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2020年の投資戦略
2020年の投資戦略
2019/12/23
今回は今年最後の記事になりますので来年の投資戦略に関して書きます。まず結論として2020年の米国株式は+10%の上昇を見込んでいます。そう考える根拠を示します。
米国経済の現況
米国経済の置かれている環境は良いです。12月の連邦公開市場委員会(FOMC)の際に公表された最新の経済予想サマリーによると、連邦準備制度(FRB)メンバーは2020年の米国のGDPは2.0%で成長すると予想しています。
これは2019年の実績より少し低いペースですが十分な成長だと言えます。
次に失業率に関しては1969年以来の最低水準である3.5%が予想されています。
つまり労働市場は健全なのです。
物価に関してはFRBが好んで使うPCE(個人消費支出)コアインフレで1.9%が予想されています。
FRBの物価ターゲットは2.0%であり、1.9%という予想は、ほぼ目標通りのインフレ率が見込まれていると言えるでしょう。
このように失業率が低く、インフレも低いということは、消費者のマインドにとって極めて良い環境であるということが出来ます。
米国のGDPの70%は消費から構成されていることから、消費の堅調は経済の堅調に直結します。
大統領選挙を占う
2020年は大統領選挙の年です。普通、アメリカ経済が良い時、再選を狙う現職大統領が有利だと言われています。上で見た通り、今は景気が良いのだからドナルド・トランプ大統領が有利に選挙戦を進めると考えるのが自然です。
過去の大統領選挙の年、株式市場がどのようなパフォーマンスだったかを示したのが下のチャートです。
現職大統領が勝利した年は平均してS&P500は+10.23%でした。したがって2020年もそのくらいのパフォーマンスが期待できると考えられます。
米国株式市場のバリュエーション
S&P500採用銘柄の向こう12か月の予想一株当たり利益(EPS)に基づいた現在の株価収益率(PER)は17.7倍です。過去5年の平均は16.6倍だったので、これは少し割高ですが、我慢できる水準と言えます。
■S&P500一株当たり利益変化率
下はS&P500採用銘柄の四半期一株当たり利益(EPS)の前年同期比変化率のチャートです。
見ての通り、2020年からV字回復することが予想されています。その理由なのですが、そもそも2018年のEPSが「トランプ減税」で押し上げられたので、2019年は前年比較が苦しかったということが指摘できます。
しかし2020年は前年比較が容易になるので尻上がりにEPSの成長率が改善するというわけです。
当然、これは株式にとって支援的な材料です。
■まとめ
2020年の米国株式は+10%程度の上昇が見込まれます。米国経済は堅調、失業率は低く、物価は安定しています。堅調な消費が、今後も続くと見込まれます。米国株式のバリュエーションは少し割高ですが我慢できる範囲内です。EPSの変化率は加速するので株式にとっては良い環境です。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。