マーケット > レポート > 広瀬の外国株式・海外ETFデビュー講座 > 新型コロナウイルスとの戦いは「健康の危機」から「経済の危機」の局面へ
新型コロナウイルスとの戦いは「健康の危機」から「経済の危機」の局面へ
新型コロナウイルスとの戦いは
「健康の危機」から「経済の危機」の
局面へ
2020/4/10
NY外出禁止令から18日が経過
いまアメリカは新型コロナウイルスと戦っています。3月22日にニューヨーク州はロックダウン(外出禁止令)を発し、これを書いている4月9日の時点で18日が経過しました。
ニューヨークは全米の中でもとりわけ新型コロナウイルスの陽性の数が多く、他の州よりも一足先にロックダウン宣言を行った為、その他の州に住む人々からは「先行指標」として注目されています。4月8日現在の陽性数は13.9万人です。
新しく陽性と診断される感染者の数は4月5日に10841人でピークをつけました。
そのことが判明した4月6日は安堵した投資家が株式市場に殺到し、ニューヨーク市場は大幅高となりました。
今後2週間漸減トレンドが維持出来ればロックダウンは解除されるだろう
今後のシナリオなのですが新しく陽性と診断される感染者数が漸減してゆくことが望まれます。上に掲げたチャートからも分かる通り、既に下降トレンドに入っているのですが、今後、4月19日頃まで右肩下がりの傾向がずっと続けばロックダウンは解除できると思います。
その場合でも感染者数がゼロになるというわけではありませんので陽性者、感染し発病後快復した者、リスクがある者などは個別に行動を規制、モニターされる必要があります。
80%の力でボチボチ再開するしかない
最終的に人々が安心して日常の生活に戻るためには新型コロナウイルスの治療薬ならびに予防ワクチンの登場が待たれます。現在、たくさんの新薬開発プロジェクトが動いており、臨床試験に入っているものもあります。
それらが出るまでは米国経済は「80%くらいの稼働率」でボチボチ再開するしか無いのです。その意味に於いて米国経済の「V字型回復」はかなり望み薄と考えた方が良いでしょう。
皆、資金繰りに困っている
ロックダウンは経済活動をパッタリと止めてしまう荒治療であり、それが実施されている間、レストランや小売店の多くが閉店しました。
売上高が激減するわけですから当然、従業員の賃金も払えなくなってしまう中小企業が続出しました。
一方、労働者は賃金が払われなかったことで家賃が払えない、クレジットカード・ローンの支払いが出来ないなど厳しい状態に置かれています。
つまり企業も個人も、アメリカ中がお金のやりくりに大変困っているのです。
強力な経済政策が相次いで発表されているが……
今後のシナリオなのですが新しく陽性と診断される感染者数が漸減してゆくことが望ま連邦準備制度理事会(FRB)はそういうクレジット・クランチ(信用のひっ迫)を緩和するために様々な措置を講じています。
議会は2兆ドルの景気刺激策を可決し財政の出動も始まっています。
つまりこの危機に直面してアメリカ政府は手をこまねいているというわけではないのです。
しかし大規模で複雑な支援プログラムを即座に繰り出すのは事務手続きの面でも至難の業であり、いざプログラムを始動しようとすると様々な問題が噴出しました。
このため支援金が中小企業や個人に届くのに時間がかかっています。支援が届く前に倒産、廃業してしまったスモール・ビジネスも後を絶ちません。
つまり現在のアメリカは「健康の危機」が「経済の危機」へ発展するかどうかの微妙な局面にさしかかっているのです。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。