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ポートフォリオのリバランスについて
ポートフォリオのリバランスについて
2019/6/12
アメリカのフィナンシャル・アドバイザーが励行している手法で、日本の金融サービスに従事している人たちに余り活用されていないテクにポートフォリオのリバランス(rebalance)があります。
リバランスとは「バランスを取り戻す」行為を指します。
具体的にポートフォリオ運用の際にリバランスと言った場合、それは「大きく上昇したセクターやファンドを少し減らし、その分を凹んでいるセクターやファンドに回す」ことを指します。
リバランスの狙い=ボラティリティーの軽減
そう書くと(なぜわざと勝っているポジションを減らし、負けている部分を増やすのだ?)と抵抗感を感じる読者も多いと思います。
これを説明します。
まず自分のリタイア後の生活資金を20年とか30年という長期の展望の下に運用する場合、そのパフォーマンスを害する最大のリスク要因は短期での極端なボラティリティーです。
ボラティリティーとは価格のブレを指します。
一般に価格が上に大きくブレる投資対象は下に行くときも大きく下落します。
このようなブレは@放置する、という考え方とA均す、というアプローチがあります。
そしてA均すことをした方が、@放置した場合よりも投資結果が良いことが知られています。
なぜリバランスしたほうがいい?
この概念をシンプルな例を使って説明します。いま二つの投資対象に自分の手持ちの資金を均等に投資したとします。それは二種類の投信でも良いし、二種類のセクターでも良いです。ここでは仮にそれを「セクターA」、「セクターB」と呼びましょう。
「セクターA」の初年度のパフォーマンスは+20%、第2年度のリターンはその反動で−10%だったとします。
一方、「セクターB」の初年度パフォーマンスは−10%と冴えず、その反動で第2年度は+20%のパフォーマンスが出たとします。
「セクターA」と「セクターB」の年平均リターン(compounded return)は、どちらも+3.9%です。
いまこの「セクターA」ならびに「セクターB」を半々に組み込んだポートフォリオで初年度の後にリバランスしなかった場合、つまり@放置のポートフォリオでは通算の年平均リターンは+3.9%になります。
しかし初年度の後で「勝っているものを減らし、負けているものを増やす」、すなわちA均すポートフォリオでは第2年度リターンは+5.0%となり、通算の年平均リターンも+5.0%となるのです。
これは直感的に呑み込みにくいかもしれませんが、次のように考えれば納得がいきます。
まずセクターAは初年度+20%という素晴らしいリターンが出たせいで、ポートフォリオに占める割合が大きくなってしまっています。その「頭でっかち」なセクターAが、第2年度に−10%のヤラレを喰らうと、これはポジションが大きいだけに痛手となります。
しかしA均すポートフォリオではその「頭でっかち」を減らすことで均整の取れたポートフォリオにした事が幸いし、おなじ−10%のヤラレを喰らってもダメージが少ないのです。
これが「リバランスのパワー」です。
税制とのかねあいで活用場所を選ぶこと
なお「リバランスのパワー」はキャピタルゲイン税がたくさんかかるようなシナリオでは有効性が薄れてしまうことを指摘しておきます。
さらにNISA(ニーサ)のように、その口座の中で使える無税扱いの効果が一回限りのような投資口座では余り有効なストラテジーではありません。その場合はなるべくポートフォリオを動かさず、無税扱いの特典を最後まで引き延ばすほうが有利です。
なお、アメリカのフィナンシャル・アドバイザーは1年に1回か半年に1回程度の頻度で顧客ポートフォリオのリバランスを推奨することが多いようです。あまり頻度が多すぎてもいけないし、少なすぎてもいけないと思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。