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FRBが0.50%の緊急利下げ その意味と今後の展開

FRBが0.50%の緊急利下げ
その意味と今後の展開

2020/3/4

1FRBが緊急利下げ

3月3日(火)、米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)がアメリカの政策金利、フェデラルファンズ・レート(略してFFレート)を0.50%利下げし、1.25%としました。

今回の措置は2つの点で異例でした。

1.次の連邦公開市場委員会(FOMC)を待たず利下げに踏み切ったこと
2.利下げ幅が最近の通例の0.25%ではなく、0.50%というザックリとしたものだったこと

これらの異例さは深い意味を持ちます。

まずFRBがFOMCを待たず、慌てて利下げするときは大体その後、マーケットが荒れることが知られています。下はあらかじめスケジュールされたFOMCを待たずに利下げした緊急利下げのケースと、その後の株式市場のパフォーマンスを示しています。

利下げ日利下げ幅翌週3か月後半年後1年後
1998年10月15日0.25%2.96%18.33%25.92%19.09%
2001年1月3日0.50%-2.54%-13.89%-8.39%-14.28%
2001年4月18日0.50%-0.76%-1.82%-13.30%-11.71%
2001年9月17日0.50%-3.40%9.43%12.20%-15.91%
2007年8月17日0.50%2.31%-0.47%-6.64%-11.57%
2008年1月22日0.75%3.95%4.20%-3.85%-35.88%
2008年10月8日0.50%-7.83%-5.84%-16.22%8.18%
平均-0.76%1.42%-1.47%-8.87%

(出典:コンテクスチュアル・インベストメンツ)

するとロシア危機の直後の1998年10月15日のケースだけは翌週、三か月後、半年後、一年後の全てで相場が高くなっていることがわかりますが、それ以外のケースではかなり惨憺たるパフォーマンスだったことが読み取れると思います。

面白いのは1998年の利下げのときは利下げ幅が0.25%と小刻みだった点です。つまり「これは微調整だ」というオーラが演出されていたわけです。当時のFRB議長はアラン・グリーンスパンで、彼は「米国経済は安泰だけれど、ロシアのデフォルトに見る如く世界が苦しんでいる時だから世界を救うために利下げする」というメッセージを極めて丁寧に打ち出しました。

もっと踏み込んで言えば「ハチャメチャ感」は無かったのです。 しかしドットコムバブルが弾けた後の2001年、9/11の同時多発テロ後の利下げ、リーマンショック時の2007年から2008年にかけての利下げは、いずれもドタバタする中、慌てて利下げが敢行され、市場参加者は「あーあ、FRBは後手に回っているな……」という危うい印象しか与えませんでした。

2今回の臨時利下げは慌てたオーラが出てしまった

今回も、どちらかといえば後者の、慌てふためいたオーラが出てしまっている印象があります。

パウエル議長が去年7月に利下げに転じたときは「予防は治療に勝る」という絶妙のセリフを吐き、余裕満々な態度で丁寧に利下げを行いました。

しかし今回はそのような市場をなだめる配慮は無く、ぎこちない印象を残してしまったと思います。

いずれにせよ緊急利下げ、なおかつ0.50%というザックリとした利下げ幅というのは、もう起こってしまった事なので、それは素直に受け止める以外無いと思います。

そして必要であればマーケットに対する意見変更をすることに対してもオープン・マインドであること(=つまり弱気転換)が必要だと思います。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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