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半導体セクターへ投資する際の視点
半導体セクターへ投資する際の視点
2019/4/11
今日は半導体セクターに投資する際のポイントについて書きます。
半導体にはサイクルがある
我々の身の回りにはスマートフォン、スマート・スピーカー、タブレット、ゲーム端末などいろいろなデバイスが溢れています。それらの数は年々増えているので長期的なトレンドとしては半導体の市場は右肩上がりで大きくなっていると言えます。
実際、いまから20年前の1998年頃は毎月の世界の半導体の売上高はちょうど100億ドル程度でした。その後、ドットコム・バブルが弾けた後の2001年と、リーマンショック後の2009年の2つの例外を除き世界の半導体売上高は右肩上がりのトレンドを維持し2017年末に約380億ドルの高値を付けました。
それ以降、世界の半導体の売上高は横這いから減少に転じ、2019年2月には328.6億ドルまで下がりました。その様子を前年同期比の変化率で示すと次のようになります。
すなわち巨視的に見れば半導体の市場は着実に増えているけれど、もっと細かく見れば浮き沈みがあり、いま半導体セクターはスランプに陥っているということです。
過去のスランプは1年から1年半続くことも多かったです。
すると今回はそろそろ底入れのタイミングを模索する局面にさしかかっていると考えて良いと思われます。
各社によって業績見通しは違う
半導体各社はそれぞれ得意分野があり、どの市場に特化しているかによって業績の見通しに差があります。下はそれを一覧表にしたものです。
■テキサス・インスツルメンツ
テキサス・インスツルメンツ(ティッカーシンボル:TXN)はアナログ、エンベッデッドなどの比較的地味だけれど需要の安定した分野に特化しています。足下の業績は中国のスマホ・メーカーからの注文が弱かったため低迷しています。
また自動車向け半導体、工業向け半導体もやや精彩に欠いています。その反面、5Gに向けてコミュニケーション半導体は好調です。
■インテル
インテル(ティッカーシンボル:INTC)のPC向け売上高は+10%で成長しています。第9世代コア・マイクロプロセッサ「アイスレイク」は10ナノメーター線幅の微細加工技術を駆使した最新鋭のチップで、これを搭載したパソコンが店頭に並ぶのは今年のクリスマスシーズンになると思われます。
データセンター向け売上高は+9%で成長しています。「ゼオン」のハイパフォーマンス機種「カスケードレイク」が最近発表されました。これはAIやメモリ機能を強化した製品で、すでに出荷が始まっています。
インテルの営業キャッシュフロー・マージン(CFPS÷SPSのパーセント)は41%でとても素晴らしいです。
【略号の読み方】
DPS 一株当たり配当
EPS 一株当たり利益
CFPS 一株当たり営業キャッシュフロー
SPS 一株当たり売上高
■エヌビディア
エヌビディア(ティッカーシンボル:NVDA)のグラフィック・プロセッサ(GPU)は去年大型のゲーム・タイトルが次々にリリースされた関係でファンの多くがGPUをアップグレードしたこと、仮想通貨ブームでマイニング向け需要が伸びた事などの一過性のブームが重なったことで大きく売上を伸ばしたものの、今はその反動で業績は低迷しています。いまのところ卸市場での過剰在庫は未だ解消してないので会社側の底打ち宣言を待ちたいと思います。
■ブロードコム
ブロードコム(ティッカーシンボル:AVGO)は幅広い製品ポートフォリオを持っており、特定の顧客やセクターに依存していません。
下のチャートで2018年の利益がとりわけ大きかったのは2017年末に成立した税制改革で海外利益の米国への送金に対し優遇措置が取られたことによります。同社はちょうどそのタイミングで登記をシンガポールから米国に移しました。したがってEPSではなくCFPSに主に注目してください。
■ザイリンクス
ザイリンクス(ティッカーシンボル:XLNX)は今売上高が最も著しく伸びている半導体企業のひとつです。
データセンターならびにテスト計測&エミュレーション(TME)ビジネスが前年比+14%で成長しているのに加えコミュニケーション部門が+41%成長しています。これは5G向け需要によります。
■クアルコム
クアルコム(ティッカーシンボル:QCOM)はスマートフォンへの依存度が高いですが、いま中国やアメリカでは高級なスマホが余り売れていません。従ってこの市場もまだ底入れは先かもしれません。
それ以外のニッチに強い企業については需給のバランスはそれほど崩れておらず、業績の見通しは安定していると思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。