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新型コロナウイルスが世界の景況感を圧迫 こういう局面ではゴールドが注目される
新型コロナウイルスが世界の景況感を圧迫 こういう局面ではゴールドが注目される
2020/2/20
世界の景気の先行きに暗雲
新型コロナウイルスで世界の景気見通しが暗転しています。中国では春節の帰休期間を延長しウイルスの拡散を防ぐ措置が取られましたが、その結果、湖北省を中心とした経済活動は大幅にスローダウンしました。その関係で石炭や石油などのエネルギーの消費は減退しており、原油、銅などのコモディティ市況が軟化しています。
■米国への影響は限定的
米国は新型肺炎が流行している中国から地理的に遠いですし内需型の経済なので経済への影響は限定的だと考えられています。
ただアメリカを除く世界全体の景況感がうつむきになっている関係で投資家の資金は長期債などに避難しています。
■長短金利差が再び「0」へ
このため10年債利回りは新年以降低下気味で、景気後退の先行指標と言われる10年債利回りから3か月物Tビル利回りを引いた金利差は去年の3月下旬の短い期間、5月13日から10月10日までの期間に次いで、今年の1月31日以降、何度かマイナス圏に入っています。
上のチャートは長短金利差を示すひとつの指標であり、長短金利差が「0」ないしマイナスになった場合、銀行は融資利ザヤが無くなるので融資意欲を失うと言われています。銀行がおカネを貸すことに消極的になればますます経済活動は鈍化します。このようにして経済は不景気へのスパイラルを降下してゆくわけです。
したがって長短金利差「0」は米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が再び利下げしなければいけない局面がいずれ来ることを暗示しています。
FRBの次の一手
ジェローム・パウエル議長は「当分フェデラルファンズ・レートは変更しない」と宣言したばかりなので直ぐにそれが反故にされるとは考えにくいです。しかしバイアスとしては次の一手が利下げになることはほぼ間違いないと思います。
下は2020年2月18日のフェデラルファンズ先物の取引価格から逆算された、7月29日に予定されている連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ確率のチャートです。
これを見ると「1.5%」のところが42.3%となっており最も高い確率となっています。このチャートが意味することは何でしょうか?
現行のフェデラルファンズ・レートは1.75%なので7月29日のFOMCで0.25%の利下げが行われ、政策金利が1.50%となることを市場参加者たちが織り込んでいることをこのチャートは意味しています。
つまり7月には連邦準備制度理事会は利下げを再開するということです。
ゴールド
さて、このように利下げが行われ、金利が下がると相対的に魅力が増す原資産にゴールドがあります。なぜならゴールドには銀行預金のように利子はつかないし債券のようにクーポンは無いからです。
すると市中金利が限りなくゼロに近づく上に述べたようなシナリオではゴールドの競争相手の魅力は薄れます。それどころか世界の債券市場では実に12兆ドルを超える債券がマイナス金利で取引されています。低金利になるとゴールドが注目される理屈はこのような理由によります。
さらに経験則的にはゴールドは利上げから利下げへと金利政策が緩和に転じた12か月後辺りから上昇することが多いと言われています。2018年、FRBは金融引き締めをしていましたが2019年に方針を180度変更、2019年7月から利下げに転じました。
■金価格のチャート
下は長期の金価格です。2013年から今年にかけて大きなカップ型の底値を形成しています。
チャートのカタチとしては良いと思います。理想的には今後過去最高値と同じ水準まで上昇した後、しばらく横ばいしてエネルギーを蓄積した後、一段高できれば、いわゆる「カップ・ウィズ・ハンドル」という強いチャート・パターンになります。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。