもあると思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。