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NY株式市場は新値、FRBは株式にフレンドリー……マーケットを巡る環境は良好
NY株式市場は新値、FRBは株式にフレンドリー……マーケットを巡る環境は良好
2019/7/12
7月10日、米国を代表する株価指数であるS&P500指数は一時3,000の大台に乗りました。
本日は米国のマーケット環境について3つの着眼点からご説明いたします。
S&P500指数の「大台乗せ」は心配無用か
7月10日、米国を代表する株価指数であるS&P500指数は一時3,000の大台に乗りました。これは過去最高値です。
普通、ウォール街では「切りのいい数字に気をつけろ!」ということが言われます。つまり「S&P500指数で3,000達成!」というようなニュースの見出しが躍ると、何だか目標達成感が出てしまい、その後、マーケットが勢いを失うことが多いのです。
ただ今回に関する限り私は余り心配していません。
その第一の理由は、ニューヨーク市場は新波動入りしたばかりだという事によります。これまでS&P500指数は2,950が上値抵抗線となっていました。過去に3回この水準をトライしたけれど、一度もそれをハッキリと超えることが出来なかったのです。
しかし今回は4度目の正直でハッキリとこの水準を上に抜けました。
普通、このように株価指数が上値抵抗線をぶち破ると、これまでの上値抵抗線だった水準が今度は下値支持線に変わると信じられています。つまり2,950が新しい足場となり、そこからマーケットはもう一段、上を狙っていけるというわけです。
このようにマーケットは新波動に入ってから未だ日が浅いため、相場の勢いは十分です。
株式市場が新値を取っているということはマーケットに対し投資家の間で新たな評価が生まれていることを意味します。そしてそういうケースでは「新値だから買う!」という新しい市場参加者を呼び込みやすいです。言い換えれば新聞の見出しに「NY市場が過去最高値を更新!」と出れば、それを見て株式市場に興味を抱く新しい株式ファンも出てくるというわけです。
FRBは7月の利下げを強く示唆
7月10日、ジェローム・パウエル議長は議会で最近の経済の状況に関し証言しました。先週の金曜日に発表された非農業部門雇用者数が22.4万人と強い数字であったにもかかわらず「予防的な利下げが必要であるという今の考えには変更は無い」とパウエル議長は述べ、7月31日の利下げに対し強い決意があることを伺わせました。
つまり連邦準備制度理事会(FRB)は株式にフレンドリーな金利政策を取っているのです。これが現在の米国株式市場に対して強気を維持して良い第二の理由です。
現在、S&P500指数は向こう12か月の一株当たり利益(EPS)予想に対し株価収益率(PER)16.9倍で取引されています。これは過去5年の平均(16.5倍)よりやや割高です。
しかし10年債利回りは約2%と極めて低い水準にあるため、低金利下では株式のバリュエーションは少し高目に買われても問題ありません。
それを勘案すると現在の16.9倍というPERは許容できる範囲だと思います。
米国企業の業績の変化率は今がボトム
アメリカは来週から2019年第2四半期の決算発表シーズンへと突入します。実は1. 税制改革の効果で去年米国の企業収益が急激に伸びた事の反動と、2. 米中貿易交渉の雲行きがおかしくなったこと、の二つの理由からいま米国の企業業績のモメンタムはやや弱くなっています。
しかし今期をボトムとして来期以降は再びEPS成長率は尻上がりに改善してゆくというのがアナリストたちのコンセンサスとなっています。
つまり企業業績面でも今が最悪期であり今後は明るさを増すと思われるわけです。これが米国株式に対し強気を維持する最後の理由です。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。