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2024-12-13 20:52:16

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米国以外のマーケットに投資するタイミングは今なのか?

米国以外のマーケットに投資するタイミングは今なのか?

2019/11/13

ニューヨーク株式市場が再び過去最高値に挑戦する水準まで上昇してきています。

1結論的には循環的水準訂正の域を出ていない

結論から言えば、このところのこれらの株の戻しは循環的な水準訂正の域を出ておらず、実態の改善は伴っていません。たまたま世界的にリスクオンの機運が高まったことで見直されただけです。

■リスクオン相場になった背景
それではなぜリスクオン相場が来たか?と言えば、それは

1. 米国株式市場が過去最高値を更新した
2. 連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げ打ち止めが打ち出された
3. 米中貿易戦争に雪解けムードが漂っている

などによります。

FRBは2019年7月から3回にわたり毎回0.25%のペースで小刻みに利下げしてきました。その効果もあり米国経済はソフトランディングのメドが立ちました。

当面、リセッションは来ないと考えられることから、リセッション開始時に見られる極端な弱気相場のリスクも遠のきました。

米中貿易戦争は経営者を悲観的にさせ先行投資が細る原因を作りました。しかし第1ラウンド合意が近く発表される予定なので楽観論が広がりつつあります。

これらがリスクオン相場の背景です。これらはいずれもアメリカで起きていることです。

言い直せば欧州経済、新興国経済、景気敏感株の業績を見る限り、改善は殆ど見られていません。

今後の政策金利のベクトルで言えばアメリカが利下げを完了し当分水平飛行へ入るのに対し、欧州では更なる利下げが予想されています。これはユーロ安要因です。

アメリカの投資家は為替でやられるリスクを冒し、わざわざ業績面でパッとしない欧州株を買うでしょうか?

同指数は7月下旬に3,027.98の過去最高値を付けました。その水準が目下の上値抵抗線となっています。10月25日(金)はその高値に挑戦したのですが、僅かに届かず、3,022.55で引けています。

■結論的には循環的水準訂正の域を出ていない
株価指数が新値を取ると、少なくとも指数の上では含み損を抱えている投資家が居なくなるわけで、値運びが軽くなります。その理由は戻り待ちの売りが切れるからです。このため新値を更新したタイミングを狙って「ワッ!」と買い注文が入ることも多いです。

それまでのレンジとは一線を画した動きをすることを「新波動入りした」という風に表現する場合もあります。いずれにせよ、いままでとは違う、新しい評価が生まれていると解釈できるわけです。

この場合、我々がやってはいけないことは、いままでの水準観に拘泥し(もう割高だ!)と深く考えもせずアッサリと相場から降りてしまうことです。

なぜ株式市場に新しい評価が生まれているのか?……その全貌がハッキリするまでは黙って相場についてゆく謙虚な態度が必要です。

2悪化に歯止めがかかっていない新興国

同様のことは新興国株式についても言えます。下は国際通貨基金(IMF)が10月に発表した「世界経済見通し」に収録された各国のGDP成長率ですけど、先進国も新興国も軒並み成長率は鈍化しています。

各国のGDP成長率(%)
  2015年 2016年 2017年 2018年 2019年(予)
オーストラリア2.52.82.42.71.7
ブラジル-3.6-3.31.11.10.9
カナダ0.71.131.91.5
中国6.96.76.86.66.1
フランス1.11.12.31.71.2
ドイツ1.72.22.51.50.5
インド88.27.26.86.1
メキシコ3.32.92.120.4
ロシア-2.30.31.62.31.1
南ア1.20.41.40.80.7
タイランド3.13.444.12.9
トルコ6.13.27.52.80.2
英国2.31.81.81.41.2
米国2.91.62.42.92.4
ベトナム6.76.26.87.16.5

(出展:IMF)

ここで重要なのは絶対的な数値の大小ではなく前年からの変化率です。新興国は「ぐっ」と成長率にブレーキがかかっている国が多く、まだ最悪期を脱した観はありません。

■来年の世界的景気回復はトルコ・イランなどとりわけ脆弱な国にかかっている
IMFは2020年以降、ゆっくりとしたリバウンドを見込んでいます。しかしその反発は落ち込みの激しかったトルコやイランなど、特殊な事情が影響している国々のGDPの反発に依存する部分が大きく、先進国や中国などの経済大国の回復が全体を押し上げるというシナリオではないそうです。

言い直せば、来年にかけての世界経済のリカバリーは上に述べたような、もっとも脆弱な国々の復調に依存しており、心もとないということです。

390年代半ばのシナリオが再現するのであれば新興国は「売り」だった

先のFOMCでは、ジェローム・パウエルFRB議長は「現在のアメリカ経済は1990年代半ばに似ている」ということを言っていました。あの時もグリーンスパン議長が予防的な小刻みな利下げを3回繰り返した後、米国経済は再加速しました。

しかしもうひとつの1990年代半ばの教訓は、アメリカ経済の「ひとり勝ち」の構図が鮮明になるにつれて、世界のマネーがアメリカに集中し、その結果、新興国では通貨危機が起きたということです。

現在もアメリカ経済は「ひとり勝ち」の様相を呈しており、しかもアメリカは世界に先駆けて利下げ打ち止め宣言をしたわけですから、今後はドル高になるリスクがあります。その場合、欧州や新興国市場からおカネが抜けてゆくシナリオも想定されるわけです。

現在の欧州株や新興国株は、それらの国々の経済が底打ちしたことを好感して買われているのではなく、単にアメリカの投資家のセンチメントが改善したことを囃して買われているに過ぎません。つまり実にあやふやな理由で買われているということです。

■欧州株が割安であるという主張にも疑問
なるほど欧州株は向こう12か月の一株当たり利益(EPS)に基づいて株価収益率(PER)13.8倍で取引されており、これは一見すると割安のように感じます。

しかし長期での欧州市場のPERは13倍前後ですので、それに照らしてみればむしろ割高です。

■まとめ
まとめると、リスクオンの機運が高まったことで「欧州株、新興国株に妙味がある!」ということがにわかにコンセンサスになりつつありますが、それは景気や業績の実態を伴っておらず、値ごろ感からの物色は危ういと思います。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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