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ニューヨーク株式市場は過去最高値圏へ
ニューヨーク株式市場は過去最高値圏へ
2019/10/29
ニューヨーク株式市場が再び過去最高値に挑戦する水準まで上昇してきています。
新値と投資家心理
ニューヨーク株式市場が再び過去最高値に挑戦する水準まで上昇してきています。下は米国を代表する株価指数であるS&P500指数です。
同指数は7月下旬に3,027.98の過去最高値を付けました。その水準が目下の上値抵抗線となっています。10月25日(金)はその高値に挑戦したのですが、僅かに届かず、3,022.55で引けています。
■新値と投資家心理
株価指数が新値を取ると、少なくとも指数の上では含み損を抱えている投資家が居なくなるわけで、値運びが軽くなります。その理由は戻り待ちの売りが切れるからです。このため新値を更新したタイミングを狙って「ワッ!」と買い注文が入ることも多いです。
それまでのレンジとは一線を画した動きをすることを「新波動入りした」という風に表現する場合もあります。いずれにせよ、いままでとは違う、新しい評価が生まれていると解釈できるわけです。
この場合、我々がやってはいけないことは、いままでの水準観に拘泥し(もう割高だ!)と深く考えもせずアッサリと相場から降りてしまうことです。
なぜ株式市場に新しい評価が生まれているのか?……その全貌がハッキリするまでは黙って相場についてゆく謙虚な態度が必要です。
熱狂は醒める
それを断った上で、新値更新の瞬間に「ワッ!」と提灯が付くような買い方はすぐに推力を失うことが多い点も指摘しておきたいと思います。
目先筋が飛び乗った後、株価は力なく下押しするケースが多いのです。
ここで重要な観察ポイントは、それまでの上値抵抗線(今回の場合は3,027.98)が逆に下値支持線となり、サポートを提供するかどうかです。
たいていのテクニカル分析の教科書には「この下値テストの局面でそれまでの上値抵抗線を死守できれば株価は再び上を向いて買われやすい」と書いてあります。
機関投資家は、この「ブレイクアウト後の下値死守がきちんと出来るか?」を見極めるまで動き出しません。本当に腰の据わったガッツリとした買い物が入るのは、それを確認した後というわけです。
そうなのであれば我々個人投資家も過去最高値を更新したからといって慌てふためいて飛び乗る必要は無く、最初の押し目でしっかり下値サポートがあることが確認された後で鷹揚に買い出動すればいいということになります。
■株式市場を取り巻く環境を再点検
ここで簡単に株式市場を取り巻く環境を再点検しておきます。まず10年債利回りですが現在は1.77%の水準にあり、金利は低いです。これは株式にとっては良いことです。
ちなみに前回ニューヨーク株式市場が大きく崩れたのは2018年10月で、あのとき10年債利回りは3.2%につっかける展開でした。言い直せば市中金利の上昇を嫌気してマーケットは売られたということです。
現在はそれと対照的に金利は過去最低水準なわけですから株式バリュエーションにとって支援材料と言えるでしょう。
一方、企業業績は節目に来ています。下はS&P500の一株当たり利益(EPS)が四半期毎に前年同期と比べてどれだけ伸びたか? を示すチャートです。
いま2019年第3四半期の決算が発表されている最中で、上のチャートに見られるように変化率的には今がボトムでありこれから出直ってゆくと予想されています。つまり業績のニュースは今後好転する可能性が高いのです。
向こう12か月のEPSに基づいてS&P500の株価収益率(PER)はちょうど17倍で取引されています。これは過去5年の平均の16.5倍に比べるとやや割高ですが、大騒ぎするほどの割高ではありません。
株式市場の季節性という点では11月から1月にかけては1年で最も株価が上昇しやすいシーズンです。
さらに米中貿易交渉に関しては近く両国の間で一定の歩み寄りがあったことが発表されると期待されています。
連邦準備制度理事会の次の一手
10月30日には連邦公開市場委員会(FOMC)が控えています。市場参加者は今回も0.25%の利下げが行われ、アメリカの政策金利であるフェデラルファンズ・レートは1.75%になると予想されています。
そして今回の利下げをもって一応利下げは打ち止めとなり、その後、政策金利は横ばいに入るというのが市場参加者の見方です。
これは米国の景気がガタガタに崩れるのではなく、ソフトランディングに成功したことを暗示する展開であり、株式市場にとってはプラスです。
つまり政策金利も理想の展開になっているということです。
■まとめ
以上のことを総合すると単に株価が過去最高値を更新したという理由だけで(もう割高だ!)と決めつけ、相場から降りてしまうのは得策ではありません。株価指数がこれまでの上値抵抗線だった箇所で下げ止まるか? を確認してから逃げても遅くありません。
長期金利は株式にフレンドリーな低い水準にあります。企業業績はこれからV字型に回復してゆくと考えられています。
11月から1月にかけては例年、相場が高いというジンクスがあります。政策金利はソフトランディング成功を織り込む方向で舵取りされています。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。