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ディフェンシブ株とシクリカル株
ディフェンシブ株とシクリカル株
2019/2/13
みなさんはディフェンシブ株とかシクリカル株という言葉を聞いたことがあると思います。
今日はこれらについて書きたいと思います。
ディフェンシブ株とシクリカル株
ディフェンシブ株とは「景気後退局面に強い株」を指し、シクリカル株とは「景気に業績が大きく左右される株」をさします。
今日はそれらの株の特徴と、投資するときの注意点などについて論じます。
<ディフェンシブ株>
ディフェンシブ(Defensive)とは「守備の」という意味です。もっと言えば「守りに強い」ということです。するとディフェンシブ株は「守りに強い株」ということになります。それは景気後退局面が到来したとき、比較的業績の悪化が少ないような業種を指します。
具体的にどのようなセクターがディフェンシブ株に相当するかといえば、日用品、食品、飲料、たばこなどになります。この他、電力会社のような公益事業もディフェンシブな性格を備えていると思います。
さて、ディフェンシブ株への投資タイミングですが、(これから景気が悪くなるのでは?)ということが心配される局面にディフェンシブ株に投資するのが良いと一般に考えられています。
<シクリカル株>
シクリカル(Cyclical)とは「サイクルの」という意味です。もっと言えば「景気サイクルに左右される」ということです。
するとシクリカル株は景気後退局面では業績の落ち込みが激しく、逆に景気拡大局面では業績の伸長が著しいです。
具体的にどのようなセクターがシクリカル株に相当するかといえば、鉄鋼、自動車、工業、素材などになります。
さて、シクリカル株への投資タイミングですが、(これから景気が良くなるのでは?)という局面にシクリカル株に投資するのが良いと一般に考えられています。
ディフェンシブ株のむずかしさ
ディフェンシブ株は業績が景気に左右されにくいので安心感があります。そのような理由で初心者に好まれます。
しかしそんなディフェンシブ株も「ノー・リスク」というわけではありません。
まず日用品、食品、飲料、たばこなどの企業は、ほとんど成長していないケースが多いです。たばこに関しては、年々出荷ボリュームが−4%と下がっており、「緩慢な死」に向けてゆっくりと進んでいるという風にも言えるでしょう。
だから「単にBUY & HOLDしておけば、いつかは必ず儲かる」と考えるのは投資家の傲慢だと思います。
またこのセクターに属する企業の中には海外売上比率が高い企業も散見されます。その場合、為替がちょっとドル高に振れると決算がコンセンサス予想を下回るというケースも多々見られます。
デフレ・プレッシャーがきつい場合、値上げにより成長を達成することが困難になります。実際、スーパーマーケットで販売されることが多いこれらの商品は、近年、ずっと値下げ圧力に晒されてきました。
これらのことを総合すれば、投資家にとってディフェンシブ株が魅力的に映る局面とは、景気が明らかに暗転し、株式市場の急落が懸念されるような局面だけだと言っても過言ではないと思います。
<シクリカル株のむずかしさ>
シクリカル株の中には株価収益率(PER)でとても割安に取引されている銘柄が散見されます。
しかしシクリカル株が割安に取引されている時は、一般にリスクが高い時でもあります。
シクリカル株は一般に損益分岐点が高い企業が多いです。損益分岐点とは、ある一定の売上高以上に売上が伸びれば、それを超えた部分に関しては全部企業の利益になるという境目を指します。
鉄鋼業や自動車産業は巨大な装置を必要とします。そのような装置に対する先行投資が嵩むため、売上高が少ないうちは赤字を垂れ流します。
しかし好況で売上高が伸びる局面で、損益分岐点を超えて売上が伸びた場合は、逆に今度は面白いように儲かるのです。
往々にしてシクリカル株が異常なほど低いPERで取引されているときというのは、そのような利益のピークである場合が多いです。
だから割安だと思って買ったら、ちょっと景気に陰りが見えた拍子に業績が急転直下悪化するということは良くあることです。
その観点から言えば、シクリカル株を買うべき局面とは、その株が一番割安に見えている時では無く、業績がボロボロの時だという風な主張もできるわけです。
しかしシクリカル株の多くは装置産業であり、多大な設備を必要とする関係で、負債も多いです。そのような借金まみれの会社を、赤字を垂れ流している局面で買うのはたいへん勇気が要ります。
このことからも、たんに「シクリカル株は、これから景気が好転しそうなときに買え!」と言われても、「言うは易く行うは難し」で、実際には極めて難易度が高いことがお分かり頂けると思います。
ポートフォリオの組み方
以上の説明からも分かるとおり単に景気後退局面にディフェンシブ株を買い、景気拡大局面にシクリカル株を買ったところで、まんまと儲けることが出来る保証は無いことがお分かり頂けたと思います。
つまりそれらはいずれも「理論」の話なのであって、実際にやってみるとそんなに簡単には行かないということです。
したがって景気後退局面に他の株を全部売り、すべてをディフェンシブ株にぶち込む、あるいは景気拡大局面に他の株を全部売り、すべてをシクリカル株にぶち込むという極端なやり方は避けるべきでしょう。
とりわけ注意を要するのはディフェンシブ株とシクリカル株に共通する「欠点」としてグロースの要素に欠けるということです。だから悪いタイミングでこれらの銘柄を仕込んだらそのミスを挽回しにくいのです。
<まとめ>
景気に陰りがみえればディフェンシブ株を、景気が強くなりそうであればシクリカル株を買うというのがセオリー通りのやり方になります。
しかしディフェンシブ株やシクリカル株はBUY & HOLDに向きません。
だから買うタイミングはしっかり見極める必要があります。
またポートフォリオをディフェンシブ株一色にするとか、シクリカル株一色にするというやり方は危険極まりないと思います。
ちょっとメリハリをつけてみる程度のキモチでこれらの銘柄に投資するのがいちばん良いと思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。