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中国で発生した新型コロナウイルスは米国株式にはあまり影響を与えない
中国で発生した新型コロナウイルスは
米国株式にはあまり影響を与えない
2020/1/27
中国の武漢市で発生した新型コロナウイルスはこれまでに多くの方が感染し、死亡者も確認されています。
今回のウイルス発生はちょうど春節(旧正月)の旅行シーズンと重なってしまった為、帰省を取りやめる人も出ました。このため景気への影響を心配する投資家も居ます。
2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が発生したときは収束までに半年以上を要しました。そして香港を中心にアジアの株式市場が下げました。その連想で今回も市場参加者に不安が走っています。
新型コロナウイルスのような重篤な感染病は軽視すべきではないと思います。それを断った上で、こと米国株に関する限り、影響は限定的だと考えます。
その理由は株式のバリュエーションは長期で見れば@金利とA企業業績によって殆ど決定され、今回のようなイベント・リスクは一過性のものである可能性が強いからです。
現在、米国の景気は下のGDPのチャートに見られるようにシッカリしています。
失業率も歴史的に低い水準となっています。
低失業率に加えて最近はようやく賃金も上がりはじめているので、消費者のマインドは堅調です。
米国のGDPの70%が消費から構成されていることを考えると、消費が堅調である限りアメリカ経済が大きく崩れるシナリオは予想しにくいです。
去年の7月以降、連邦準備制度理事会(FRB)は小刻みな利下げを3回繰り返しており、その後、現行のフェデラルファンズ・レートの水準(1.75%)をとうぶん維持することをシグナルしています。
つまり景気は大丈夫であり企業業績への懸念は低いし金利政策も株式支援的になっているということです。
1月に米中貿易交渉第1ラウンド合意が調印されたので、目先、株式市場には不安材料が無くなったかのような印象を与えました。
ウォール街の格言に「相場は不安の壁を駆け上がる」とある通り、不安材料が少しあったほうが相場は長続きすると考える投資家がアメリカには多いのです。
以上をまとめると、新型コロナウイルスの材料で株価が下げる局面があればむしろそれは絶好の買い場だと考えます。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。